キスと勘違いと
俺の胸で泣いた上杉だが汚した制服とネクタイに気がついてポケットからハンカチを出した。
「ごめんね、拭いてあげるね」
俺を椅子に座らせネクタイを外して拭いた。そのあとシャツのボタンを外しシャツも拭き始めた。
「そこはいいよ」
そう言ったのに更にボタンを外す。自分のシャツもボタンをいくつか外したあと肩にむしゃぶりつくようにキスをした。
「くっやめろ」
俺は廊下の足音に気がついた。誰かが来てるようだ。扉が開けられ武田の声がした。
「あっ、織田君も伊織ちゃんも……ごめんなさい、取り込み中だったのね」
武田が扉を閉めて去っていく音がする。
「お前、こうなるってわかってて」
「織田には薫ちゃんはもったいないからね」
「くっ」
「その反応、織田は薫ちゃんが好きなのかな」
「……」
そう言われるとよくわからない。武田は確かに美人だ。男子にも女子にもモテる。でも彼女にしたいかというとあまり実感がない。どちらかと言うと友達だ。それにあちらも俺をそう言う目で見てないだろう。
「まぁこんな美少女にキスしてもらえたんだ、喜べよ」
「はぁ? お前男じゃないか。俺はかわいい本当の女の子がいいの」
「へー、じゃあどんな子がいいのかなぁ?」
そう言われると……頭に浮かぶのは武田だった。黙っている俺をニヤニヤと見ている上杉。
上杉が何か言おうとした時、授業が終わるチャイムがなった。結局武田先生の授業さぼっちゃったな。
「お前、北条先生に……」
「何もしないよ。お姉ちゃんが悲しむ顔は見たくないからね。まぁ付き合わせたからあとでおごるから、一緒に反省文書こうね」
そう言う上杉は少し柔らかい表情になったような気がした。
上杉の言う通り反省文は書かされたがそれ以上のお咎めはなかった。休学や退学になったら親が泣くからなぁ。
ただ、その後、武田の目がなんか生暖かいような、いやそれだけではなくクラスで武田と仲がよい女の子が俺を見る目が生暖かいような気がした。それ以上は何も言われないけど上杉と話していると特に感じる。
そんな騒ぎのおかげで小説はなかなか書けない。
「なぁ武田はどのくらい書けた?」
「三千文字くらいかなぁ、織田君は?」
「千文字」
「この間、五千行ったって」
「書き直してる、はぁ~なかなか難しいね〜」
書けないままゴールデンウィークが間近に迫ってきた。書けずに悩む俺たちに副部長の那須先輩が展示会に誘ってくれた。なんでも中世から近代までのドレスが展示されているらしい。
「異世界物を書く時、服装は大事だよ。実物を見るとイメージ湧くからねぇ」
佐竹部長は模擬試験で不参加。千葉先輩と里見先輩は用事がありこちらも不参加。結局、那須先輩と一年生三人で行くことになった。
「そういえば、那須先輩は模擬試験行かなくて大丈夫なんですき?」
「痛いところをつくねぇ。申し込みを忘れたんだよ」
那須先輩、だめじゃん。




