やらかしたぁ!
下校時、駅までの10分がやけに長く感じられた。二人の間に沈黙が落ちる。さっきの屋上でのやりとりが思い出された。あれは、ほぼ告白だよな。それは武田もだろう。期待していいのだろうか。そんなことが頭の中をぐるぐるめぐる。隣を歩く武田に歩調を合わせる。隣り合って歩くのはなんか恥ずかしい。でも離れたくはない。なんかこの距離、ちょっと恥ずかしさとうれしさが入り混じっている。
もうすぐ駅だ。武田が定期入れを探している。その仕草だけで俺の胸がざわつく。
帰りの地下鉄、二人で並んでつり革につかまり立ってる。俺も武田も黙ったままだった。二人とも互いの顔を見ないで前を見たまま。
カーブの多い区間で車両が揺れる。その度に二人の体が触れる。ふわっと彼女からいい香りが漂う。
「あっごめん」
あわてて俺が謝る。武田はうつむいて小さな声で答える。
「……大丈夫」
横目で見ると武田の顔が赤い。きっと俺の顔も赤いのだろう。またもさっきの屋上でのことを思い返す。はずかしすぎる! あの場の勢いがあったにしても、あれは……やっぱり恥ずかしい。武田も大胆だったよな。
居心地が悪いような、でも一緒にいるとうれしいようなそんな気持ちに戸惑いながら地下鉄に揺られていく。
武田の方をみていられなくてよそを見ると他校の女子がこちらを見ていた。俺が彼女達を見たからかさっと視線をそらした。??? なんだ? 彼女たちは俺たちの方をちらちら見てなにか話している。俺たちのことを勘違いしている? それとも武田がかっこいいから?
そこでようやく俺も気がついた。武田はカッコいい。それは確かだ。そんな武田が顔を赤らめている。勘違いされてる? さて、どうする? 女子を見つめるわけにもいかないので武田の方を向く。
「……」
「なに……かな?」
武田が不思議そうに俺に聞く。
「いや、なんでも、ない」
俺は短く答えただけだった。武田は不思議そうに車内をみまわした。どうやら彼女たちに気が付いたようだ。小声で俺にささやく。
「どうする? 移動する?」
いや、それも違う気がする。
「いや、大丈夫じゃない?」
こちらの視線に気が付いたらしい彼女達はうつむいたまま喋らなくなり、次の駅で降りて行った。
心地悪いような、それでもやっぱり嬉しいようなそんな時間が続く。
「「あの」」
被った。
「何かな」
「いやごめん、武田から」
「……」
「……」
二人して黙ってしまう。武田が意を決したように話し始めた。
「今日のことだけど……」
「あれ、ちゃんと考えるから、もう少し時間ください」
今更だけど、あれだけのことしたんだけど、ちょっと日寄ってしまう。でも、うかつなことは言えない。ようやく、俺の中で武田が大事だと思い知らされた。
「わかった。待ってる」
武田がほほ笑む。そして沈黙。
恥ずかしいような嬉しいようなそんな時間も有限だ。俺が先に降りる駅が近づく。結局、そのあとはほとんど話せないで先に降りる。駅のホームで地下鉄を見送るとき、ほっとしたようなそれにもまして寂しい気分だった。




