表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
龍狩と赤龍  作者: 丘野 境界
幼年期
2/41

故郷喪失

 焦げ臭い臭いが鼻についた。

 気がつくと、フィーロは母の下敷きになっていた。


「えっと……?」


 記憶が曖昧だ。


 爆風で吹き飛ばされ、フィーロは草原に転がった。ユージンも同じだ。

 だがすぐに立ち直り、二人で炎の中に進んだ。

 故郷は焼け野原と化し、人間が幾つも黒く焦げて転がっていた。

 そして炎の中、山のように巨大な赤い(ドラゴン)が近付いてきていた。


「え……なに、これ……」


 ドラゴンは他に四匹、赤龍ほどではないが、それでも充分巨体のそれが後ろに控えている。


 黒く光る龍が舞い、その鉄のような鱗でテントを中にいた人ごと切り裂いた。


 テラテラと全身濡れた龍が口から透明な液体を吐き出すと、炎が引火して逃げ惑う人々を生きたまま焼いていく。


 半透明の龍の呼気(ブレス)に、みんな胸を押さえて倒れていっていた。


 眩く輝く龍の口から吐き出されるのは光線で、人間は焼けるどころか跡形もなく消されていた。


 赤龍の口が開き、炎がチロチロと漏れる。

 その口が、更なる熱気を帯びる。


「フィーロ……ユージン……」


 足下で、聞き慣れた声がした。


「かーさん……!?」


「いきて」


 その声と共に、母らしき影は二人に覆い被さった。

 直後、視界が真っ黒に染まる。

 呼吸が出来ない。

 肉の焼ける音と強烈な臭い。

 そして、フィーロは気絶した。


 隣のユージンはまだ、気絶している。

 ……自分に覆い被さっていたそれをどけ立ち上がると、故郷の面影はどこにもなかった。

 熱は幾分引いたもののまだ真夏のように熱く、そして見渡す限りの焦土だ。

 無事なテントは一つもなく、生きている者は自分とユージン以外一人も無い。

 そして、自分に覆い被さっていたのも、真っ黒焦げになった人の形をした何かだった。

 長い長い悲鳴が上がった。

 それは、フィーロ自身が上げている悲鳴だった。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ