グレイセス屋敷を襲撃。4
そして最後に残った私の番になる頃には足元が焼け落ちて今にも建物が崩れる寸前だった。
父親と母親を地面に降ろすとアレクは急いで窓に戻って来る。
「さあ、早く!」
白いドラゴンの背中から手を伸ばすアレクに、私は窓から身を乗り出した。
だが、足がすくんでそれ以上、前に進めない。
「……無理です」
「なにを言っている!! さあ、早く!!」
ドラゴンの背に乗っていたアレクはそう言って窓の柱にしがみつく私に更に手を伸ばした。
遥か先に見える地面を見て目が回るような感覚にどうしても飛び出す勇気が出ない。
そう。私は誰よりも弱い人間なのだ……去勢を張り、口調を変えて自分が変わったように感じていたが、根っこにあるのは泣き虫で自信のない弱い自分。
ドラゴンと窓を挟んだ地面が見えるわずかな隙間にさえ恐怖に足がすくんで飛び出せない。
「早く! アリシア!」
「無理……無理……むりです……こわい……こわいの……」
窓の柱に手をついていた私は情けなくその場に座り込む。
その間にも炎は容赦なく私の背後に迫っていた。
「アリシア! 大丈夫だ! 必ずお前を救い出してやる! 俺を信じろ!」
その時、昔の記憶が蘇り、白馬の上で幼いアレクの言葉と重なった。
私は立ち上がり目を瞑ると意を決して地面を蹴って窓から飛び出した。
次の瞬間、私の体はたくましくも柔らかい何かに包まれていた。
「……もう目を開けてもいいぞ」
「は、はい」
恐る恐る瞼を開くとそこには自分を見下ろして微笑むアレクの姿があった。
私は恥ずかしくなり頬を赤らめて慌てて視線を逸らす。
「お前を助けられて良かった……」
「……アレク」
アレクの水色の瞳には微かに光るものがあった。
その様子からきっと彼も不安だったのだろう。私はアレクが本心からその言葉を口にしているのだと分かって、アレクの首に腕を回して抱き付く。
「……本当に迎えに来てくれたのね。私を救い出してくれてありがとうアレク」
「当然だ。言っただろう? 俺はお前と結婚すると……必ず迎えに来ると……」
「……ええ」
彼の言葉に私の瞳からは自然と熱いものが流れていた。
白いドラゴンの背中で互いの体を抱き寄せていつまでも私とアレクは抱き合っていた。




