本能のままに
当然ながら、光龍イルミネントは怒り狂った。
神聖なる自分のアジトに土足で踏み込んだだけでも許し難いのに、溜め込んでいた宝の山をすべて奪っていくなど万死に値する。
しかし、賊の追跡はそれほど難しくない。
財宝の中には、宝石に似た臭いの強い果実が混じっているのだ。それを追えばいい。
高い咆哮を上げ、イルミネントは空を舞った。
太陽は真上にあり、光り龍である自分の力が最も強い時間にあった。
盗んだ人間には、心当たりがあった。
王都で龍狩の名乗りを上げた奴だろう。名前など覚える価値はないと判断していたので、記憶にない。
北東に進むと岩壁に巨大な空洞が開いていた。
自分でも通れるほどの大穴だ。
ただし、中は暗い。
どれほどの深さがあるのかは分からないが、地面に自分の宝石が落ちているので、ここで間違いはないようだ。
暗さは、自分には関係がない。
光龍イルミネントは、自分の身体をより輝かせながら、奥に進んだ。
思った以上に深い洞窟は、血の臭いがした。
どうやら魔物が棲んでいたらしい……が、気配はなくすべて死んでいるようだ。
点々と宝石が転がっている。
間抜けめ、と光龍は嗤う。
下り斜面になっている洞窟を、さらに進む。
どうやら大きく螺旋状の回廊になっているようだが……あまりに大きいので、龍クラスでないとそうとは気づきにくい。
そしてまだ底につかないのか、どれだけ深いのかとそろそろ不安になってきた。
おそらくそこいらの山を逆さにしたよりも、これは遥かに深い。
段々とヒンヤリとしてきた。
赤龍であるボス曰く、地面の遥か下は高熱であるといっていたが、あれは嘘だったのか。
そして、宝石を拾うのもいい加減やめた。
持ちきれないからだ。
一体、奴は何往復したのだろう。
ヒンヤリどころか凍えるほど寒くなっていた。
もちろん、人間ならば凍死の可能性があっても、龍の頑強な肉体でそういう事態に陥る事はない。
油龍ベニバナならば、身体が少々固くなっていたかもしれないが。
洞窟全体に、霜が出来はじめていた。
光龍イルミネントは、ようやく底についた。
先に進むとそこは大きなドーム状になっており、全体をうっすらと白い氷霧が煙っている。
その氷霧の遙か向こうには、輝く財宝が自分の身体に照らされていた。
罠なのは明らかだ。
しかしここまで来たのだ。
今更、拾った宝石程度で引き返す事など出来ないし、そもそも光り物を見れば欲しくなるのが光龍の本能でもある。
さっさとお宝を回収して、退散しよう。
天井を見る。
この深さでは、岩盤を得意の光線で貫く、というのも難しそうだ。
……そして、その自覚をした途端、初めて心が得体の知れない寒さを感じた。
つまり、今、ここで生き埋めにされたら、たとえ龍でも確実に死ぬ。
赤龍ならば、熱で岩盤を溶かして脱出するという荒技が可能だろうが、他は無理だ。




