第二話「水」
— 転移2日目 朝 —
喉の渇きで目が覚めた。
直人は木の根元にもたれたまま、ゆっくりと目を開けた。
昨夜は結局、雨は本降りにはならなかった。
だが、問題はそこじゃない。
「水……」
体の中が乾いている。
人間は水なしでは数日しかもたない。
これは知識ではなく、実感として分かる。
立ち上がる。
軽い立ちくらみ。
(優先順位一位)
水の確保。
直人は周囲の地形を確認する。
傾斜。
低い方向。
水は低い場所に集まる。
これは建築でも同じだ。
排水設計の基本。
「向こうか」
直人は歩き出した。
20分ほど歩いた頃。
音が聞こえた。
微かな。
——流れ。
「……ある」
足を速める。
そして。
細い川を見つけた。
幅1メートルほど。
透明度は高い。
直人はしゃがみ込む。
すぐには飲まない。
まず確認。
濁りなし。
油膜なし。
臭いなし。
流れあり。
停滞なし。
(上流に汚染源がある可能性は?)
分からない。
だが。
現状、これ以外に選択肢はない。
直人は手ですくい、少量だけ口に含む。
待つ。
違和感なし。
飲み込む。
冷たい。
体に染み渡る。
「……生き返るな」
少し笑った。
だが、飲みすぎない。
一度に大量に飲むのは危険だ。
(検証。段階的に)
数分おきに、少量ずつ飲む。
問題なし。
「水は確保できる」
これは大きい。
次は。
(拠点)
水源の近くに拠点を作るのが合理的だ。
直人は周囲を見回す。
少し高台。
増水しても浸水しない高さ。
平地。
木も適度にある。
「……ここだな」
決めた。
拠点はここにする。
理由は明確だ。
【成立】するからだ。




