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その微笑みは

作者: 倖 愛海

俺の命ってやつはもうほとんど残っていないらしい。

24年の短い人生は四捨五入して20歳のうちに終わる。

なんともばかばかしくて、辛すぎる話だ。



大学を卒業して希望する職に就いた。

彼女もいた。

結婚する気だった。


未来ばかり語っていた言葉をいつの間にか過去形ばかりが占めていく。



儚い。人生ってのは。

そんな風に悟るには突然過ぎて。


嫌だ。何かの間違いだ。

そうやって暴れるのはもうやってしまった。


今はただベッドの上で自分の命の終わりに怯え、その時が少しでも延びるのを願うだけだった。



そんな日々の中彼女は毎日病室を訪れる。

どんどん死へと加速していく婚約者の残りの日々を少しでも共に過ごそうと通ってくれる。


「ゆうちゃん。そばにいるからね。ずっとゆうちゃんだけ愛してるからね」


彼女はそう言って優しく微笑んでくれる。

多分、その言葉に偽りなんかはない。

彼女は俺が消えても誰とも結婚しないつもりらしい。

それは普段の彼女の真面目さからも確かなことだと思う。




そして俺はそれだけはあってはいけないことだと思っている。

彼女にはずっと微笑んでいて欲しい。

こんな男の死に捕らわれたりしないで、もっと自由に生きて欲しい。

自分の死が逃れられないとわかった今、望むのはただそれだけだった。

何かの漫画みたいに、彼女から俺の記憶が全部抜け落ちてしまえばいいのに。

そんなバカげたことを神様に願ってみたりする。

いや、神様なんかじゃなくても悪魔だってなんだっていい。

この病魔に蝕まれた身体でよければ悪魔にだってくれてやろう。




『その願い叶えてやろうか?』

低くて冷たい声が頭の中に響く。


『命をかけるほどの願いなら聞いてやらないこともないぞ?』

それはどこか楽しむように、非力な人間を嘲笑うかのような声だ。


「命ならくれてやる。俺はただ彼女の微笑みを守りたいんだ。」


『わかった。その願い叶えてやるよ。ただし叶った時点でお前の命はいただくぞ?』

迷う必要なんてなかった。


「あぁ、それでいい。」




ベッドのそばにいた彼女が急に立ち上がり出ていってしまった。


『あの女が病院から出たところでおまえとの記憶を全て消してやる。そしておまえの命は終わりだ。』


俺はただ頷いた。もう覚悟はできていた。




『それにしても、おまえは馬鹿だな。』


「彼女を守ろうとすることが?」


『違うな。こんな願いごとをするということがだ。』


確かに、彼女には俺を忘れないでいて欲しいという気持ちはある。

でも、精一杯愛してくれた彼女だからこそ悲しませたくなかったんだ。






『どうしてもっと生きたいと願わなかった?』


嘲るかのようなその言葉。







『願い事はなんだって叶えられたんだよ。それが強い願いなら。




神なら叶えられる。』







その瞬間、猛烈な痛みと共に俺の魂が体と引き離された。


そして俺が見たのは、

小さなころに絵本でみた優しく微笑む神様だった。




それは悪魔なんかじゃなかった。




大きな間違いに気づいた時、俺の意識は




消えた。


はじめての投稿です。最後のオチが書きたかったのですがうまく表現できてませんね…。ブラックユーモアを書きたかったのですがわかっていただけるでしょうか(汗)

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