表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
4/12

4 この先間違いなく損をする

 中学生になって制服を着るようになった。

鏡の前でネクタイを結ぶのだが、きれいな形に上手に結べない。母に手伝ってもらった。

「真面目すぎるのよ、あなたは」

母は微笑んでくれた。褒めているのだと思った。少なくとも悪意はなかったはずだ。

 クラスでは特に問題は起きなかった。目立たず、提出物も遅れずに出していた。だからこそ、先生から呼び出しがあったとき、その理由が分からなかった。三者面談だった。

「娘さんはほんといい子なんですよ」

「ありがとうございます」

母はちょっと照れたような顔つきで頭を下げた。あたしも少し微笑む。担任も笑顔を見せながら続ける。

「でも、ちょっとおとなしすぎるんですね。もっと自己主張しないとね、この先、間違いなく損しますよ」

母は何度も頷いていたが、あたしは机の木目をじっと見つめていた。学校からの帰り道、母はあたしに言い聞かせるように呟いた。

「先生の云う通りね。先生はあなたのためを思って云ってくれているのよ」

その日の夜、紺色のノートを開いた。日付。場所。出来事。中学1年の担任名。

《私に問題はないはずだ。でも何か足りないらしい。ちょっと傷ついた》

〈傷ついた〉と書くのは、大げさな気がして消しゴムで消した。この章は短く終わった。母が守ってくれている。その事実がその言葉を書くことを鈍らせた。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ