憂いを帯びた美少女(♂)
上杉が元気がない。俺が武田と話していても何も言わない。そして武田が話しかけても上の空だし一人で窓の外をみていたり。
その理由はすぐにわかった。放課後部室で二人きりになった時に武田から言われたのだ。
「どうしよう、お姉ちゃんが結婚しちゃう」
「お姉ちゃんって武田先生?」
「そう、嬉しいのだけどお姉ちゃん家を出て行っちゃうから寂しいし」
「そうかぁ。相手は知ってる人?」
「うん織田君も知ってる人」
「まさか上杉じゃ?」
「へっ?」
武田はびっくりした表情をしてすぐに笑い出した。
「なにそれ、いくらなんでも伊織ちゃんはないよ。相手は北条先生。もう式場も探してるよ」
「そっそうなのか」
「伊織ちゃんがお姉ちゃん好きなのは知ってるけどさ、さすがに年の差もあるし」
なるほど、だから最近上杉が静かなのか。
上杉がクラスに爆弾を投げたような騒ぎを起こしたのは翌日だった。
授業を始めようとした武田先生に上杉が問いただした。
「先生、北条先生と結婚するの、本当ですか?」
クラスの中は一瞬静かになって一拍おいてみんな騒ぎ出した。
「ああ、本当だ。式の日程が決まってからみんなに言おうと思ってたけど…………、私は北条先生と結婚するよ」
上杉は絶望したような表情になりクラスを飛び出した。俺と武田があとを追う。
「もしかしたら北条先生のところかも。私はそっち探す」
「じゃ俺は別なところを」
そう言ったはいいが上杉が行きそうなところなんてわからないな。
校内をあまりうろうろできないし。まずは知ってるところに、と部室に向かった。
部室の鍵は開いていた。中に入ると窓に向かって机で頬杖をついた上杉がいた。振り返った彼女(?)は俺が入ってきたのを見てもぼんやりしてる。
「なぁ大丈夫か?」
俺の気遣いを無視して毒を吐く。
「何よ、笑いにでもきたの?」
「いや、お前の中の俺ってどんだけクズなんだよ」
「ふん」
そう言いながらのろのろと立ち上がって俺の制服のネクタイを掴む。
「十年以上よ、まだ保育園の頃から」
「子供の頃に男の子にいじめられて男の子が苦手なお姉ちゃんのためにこんな格好してたのにさ、横から掻っ攫われてさ、ばがびだい」
最後は涙声だった。俺は何も言わずに抱き寄せる。上杉は抵抗せずに俺の胸に頭を埋めしゃくり上げる。
二人はしばらくそのままでいた。
俺は黙って聞いている。




