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死処  作者: 詩音
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11話:転がり落ち続ける石達




「もっと相手見てー。」

「さすがに毎回同じヤツじゃやる気なくしますよ……。」

 長身男二人の前には、蜂の巣のように穴の開いた人間型の板があった。

「なんだよ、心臓狙うだけなら関係ねぇだろ?」

「いや、心臓部分はもう穴開いちゃってるじゃないッスか。」

 どんだけ撃ったんスか、と呆れ気味に尋ねる。

「三年前から使ってっからなー。さすがに替え時だな。」

「……アサミさん。」

 銃の照準をあわせながら司馬が口を開いた。

「あ?」

「詩乃、ホントに殺すんスか?」

「それを願ってんのは本人だろ?俺は役目を果たすだけだよ。」

 司馬の方を見ることなく彼は答えた。

「そうッスか……。」

「何?情でもわいた?」

「……少し。」

 互いに顔を見ることはない。二人の声と銃声だけが静寂をやぶっていた。

「それ、殺人犯にはいらねぇよ?」

「まだ俺誰も殺してないッスよ。」

「なるんだろ?人殺しに。」

「……なるよ。」

 司馬は銃を持っていた手を下ろす。

「じゃあさっさと練習しろよ。」

「ちょっと休憩しません?」

「……しょうがねぇな。」

 二人は並んで座り、ペットボトルに入れた水を口に含む。


「いつまでこんな生活続けるんスか?」

 独り言のように司馬が呟く。

「司馬も詩乃みたいなこと聞くのな。続くまでだよ。」

「殺したくなくなったことはあるんスか?」

「ねぇな。」

「はあー……」

 驚きとも感嘆ともとれる司馬の声。

「ていうかさ、お前の親、心配とかしてねぇの?」

「心配は……してるんじゃないスかね。」

「ずいぶん他人事だな。」

「そりゃあ、他人みたいなもんッスから。」

 諦めたような笑みを見せる司馬。

「ふーん。」

「俺の家族、皆法律関係の仕事なんスよ。だから勉強とかもうるさくて。」

「良いわけ?法律家族が殺人犯になるとか。」

「自分のことは自分で決めたいッスから。」

「……。」

 満足げな司馬の姿を彼は黙って見つめるだけだった。






「やっぱ新しい人型板買いません?」

「そのうちなー。」

 リビングに戻ると詩乃が眠っていた。

「詩乃ってよく寝るなぁ。」

 アサミはぷにぷにと詩乃の頬をつつく。

「暇なんでテレビつけるッスよー。」

 司馬は眠そうな声で言った。そして相手の了解を聞かずにテレビがつく。


「……アサミさん。」

「あ?」

 詩乃の頬をつつくのをやめ、アサミが司馬の方を見る。

「これ、ヤバくないッスか……?」

 彼の指差した先には、防犯カメラの映像であろうアサミの姿が画面に映っていた。







 


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