屋上は天国か地獄か
俺は扉を開けて屋上に出る。空は曇りでそろそろ雨も降りそうな気配もする。武田の横に立つと武田も今川も言葉が出ないようだ。突然話題の主が現れたので仕方ない。
さて……俺は……ノープランだったぁ! 仕方ないなるようになるさ、ラブコメの神様、俺に力を。
俺はとりあえず武田の肩に手をかけ、目の前にいる女子、今川に向かい合った。
「そこまでにしてくれ、確かに俺と武田はまだ付き合っていない。でも武田は俺にとってだいじな(友)人だ。だから、武田をいじめる奴は全力で潰す」
俺は勢いだけでセリフを吐く。その勢いに押された今川だが一瞬遅れながらも言い返してくる。
「あぁあんた、ちっちっ地下鉄で上杉君を抱きしめてたじゃない、あんたは本当は上杉君が好きで武田さんは隠れ蓑でしょっ……」
「はぁ~」
俺は大げさにため息をつく。うんうんこうだよな。
「上杉は武田の幼馴染だよな。武田にとって大事な人だ。そんな上杉が地下鉄の中で転びそうだった。転んでけがでもしてみろ、武田が悲しむだろう。俺は大事な(友人の)武田が悲しむ顔をみたくねぇ。だから転ばないようにしてただけだ。あいつが好きなわけじゃねぇよ」
「あっあっあればどう見ても上杉君と恋人……」
「あの状態なら上杉じゃなくても武田じゃなくても今川でもささえたよ」
「なっなっ何いうのよー」
なぜか今川が顔を赤くしている。そして何となく横から殺気を感じる。
「ねぇ今川〜もうやめようよ」
「そうだよ、本当に好き同士なら応援するけどやっぱりおかしいよ」
今川の後ろにいた女子二人が今川を止めようとする。
「二人ともなんで今更そんな事言うの?」
「だってさ、やっぱりこれおかしいよ。私たち壁じゃなくておせっかい婆だよ」
そして今川の友達二人は顔を見合わせたあと、俺と武田に向かいお辞儀をした。
「ごめんね、もう付きまとわないから」
「今川もほら」
今川はしばらく迷っていたけど俺達に頭を下げて小声で謝った。
「ごめんなさい」
そうして三人は屋上から出て行った。
「ねぇ、織田くん、だいじな人って」
「あぁ、あれは勢いというかその場の雰囲気と言うかまぁその」
「ふーん、この間のしばらくだから我慢してって?」
「あれも、まぁ、今川達がいろいろ言いそうだし」
「ふーん」
そう言うと武田は俺の腕を抱きしめた。
「ねぇ、やっぱり今川さんみたいに胸が大きい人がいい?」
「なっ何を言い出すんだ」
「だって今川さんの胸、見てたじゃない」
それはたな、男の性というか、確かに大きい胸が好きな男は多いが、どこかで読んだ『好きな人のサイズが最の高』なんだよな。口には出さないけど。
「あまり関係ないかな」
「ふーん、じゃ、伊織ちゃんみたいに真っ平らでもいいんだ」
「なんでそこで上杉が出てくるんだ。上杉が好きなのは女性だろ。それに俺は女子が好きなんだ」
「へぇ~そうかぁ。」
武田はにやにやしているけど俺の腕を離すとくるっと後ろを向いた。
「今日はこれで帰ろう。一緒に帰ってくれるでしょ、先に行って荷物まとめるから、早く来てね」
武田が建物に入ってから誰かに『ありがとう』といい階段を降りていく気配がした。そのあと、とびらからひょこっと姉小路が顔を覗かせる。
「げへへ、見せてもらいましたぜ旦那。なんですかその俺やらかしちゃいましたかって顔。どんだけカッコつけたってモブはモブ。異世界転生したオレツエー勇者じゃないんですから。今のうちに武田さんしっかりつかまえておきなさいね」
言うだけ言って姉小路も階段を降りていく。
今更ながら、やっちまったぁ感が半端ない。それにしても武田さん、本当に俺でいいのだろうか?




