評論会
「おーい織田、おわり、カラオケ行かないか?」
「悪い、今日は部活だ」
斎藤達に誘われたけどまぁあいつらの狙いはわかってる。俺が武田を連れていけば武田の友達が来ると思ってるのだろう。しかし今日は部活を休めない。
授業後、俺と武田は部室に向かった。すでに腐女子達は部室に集まり俺と武田を見てひそひそ言っている。『偽装恋人』とか聞こえるからまだまだ疑ってるな。あとから那須先輩と上杉が入ってくると、『副部長特権』とか聞こえるから笑いそうになった。いや部活の副部長にそんな特権ないから。
部員全員が集まったところで部長から説明が始まった。
「秋に出す部誌にみんなで原稿を出してもらうことはすでにわかってると思います。今日は三年生と二年生の作品の評論会を開きます。一年生のみんなはまだ書けてないと思うから今日は聞いてるだけね。武田さん、上杉君、織田君は書けてるところまであとで出してね」
俺達はまだ書き上がっていないから今日は免除。当然、俺と上杉のBLを狙いの腐女子達は一文字も書いてないから免除。彼女達は全く書く様子がない。最初に説明があったと思うけど秋の部誌に向けて書かないと。
書かないどころか部室にある本も読もうとしてないみたい。せめて部室に置いてある本くらいは読もうよ。ああ、自分のことは棚においてるよ。部室にラノベないから。武田から借りた悪役令嬢が冒険者になる作品はよんでるよ。あれは面白いな。
さて、先輩方四人の作品が俎上に上がる。
「まず最初は里見さんの作品から。あらかじめ読んでもらってるけどいいよね。ああ一年生は見てるだけね」
と言われるような軽いものじゃなかった。
「じゃ、私から」
「はい、千葉さんどうぞ」
「この作品、最初に書かれてる人物像と後での人物像、ぜんぜん違いませんか。これでは別人と言われてもおかしくありませんよ」
「何をおっしゃる、この主人公の二面性を表してるだけですよ、よくお読みください」
言葉は丁寧だけど、千葉先輩と里見先輩のやり取りはなんか怖い。それでもまだ二人は予想通りだったけど佐竹部長も那須先輩も遠慮がない。
最初はにやにやしながら聞いていた腐女子達もだんだん顔が引きつってくる。あらかじめ去年の評論会の録音を聞かせてもらってる俺達でも怖いのだから初めて聞いた彼女達にはじわじわと来ているのだろう。
『なんか貴族令嬢の夜会でのやりとりみたい』
武田がつぶやく。彼女も平気なはずもなく少し固い表情。上杉は平然としているのはさすがだ。評論亜h時間が決まっているので、スマホのタイマーが鳴ると次の作品に移る。当然、攻守交替で千葉先輩も里見先輩も相手が那須先輩だろうがお構いなしだ。
扉が開く音がして武田先生が入ってきた。
『武田先生来るって言ってたっけ?』
『お姉ちゃん来るって聞いてなかったよ』
佐竹部長達の表情からしてもこれは予定外なのかな。武田先生はそのあとは何も言わず聞いているだけ。先輩たちのやり取りも今までと変わらず。そしてスマホからベル音がして評論会は終わった。
「お疲れ様。みんな参考になったかしら。それにしても先輩の心構えができたのね。いつもより穏やかに終ったわね。一年生がいると違うわね」
あれで穏やか? なんか先輩方の背景に炎とか氷とか見えていた気がしたのだけど。
引きつるだけでなく顔色も悪くなる腐女子達。自分達の作品も突っ込まれるのを想像してるのだろう。わかるよ、俺も色々つっこまれそうだと今からドキドキしてる。来年はいや秋が終わると俺達も評論の的かぁ。
『最初は怖いかもしれないけど、よく聞くと大事な指摘だったりするからね。もちろんフォローは入るから安心して』
那須先輩が言ってたけど心配だなぁ。大丈夫かな?
武田先生は仕事の合間に覗きに来たようですぐに職員室に戻っていった。腐女子達は引きつった顔のまま帰っていった。明日からテスト終わるまで部活は休み。テスト後にみんな来るかな?
「私たちの作品、大丈夫かなぁ」
帰り道、武田が心配そうに話す。確かに心配だけど……。
「大丈夫だよ、読ませてもらったけど面白かったし」
そう言うと武田はちょっとホッとしたような顔でつぶやいた。
「ありがとう」
◆◆◆
俺と武田の仮の恋人は『少なくとも夏休みまで』と言われているのでそのまま継続。武田に悪いような、何となく嬉しいような。
「おーい、織田、おわり、テスト勉強一緒にしようぜ(チラッ)」
「そうでござるな(チラッ)」
「ああ、わかった、わかったよ。悪いな、武田、畠山、朝倉、俺もこいつらも一緒に勉強したいのだけど、いいか?」
俺は武田達に声を掛けた。




