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龍狩と赤龍  作者: 丘野 境界
龍狩
16/41

性能

 翌日、日も昇らない早朝からフィーロは遺跡の点在する山へ狩りに出かけた。

 馬でチリョもついてきたが、その弓の出番はなかった。


「すごい」


 山のように獣や山の幸を狩り、それを積み上げる。


「ひとまず飯の恩にはなったと思う」


「そうね。当分、食べるには困らないわ。でもこの辺は気温が高いから、こんなにあってももたないと思う」


 フィーロは、食材の山に指を当てた。

 指から力を注ぎ込むと、食材の山が氷漬けになった。


「これでいい。合い言葉を教える。唱えたら解凍される。唱えなかったら一年はもつだろう」


 ぽかん、と口を開けたチリョが、フィーロに尋ねた。


「フィーロ魔法使いだったの?」


「魔法使いじゃないし、これは魔法じゃない。ただ、魔法に見えるだろうな。俺も以前ならそう思ったはずだ」


 もちろんこれは、フィーロの魂と融け合った、フリゼの力だ。

 獣を狩る時の力も、コツや知識こそは人間(フィーロ)のモノだったが、その力はフリゼの龍の力によるモノだった。

 あの沼の底で、フィーロはフリゼの魂を喰らい、そして確かに自分のモノにしていた。

 その中には彼女の記憶や、娘への思いも引き継いでいる。


「ありがとう」


「飯の恩だ。そしてこれから宿の恩を返す」


 礼をいうチリョに肩を竦め、フィーロは山の奥を目指した。


「どこ行くの」


「大体の性能(ちから)はつかめた。準備運動も終わったことだし、そろそろ本番に行く」


 剣こそないが、やはり素手でも戦えそうだ。

 手刀よりも、爪で削ぐ戦い方の方が、いいだろう。


「まさか」


「そのまさかだ」


 チリョも察し、後ろをついてくる。


「龍には勝てない」


「人間ならな」


「だから、フィーロは勝てないっていう話なんだけど」


「それはちょっと違うし、勝算もある」


 龍狩に関して説明をするのも、難しい。


「もしも負ければ、皆殺されるわ」


「いや、大丈夫だ。向こうも昨日からずっと、俺の事に気づいていたみたいだし……あの集落とは無関係だって分かってる」


 そう。

 あのテントで目覚めてしばらく、あの龍の咆哮はフィーロの存在の力に反応したモノだった。

 ここは俺の縄張りであり、疾く去れという警告だったのだ。

 そして、その力の気配に、フィーロは覚えがあった。


「何で龍の考えていることが、分かるの?」


「言っても信じてくれないだろうな。とにかく――」


 遠くから羽ばたきが聞こえる。

 やけに濡れた、重い音が重なるのは、この龍の特性だ。

 びちゃ、びちゃり、ぬるり、じゅるり。


「――親切にも向こうから来てくれたか。集落からも離れているし、悪くない」


 少し先に、かなり開けた場所がある。

 そこが、戦場になりそうだ。

 もう、フィーロの龍眼では、相手も充分に捉える事が出来ていた。

 故郷を滅ぼした、五頭の龍の内の一頭。

 全身から分泌される油で、人を生きたまま焼いた龍だ。


「最初の犠牲者はお前か、油龍ベニバナ」

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