13話:芸術の中で
私は自分の部屋にいた。
「あと三日、か……。」
死刑宣告をされた。願っていたことなのに実感がわかない。
「……。」
彼は私をどう始末してくれるのだろうか。そんなことが頭に浮かんでくる。
「……あ。」
一つだけ浮かんだ私だけの死に方。
部屋を飛び出して私はアサミさんの元へ向かった。
「アサミさん?」
ドアの前から呼び掛けてみる。
「詩乃か、何?」
「入って良いですか?」
「……どーぞ。」
一度深呼吸をしてドアを開けた。冷気の立ち込めたその部屋に彼はただ立っていた。
「何かあった?」
「お願いが、あるんです。」
「ふーん?」
私の願いにさして興味があるようには見えず、凍った真っ白な腕を眺めていた。
「此処で、殺してください。」
「……何?」
理解出来なかったのだろう。眉間にシワを寄せて聞き返された。
「此処にある腕は、持っていけないでしょう?」
「まぁそうだけど……」
「なら、此処で死なせてください。」
最期くらい仲間に囲まれて死にたい。アサミさんの手掛けた芸術の中で。
「……わかった。」
考えるそぶりを見せた後、アサミさんは承諾してくれた。
「ありがとうございます。」
「詩乃。」
部屋を出ようとした瞬間、アサミさんが呼んだ。
「何ですか?」
「お前の死処は此処で良いんだな?」
「……死処?」
聞き覚えのない単語に私は首を傾げた。
「死に場所のことだよ。」
「へぇー、そうなんですか。」
「で?後悔しねぇか?」
「……しませんよ。」
強引に笑って見せた。司馬も目の前の彼も、私の決心を揺らがせる材料だ。
「ならちゃんと殺してやるよ。」
「……ありがとうございます。」
確実に私の死ぬ日は近づいていた。
毎週月曜日の更新でしたが一日遅れてしまい、申し訳ありませんでした。
もう少しで完結します。それまで読んでみてください。
ここまで読んでくださりありがとうございました!!