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死処  作者: 詩音
15/17

14話:裏切り




 今日は私が命を終える日。

「ビビってねぇか?詩乃。」

「まさか。」

 アサミさんから与えられた三日の猶予。私はずっと『生』について考えていた。

「司馬はどこにいるんですか?」

「色々と用意があんだよ。色々、な。」

「ふーん……。」

 人はいずれ朽ち果てる。ただそれが早いか遅いかだけだ。

 年老いてシワだらけで死にたくない。だから私は此処で死を受け入れることにした。最高の死に場所だと思えたから。


「このドアの向こうに、お前の望んだセカイがある。」

「……わかってます。」

 私は唾を飲み込んだ。ドアにそっと手を触れる。

「良いな?」

「はい。」

 ドアを開く。そこは相変わらず寒く、無数の腕が飾られていた。

 違っていたのはただ一つ。

「司馬……?」

「……っ。」

 震える手で拳銃を握る司馬がいたことだ。


「何……どうしたの?」

 言葉の一つ一つに吐く息が白い。

「最後の仕上げだ。殺人犯としてのな。」

「……仕上げ?」

「アサミさん、やっぱ無理ッスよ……!!」

「これがお前の願いじゃなかったか?」

 冷徹な声でアサミさんは司馬に言った。

「詩乃を殺すなんて出来ませんよ!!」

「……え?」

 聞き間違いかと思った。否、聞き間違いであってほしかった。

「私を殺すのは、アサミさんじゃなかったんですか……?」

 私の問いにアサミさんがせせら笑う。

「俺がいつお前を殺すって言った?誰も俺自身の手でお前を殺すなんて言ってないだろ?」

「……。」

 確かにその通りだ。アサミさんは一度も私を殺すなんていってない。

 でも私はどこかで信じていた。彼が私を殺すと。

「……っ。」

 私は裏切られた。悔しさに顔が歪む。


「お前ら二人の希望を同時に叶えてやるんだ。悪い話じゃねぇだろ?」

「悪すぎッスよ……。」

 司馬はうなだれている。私はアサミさんをじっと見つめていた。

「死にたい人間を殺すのは、趣味じゃないってやつですか?」

「いや?ただ単に思っただけだ。面白そうって。」

 そうだ、この人はこういう人だ。自分の気持ちにけして逆らわない。


「司馬、今更何ビビってんだよ。」

 ツカツカと足音をたて、アサミさんは苛立たしげに司馬に近付く。

「ちゃんと教えただろ?一瞬で死なせるには心臓のど真ん中に当てろって。」

 司馬の腕を動かし、私の心臓付近に銃の照準を当てた。

「や、やっぱ俺には無理ッス!!」

 司馬は拳銃を下ろそうとするが、アサミさんがそれを許さない。

「アサミさん……!!」

「早く殺れよ。」

 射るような目付きで司馬に凄む。

「俺には出来な……」

「司馬。もういいよ。」

「詩乃……?」

 私は薄く笑みを浮かべた。ただ唇の端は少しひきつっている。

「殺してよ。私を。」







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