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龍狩と赤龍  作者: 丘野 境界
龍狩
31/41

本能のままに

 当然ながら、光龍イルミネントは怒り狂った。

 神聖なる自分のアジトに土足で踏み込んだだけでも許し難いのに、溜め込んでいた宝の山をすべて奪っていくなど万死に値する。

 しかし、賊の追跡はそれほど難しくない。

 財宝の中には、宝石に似た臭いの強い果実が混じっているのだ。それを追えばいい。



 高い咆哮を上げ、イルミネントは空を舞った。

 太陽は真上にあり、光り龍である自分の力が最も強い時間にあった。

 盗んだ人間には、心当たりがあった。

 王都で龍狩の名乗りを上げた奴だろう。名前など覚える価値はないと判断していたので、記憶にない。



 北東に進むと岩壁に巨大な空洞が開いていた。

 自分でも通れるほどの大穴だ。

 ただし、中は暗い。

 どれほどの深さがあるのかは分からないが、地面に自分の宝石が落ちているので、ここで間違いはないようだ。

 暗さは、自分には関係がない。

 光龍イルミネントは、自分の身体をより輝かせながら、奥に進んだ。



 思った以上に深い洞窟は、血の臭いがした。

 どうやら魔物が棲んでいたらしい……が、気配はなくすべて死んでいるようだ。

 点々と宝石が転がっている。

 間抜けめ、と光龍は嗤う。



 下り斜面になっている洞窟を、さらに進む。

 どうやら大きく螺旋状の回廊になっているようだが……あまりに大きいので、(じぶん)クラスでないとそうとは気づきにくい。

 そしてまだ底につかないのか、どれだけ深いのかとそろそろ不安になってきた。

 おそらくそこいらの山を逆さにしたよりも、これは遥かに深い。



 段々とヒンヤリとしてきた。

 赤龍であるボス曰く、地面の遥か下は高熱であるといっていたが、あれは嘘だったのか。

 そして、宝石を拾うのもいい加減やめた。

 持ちきれないからだ。

 一体、奴は何往復したのだろう。



 ヒンヤリどころか凍えるほど寒くなっていた。

 もちろん、人間ならば凍死の可能性があっても、龍の頑強な肉体でそういう事態に陥る事はない。

 油龍ベニバナならば、身体が少々固くなっていたかもしれないが。

 洞窟全体に、霜が出来はじめていた。



 光龍イルミネントは、ようやく底についた。

 先に進むとそこは大きなドーム状になっており、全体をうっすらと白い氷霧が煙っている。

 その氷霧の遙か向こうには、輝く財宝が自分の身体に照らされていた。

 罠なのは明らかだ。

 しかしここまで来たのだ。

 今更、拾った宝石程度で引き返す事など出来ないし、そもそも光り物を見れば欲しくなるのが光龍の本能でもある。

 さっさとお宝を回収して、退散しよう。

 天井を見る。

 この深さでは、岩盤を得意の光線(レーザー)で貫く、というのも難しそうだ。

 ……そして、その自覚をした途端、初めて心が得体の知れない寒さを感じた。

 つまり、今、ここで生き埋めにされたら、たとえ龍でも確実に死ぬ。

 赤龍(ボス)ならば、熱で岩盤を溶かして脱出するという荒技が可能だろうが、他は無理だ。

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