神秘の種。8
兵舎に着くと、私の姿を見て表情を青ざめさせた兵士達が慌てて走って来る。
「姫様! なにをしているのですか! そんなこと、言われれば俺達がやりますから!!」
「いえ、私がやりたくてやってることですから……それに皆さんも仕事があるでしよう?」
「大丈夫です! 俺達なんてその辺で草食って寝てるだけですから!」
若い少年兵はそう言って私の持っていたポーションの入った木箱を奪い取った。
そこに長い茶髪を後ろで結んだ青年が歩いて来た。
「姫様。私達は姫様にこんな事させたとアレク様にバレたら酷い目に合わせられるんですよ。だから、私達を助けると思って今度からは私達を呼んでくださいね」
「あはは……婚約者がご迷惑を掛けてすみません……」
私は苦笑いを浮かべた後に頭を下げた。
ポーションを届け終わると、私はフランのところに戻る。
フランのところに戻ると、メイド達がケーキやクッキーなどのお菓子と紅茶が用意されていた。
「あっ……アリシアお姉ちゃん。おかえりなさい」
「ただいま。フランちゃん!」
私がソファーに座っている彼女に笑顔で言うと、フランも嬉しそうに迎えてくれた。
「……アリシアお姉ちゃん。ここ」
フランは自分の座っているソファーの端によると、ポンポンと隣の空いている場所を叩いて私を呼んだ。
私もそれを受け入れてフランの隣に座った。
すると、お菓子を乗せた皿が目の前のテーブルに置かれる。
「……食べよ」
フランはお菓子を手に取ってもぐもぐと小さな口を動かして食べ始める。
私もケーキをフォークで切り取り口に運ぶ。
「美味しいわね! フランちゃん!」
「……うん。おいしい」
頷くとフランは私と同じケーキを口に運んで嬉しそうな顔をする。
私はそんなフランの様子を見て微笑ましく思っていた。
私達はお茶会を終えると、少しフランの部屋で話をして軽食を取ってアレクとの寝室に戻った。
「はぁー、疲れたぁ……」
ベッドに倒れて転がりながら大の字で天井を見上げていると、何かが窓を叩く音が聞こえてきた。
私が音のする窓の方を見ると、昼間に見た小鳥がそこにいた。
チュチュ! チュンチュン!
「……昼間の小鳥さん。そう言えば食べ物を上げるって言ったっけ! ちょっと待ってね! クッキーがあったはず!」
窓を開けて急いでクッキーの入った缶を探していると、何者かが突然私の口を手で覆った。
「んっ!? んっ!! んっ……」
「…………すみません」
背後を取られ遠退く意識の中で青髪の男性の申し訳なさそうな曇った顔が見えた気がした。




