白龍の望み
彼らは一斉に飛び掛かってきた。
「借りるぞ」
フリゼの肌を流れる血を、フィーロは掬った。
そして跳んだ敵に向かって勢いよく赤い飛沫を飛ばす。
大きく口を開けていた獣魔術師や動物の何体かが、その場で四肢を爆砕させた。
「噂話は本当だったんだな」
槍を突き出してきた獣魔術師を、乱暴に腕を振るって吹き飛ばす。
さらに新手の敵が、出現する。
人型の龍、龍人達だ。
武器は骨剣、養父であるヨーフの話が真なら、あれは龍を傷つけられる龍骨剣だろう。
そして、その狙いが後ろのフリゼであるという事は……。
獣魔術師や魔物、龍人達を駆逐し、フィーロは一息ついた。
さすがに、消耗が激しい。
傷が癒えるのも、少々時間が掛かるだろう。
「あれが、お前に手傷を負わせた奴らか」
フィーロは両断した龍人の死体を指差した。
「はい……夫、赤龍ネスの信奉者達です」
「――――」
一瞬、聞き違えたかと思った。
「今、何て言った」
「彼らは夫の信奉者だと」
「違う。その旦那の名前だ」
「赤龍ネスです」
間違いじゃ、なかった。
「手下に四匹の龍がいる奴か」
「はい。火山島ディナミットの主です」
その情報も、ヨーフから聞いている。
つまり。
つまり、フリゼの手の中にある卵の父親は。
「私は北の霊峰ヒエタに棲む氷龍コーラスの娘でした。が、ネスに掠われ、この子を孕まされたのです。どうか、この子をヒエタまで届けてはくれませんか」
……スッと、フィーロの頭がわずかに冷える。
そういう事ならば、よしとしよう。
「見ず知らずの化物に、それを頼むか」
「……人を見る目は、あるつもりです。報酬はこれでどうでしょうか」
苦悶の声と共に、フィーロの前に無骨な骨剣が一本突き立った。
「龍骨剣……!!」
それも、龍人達が使っていたモノとは格が違う、間違いなく極上の逸品だ。
目の前の白龍が、体内のどこかの骨を代償に生み出したのだろう。
「どうか……お願い、します……」
「分かった」
龍人の追っ手がいる事を考えると、おそらく自分が囮になるつもりなのだろう。
それならせめて、その願いぐらいは届けてやろうとフィーロは思った。
――直後、頭上から殺気を感じた。
「っ!?」
とっさに白龍の頭部に覆い被さり庇ったが、遅かった。
空から放たれた何百もの剣が、白龍の身体を貫いた。
白龍は絶命した。
空には、飛行船が浮かんでいた。
王都の龍騎士団だ。




