表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
龍狩と赤龍  作者: 丘野 境界
龍狩
19/41

龍卵奪還

 日が沈んだ頃に王都コキューについたフィーロは、そのまま王城を目指した。

 城壁を跳び越え、城の中に侵入する。

 あまりに大胆すぎ、逆に警備の人間も気づかなかった。

 卵の気を探り、フィーロは豪華な部屋に辿り着いた。


 そこは、王女の部屋だった。

 キラキラ光る金髪の、美しい娘がそこにいた。今のフィーロと同じぐらい、十五歳ぐらいか、服装からも王女で間違いはなさそうだ。

 首には、白い宝石のような卵を飾った、首飾りがあった。


「その、首飾りを返してもらいたい」


 悲鳴を上げられる前に、フィーロは単刀直入に用件を切り出した。


「暗殺者ですか。わたしは脅迫には――」


 思った以上に、気丈な性格のようだ。


「正当な持ち主の所有者に、返してもらいたいだけだ。お前の命に興味はない」


「これは、龍騎士団から龍を狩ったその成果にと頂いたモノです。正当な所有者とは誰の事ですか」


「それは、俺の中の白龍で……いや、いい。話すだけ無駄だ。とにかく返せ」


 これは気絶させた方が早いか、とフィーロが考えた時だった。


「貴方は……」


 ぽかん、と王女が口を開けていた。


「何だ」


「そちらの、首飾りです」


 彼女は、フィーロの首に掛かった銀色の首飾りを指差した。


「これか」


 魔除けの効果があるようで、戻らずの大樹海で修業をしていた時には、とても世話になった。


「憶えていませんか。ずっと前、オキナ山で薬草になる花を採ってきて頂いた」


「ああ、プリプラム」


 本来の、所有者だった。


「プラムです! 本名はプリセアですけど、偽名でした! ああ、まさかこんな事って……!」


 プリセアは、この国の王女の名前である。

 何故か彼女は顔を赤くして、狼狽えていた。


「おい、話を聞け。俺はその卵を返してもらいたいだけだ」


「どうぞ!」


 あっさり返してくれた。

 用事は終わった。


「ああ。じゃあな……って、その手は何だ」


 プリセアの手が、フィーロの腕を掴んでいた。


「せっかくですから、お話でも」


「特に、話す内容はない」


 それよりも、龍骨剣の在処の方が重要だった。

 気を探れば、見つかるはずだ。

 しかしそんな事にはお構いなしに、プリセアは質問してきた。


「何故、若返っているのですか?」


「言っても信じてもらえないだろう」


「話してみなければ分かりません」


「龍の力を取り込んだ。そうしたらこうなった」


「そうなんですか」


 あっさりと、信じた。


「疑わないのか」


「何故、疑うのです?」


「普通、龍の力を人間は……まあ、いい」


「そういうのはよくありません。最後まで話して下さい」


「……やれやれ」


 下手に騒がれても面倒臭いので、フィーロはこれまでの経緯を話す事にした。

 やはり疑う様子もなく、時折ふんふんと相槌を打ちながら、プリセアはフィーロの話を聞いていた。

 彼女が怒ったのは、フィーロが試験に落ちた時だった。


「納得がいきません」


「俺もいまだに納得がいかないが、素材を無駄には出来ないという事情も分からない訳じゃない。同じ大きさに揃える方が、確かに加工も楽だ」


 そういう意味では、フィーロも多少、大人になったと言える。

 多分、あの出来事があるから今の自分がここにいるのだという、余裕もあるのだろう。


「私の一存では決められませんが、龍騎士団に入っては頂けませんか?」


「ないな。それは、誰も幸せにならない」


 フィーロはプリセアの提案を一蹴した。


「そう、ですか……あの、戻らずの大樹海での出来事というのは……その、うちの龍騎士団が……」


「別に恨んじゃいない。あの時の俺は化物同然の姿だったし、狩られて当然だろう。白龍フリゼは龍として狩られただけの話だ」


 あの争いでの怒りは本物だったが、済んだモノは仕方がない。

 フィーロは、銀色の首飾りの上に、龍の卵の首飾りもつけた。


「ただ、白龍フリゼの魂は俺の中で生きているし、だからこれを取り返しに来た。龍騎士団がこれを再び取り戻すというのなら……悪いが俺は、龍騎士団と敵対する事になる」


「うらやましいです……」


「……今の話の中で、その台詞が出て来るポイントが、心底理解出来ないんだが」


 人の話を聞いてたか? とフィーロは問い返した。


「だ、大丈夫です。卵を盗みに来た賊については、適当な容姿を説明しておきます。だから、捕まらないで下さいね?」


「……奪った本人から言われるのも、複雑な気分だがお言葉に甘えさせてもらう」


「甘えて下さい。それで、赤龍を倒したら、その後はどうするおつもりですか?」


「二人目」


 思わずフィーロは呟いていた。

 何だってこう、本人以上に皆、自分の()()()を気にするのだろう。


「はい?」


「正直決めていないが、親父への報告と故郷への墓参りはするつもりでいる」


「分かりました。オキナ山へは向かうと」


「何故、そんなに張り切る」


「個人的な事情です」


 話は終わり、龍骨剣の在処に向かう事にした。

 場所に関しては、プリセアが教えてくれた。


「その龍骨剣なら、おそらくは宝物庫です。それから白龍の遺骸はまだ、保管庫の中だと思います」


「そうか。城には迷惑を掛ける事になる」


「はい。ですが、逆らうよりは被害は少ないと思いますし」


「賢明な判断だ」


 よし、とフィーロは部屋の外に出ようとして、振り返った。

 普通に後ろに、プリセアがついてきていた。


「……何故、付いてこようとする?」


「いけませんでしょうか」


「あまり、いいとは思えないんだが……」


 さすがに困るフィーロだった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ