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龍狩と赤龍  作者: 丘野 境界
幼年期
1/41

悲劇の直前

 遊牧民の子供、フィーロとユージンはいつものように草原を追いかけっこしていた。

 息が切れると草っぱに転がり倒れ、体力が戻るとまた走り出す。

 遊ぶモノの少ない二人には、これが数少ない娯楽だった。


「うん?」


 ふと、フィーロは足を止めた。

 先を走っていた金髪碧眼のユージンが振り返り、駆け寄ってくる。


「どうしたの、フィーロ?」


「何か、とんでくる」


 フィーロは、青空の彼方を指差した。

 赤い何かが空に浮いている。その後ろにもいくつかの点。

 それが、段々と近付いてきている。


「……鳥?」


「ちがう。何だか、もっといやな感じがする」


 短い黒髪が、ざわりと逆立った。

 直感のままに、フィーロは住処であるテントに向かって駆け出した。


「あ、ちょっとフィーロ!?」


「ユージン、はやく。テントが、あぶない。とーさんかーさんに伝えないと」


「あぶないって――」


 赤い点は塊に。

 鳥なんかじゃない。

 それは、禍々しく赤いドラゴンだった。

 その口から、炎の球が吐き出された。

 数瞬後、緑の大地が真っ赤に染まり、爆風で二人は吹き飛ばされた。


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