無題
ー西暦2025年ー
「せめて…、せめて人類が絶望しないように…がはッ!! はぁ…はぁ…、後は…あのプログラムが上手くいくことを……ぐはぁ!!」
ザシュッ!!
男は何者かにより、背後から背中に剣を突き刺され、死んでいった。
「オイ、コロスナヨ。」
「ア、ワルイ、ツイコロシテシマッタ。」
「マアイイ、モウヒトリイルハズダ、サガシダシ、トラエナケレバ。」
「コレワドウスル?」
「ソノママニシテオケ。ソレハワレラノウミノオヤダカラナ。」
二人の何者かはそう言い、パソコンや特殊機器が置き並ぶ研究室らしき部屋から出て行った。
パソコンの画面の中で、無数の様々な文字が踊り並び終わると一文が表示された。
【生成完了…。】
暗い部屋で青白く光るパソコンの画面の中で表示され続けたその一文は、ゆっくりと点滅し、虚しく消えていった。
ー西暦2020ー
「あぢぃー…」
カンカンと照りつける日の下で、汗をだらだらと流しながら作業を続ける若者の姿があった。
そこは高層ビルが建ち並ぶビジネス街にも見える。
若者は、およそ25階建ての高層ビルの改装の為の足場を解体し始めていた頃だった。
「高いとこは眺めがいいや~、日射はキツいけどな~」
「おい、ユウマ! 安全帯忘れてるぞ!」
「あ、やべえ…」
若者は安全帯を足場に引っかけようとした瞬間、カンカンと照りつける日射にやられたのか、フラッと意識を朦朧とさせ、足場の外へ吸い込まれていく。
「ユウマ…!!」
およそ40メートル近くはある高層ビルの上部から、地面に向かい若者の身体ゆっくりと流れるように落ちていく。
「あ…。」
若者は死を覚悟したと同時に完全に気を失った。
しかし、
落ちていく若者の身体は、突然、眩い光に包まれ消えてしまった。
そして、
作業仲間達は、まるで始めから若者がいなかったかのよう、作業を開始した。