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<序>
M市少年野球秋季トーナメント大会。
最終回七回の裏、一対〇の僅か一点差を追うレッドダイアモンズ最後の攻撃。
二アウトランナーは一塁。
打席ではやや小柄なバッターが緊張した面持ちでバットを垂直に構える。
じっと腕組みしている監督。大声をあげるコーチ、ベンチで声を枯らして応援する選手。そして、選手の母親たちのほとんどは、顔の前に両手の指を絡ませながらのお祈りスタイルである。
小学生とは思えないような体格のいい左腕の相手投手は、一塁ランナーを睨んでボールをセットした。
最後の一球となるかもしれないボールをビュンと腕をふってキャッチャーミットめがけ投げ込んだ。