無題
「んおっ…!!」
気絶し、倒れていた若者が目を覚ますと、見知らぬ女の子が隣で寝息を立てていた。
「おーい…起きてくれー…」
若者は静かな声でそっと声をかけながら、女の子の肩をチョンチョンと指でつついた。
「んッ…。」
女の子は眠たそうに指で目をこすりながらゆっくりと起き上がろうとした、少しフラついき、若者がフラつく女の子を支えながら2人は立ち上がった。
「だ、大丈夫…?」
女の子は、若者が支えていないと立っていられないほどだった。
「ありがと…う…。」
女の子は徐々に支えがなくても立っていられるようになった。
「もう大丈夫そう…だね!」
「うん、で、君は誰なの?」
「オレは、ユウマ、君は?」
「私は…わからない…。私は…誰なの…?」
「え…? いや……ん~……。」
ユウマは腕を組み、女の子が誰なのかよく考えてみたが、いくら考えてみても分からなかった。
「ごめん…オレには分からないや……てか、ここは……天国か何かなのかな? もしかして、君も死んだの?」
「ユウマ…死んでるの?」
「恐らく! なんせあの高いとこから落ちたんだ! 死んだだろう! てことはやっぱ、天国だよな!」
「じゃあ…あの人も…死んでるの?」
「あの人?」
女の子は海を指差して言った。ユウマは海を背にしていたので女の子の指差す背後にある海の方へ上体をひねり返し見た。
バシャバシャ バシャバシャ
「あれは…お迎えの天使…いや…死神?」
海の中からバシャバシャと黒ずくめの何者かが這い出てき、こちらに向かい歩いてくる。
「オレちょっとあの人に話聞いてくるから、君はここで待ってて!」
ユウマはそう言うと、海から這い出てきた黒ずくめの何者かに向かい走りだした。
「おーい! すみませーん!」
その何者かに近づくにつれ、何故黒ずくめなのかが判明した。
「んん!? デッカい昆布かッ!?」
何者かは、身体が隠れるほどの大きな昆布を頭の上からかぶり乗せていた。
更に近づくにつれ、気づく。
「ん!? てゆーか…デカくね…?」
ユウマと何者かの間の距離は五メートル。
ユウマの身長は百七十二センチ。
何者かの身長は約、三メートル。
ただ、まだ分からなかった。
大きく分厚い昆布をかぶった小さな人かもしれないし、大きく薄っぺらい昆布をかぶった大きな人かもしれない。
だがそれは分かった。
「ガアアアアアアッ!!」
大きな昆布はぶっ飛ばされ、それは吠えた。
正体があらわにされた瞬間、ユウマは驚きと恐怖の雄叫びをあげた。
「わああああああッ!!」
何者かは大きく薄っぺらい昆布をかぶった巨大イノシシのような人だった。
「ガアアアアアアッ!!」
「わ…わああああああッ!!」
巨大イノシシは二本足でゆっくりと歩き出し、ユウマを追いかけながら、腰帯の後ろに差していた斧を右手で抜き取り、それを逃げるユウマへぶん投げた。
ブオン ブオン ブオン ブオン
「うわああああああーーーッ!!」
ユウマは必死に走り逃げる。
「ユウマッ!! 斧ッ!! 斧ッ!!」
女の子は大声でユウマに教えてあげた。
ブオン ブオン ブオン ブオン
ズシャアぁぁぁあ!!
ユウマの身の丈以上はある大きな斧は走り逃げるユウマの目の前に落下し、砂浜に突き刺さった。
「……ッ!! 斧…ッ!?」
「ガアアアアアアッ!!」
ドシャァ!! ドシャァ!! ドシャァ!!
巨大イノシシが二本足で砂浜を走り、ユウマを追いかける。
「うわああああああーーーッ!!」
ユウマは無我夢中で逃げ回る。
「ユウマッ!! こっちこっちッ!!」
女の子が逃げ回るユウマに声を張り上げ、手招きをした。
「わわわわわ、分かった!」
木々が生い茂る森の中から女の子に手招きされるとユウマはすぐさま女の子のいる森の中へ身を隠した。
「ユウマ!! もっと遠くに逃げよ!!」
女の子はユウマの手を握り、森の奥へ引き連れ駆け出した。
「……ッ!?」
女の子に手を握られたユウマは、少し落ち着きを取り戻した。
「ガアアアアアアッ!!」
砂浜では巨大イノシシが雄叫びをあげていた。
「はぁ、はぁ、もう大丈夫かなぁ?」
女の子は立ち止まるとユウマも立ち止まった。
「はぁ、はぁ、ありがとう、君のおかげで…」
バキバキバキバキバキッ!!
巨大イノシシが斧で木を切り倒しながらまだ追いかけてきていた。
「ガアアアアアアッ!!」
「ひぃ…ッ!!」
「ユウマ!! もっと遠くに逃げるよ!!」
「う、うん!!」
2人は、追いかけてくる巨大イノシシからひたすら逃げ回った。




