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龍狩と赤龍  作者: 丘野 境界
龍狩
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龍卵の意思

「ところで疑問なんだが、何故卵が俺の周りに浮いている」


 そう、フィーロの周りをさっきから小さな卵が跳んでいた。

 首飾りの鎖と接続部分の台座は外されているが、だからそのせいで捕まえづらい。

 目障りと言うほどではなく、まあ懐いているというのが分かるから、放ってはおいていた。


「ふぉっふぉっふぉ、フリゼの魂と共にある君を、既に親と認識しておるのじゃな」


「笑い事じゃないんだが」


 フィーロは独身であり、しかも子持ちになるような行為はしたことがない。


「孫の幸せの為じゃ。行動を共にさせてはくれぬか」


「守る余裕なんて、ないと思うぞ」


「このぐらいの大きさならば、儂の力も込められよう。ほれ、こっちに来なさい」


 卵もその言葉を理解したのか、氷龍コーラスに近付いた。

 その表面に、コーラスが指を当てると、白銀の光が卵を満たしていく。


「これで赤龍とて十年は傷つけられぬ」


「そう言えば、龍の卵なのにどうしてこんなに小さいんだ?」


 指でつまめるほどの大きさだ。

 龍の巨大さと比較すると、少々差がありすぎるのではないだろうか、というのがフィーロの疑問だった。


「産む時は大きい。が、変化の術である程度、大きさは変えられるのじゃよ」


「そういうもんか。……ああ、彼女が気にしてるから、遊んでもらえ」


 さっきから、フィーロも雪龍スノウがチラチラとこちらを見ているのには気づいていた。

 卵をけしかけると、一目散にスノウの方に飛んでいく。


「……!!」


 スノウは最初少し慌てていたが、やがて立ち上がり、周囲を纏わり付く卵と部屋の外に出ていった。


「外の景色を見せに行くのか。仲良くするのじゃぞ」


 ふぉふぉふぉ、と氷龍コーラスは笑った。




 食事を終え、フィーロは大きく息をついた。



「美味かった」



「そうか。人間の口に合うようで何よりじゃ」


 用事は済んだし、立ち上がる。


「それじゃ、俺はそろそろ山を下りるけど……何か赤龍に関して、情報はないか」


「ふむ、そうじゃの。光龍イルミネントのアジトならば、分かっておる」


「教えてもらえるか」


「もちろんじゃ。奴には光るモノを集める習性があるせいで、我が眷属がすぐに発見出来たわ。ピカピカ光りよる」


「宝石とかの類か」


「金貨や宝剣の類もの。ふぉ、お主もやはり人間、興味があるか」


「ある。奴が、とても大切にしているんだな?」


 もちろん興味は金銀財宝そのモノではない。

 フィーロが気にしているポイントは、それに光龍イルミネントが執着している、という点だった。


「……ふぉっふぉっふぉ、何か企んでおるな。ならば旅立つのは少し待ってもらえるか? 宝の蔵から何か、モノを運ぶのにちょうどいい道具がないか、探してみよう」


「助かる」


 氷龍コーラスが手を叩くと、氷精や雪精の召使いが入ってきた。

 それに、指示を与えている最中だった。

 長いか細い悲鳴が、部屋の外から聞こえてきた。


「何じゃ、今の悲鳴は」


 その時には既に、龍骨剣を握ったフィーロが横開きの戸を開けていた。

 縁側からは、霊峰ヒエタが見える絶景だった。

 そして、雪龍スノウは少女の姿のまま、宙に浮いていた。

 いや、彼女を鉤爪で掴んでいるのは――空龍ポイゾ!!

 龍の卵は、スノウを話せと空龍の鉤爪にアタックを繰り返していたが、もちろん通じてはいなかった。

 空龍の方も捕まえようとしていたが、あまりの小ささに手こずっているようだった。


「スノウ!!」


「…………!!」


 スノウは小さく悲鳴を上げ、フィーロに助けを求める。

 だが空龍ポイゾが大きく身体を翻し、空を舞った。

 あっという間に一頭と一人の姿が小さくなっていく。

 突風に、龍の卵が煽られ、空を泳ぐ。

 それを、フィーロは掴んだ。


「爺さん」


 縁側から、外に飛ぶ。

 真下は断崖絶壁、しかも以前の王都とは違い、川ではない。

 が、フィーロの身体は宙に浮く。


「おおう……!!」


 巨大な氷龍と化したコーラスが、その足下に滑り込んだからだ。

 だが、フィーロには分かる。

 老体であるコーラスの身体では、空龍ポイゾには追いつけない。


「俺をあっちの方角へ飛ばしてくれ!! 全力で頼む!!」


 首飾りに龍卵を繋ぎ直すと、卵も「やっちゃえ!」と胸元で暴れた。


「承知した!!」


 龍の鉤爪がフィーロを掴む。

 そして次の瞬間には、フィーロの身体は霊峰ヒエタの遥か高みを飛行していた。


「頼む! 儂の娘を……二人も失わせんでくれ!!」


 フィーロを投げ飛ばしたフリゼが、老人の姿に戻って叫ぶ。


「任せろ――お父さん!!」


 口に出た白龍フリゼの魂の叫びに、氷龍コーラスが泣きながらうずくまる姿が小さくなっていく。

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