港町ヨクトレイル
川を西に流れ、やがて海に到着した。
近くにあった港町ヨクトレイルは以前、禁呪を授かりに海を越える時に寄ったことがあった。
宿を取って一眠りし、起きてから王都での自分のハイテンションを思い出してしまい、今更恥ずかしさが込み上げて、一人のたうち回った。
せっかく偽名を使ったのに、ユージンと再会した勢いでそのまま本名を名乗ってしまったり、高笑いしたりまったく自分は何をしているのか。
なお、同時刻、同じようにユージンが王都の自室で恥ずかしさにのたうち回っているのだが、それはまた別の話。
龍騎士団長コマンディルからフィーロのことを問い詰められたり、その後さらに目を輝かせているプリセアにフィーロのことを話す羽目になっているのだが、それもフィーロが知る由はなかった。
気を取り直して、朝食を食べに出た。
釣具屋で釣道具をレンタルし、他の客もそこそこいる桟橋で魚を釣る。
近所の屋台で捕れた魚を朝食にしてもらいながら、屋台の親父を相手に情報収集を開始した。
「王都の龍の話なんだが」
「ああ、北の方に帰っていったみたいだぜ。龍の集団を撤退させるなんて、さすが龍騎士団だよな」
「北か……」
フィーロも、白龍フリゼの頼みを忘れてはいない。
胸の首飾りにつけられている卵を、彼女の親の元へ送らなければならない。
白龍フリゼの棲んでいた土地は、遙か北にある霊峰ヒエタだ。
赤龍達は後回しにしてそっちを優先しよう、とフィーロは決めた。
「北への船は出てたっけ」
「北までは行かないが、北西の港町タイリョーには行く便があったぜ?」
「そうか。ごちそうさん」
「まいど。向こうは寒いから、厚着を用意しといた方がいいぜ」
朝食を食い終わり、フィーロは船便を調べた。
出航はすぐだったので、そのまま船に乗り込みヨクトレイルを発った。
屋台の親父は忠告してくれたが、白龍の力を持つフィーロに、寒さは何の障害にもならない。
甲板に腰かけ、今後の計画を簡単に練る。
北西の港町タイリョーに到着したら、そこからは徒歩で霊峰ヒエタ向かおう。馬車よりも走った方が早い。
方針は決まったので、後は休憩とフィーロはその場で眠り始めた……。




