神秘の種。5
フェンリルが去ったことで、辺りには静寂が訪れた。
「ふぅ……」
緊張から解放された私は深呼吸をしてその場に立ち尽くしている。
「……アリシアお姉ちゃん。大丈夫だった?」
走ってきたフランは私に抱きつき心配そうに私を見上げた。
「ええ、大丈夫。怪我もないわ……心配してくれてありがとうね! フランちゃん」
私はフランの頭を撫でると、フランは気持ち良さそうに目を細めている。
「さぁ! 神秘の種を取りに行きましょう!」
「うん!」
私とフランは再び神秘の種のあるであろう大きな木へと向かった。
フランは嬉しそうに微笑むと、私の隣を一緒に歩いていく。
神秘の種がある大木は、遠目から見てもかなり巨大なものだとわかるほどで神秘的としか表現できない美しさを放っていた。
「……きれい」
「……うん、本当に素敵ね」
私とフランがその木の美しさに魅了されていると、その木の桜の花のようなものの中央にある突起がどうやら神秘の種のようだ。
私はその種を指先で摘んで取ると、花が一瞬で枯れてしまった。
「ごめんね……あなた達の命は無駄にはしないから……」
そう言って、私は花から数個の神秘の種を取るとフランとその場を離れた。
その後、私はグラベルに散々怒られてしまう。
「アリシア様。今回は何事もなかったから良いですが、魔物は危険な猛獣です」
「……はい」
「アリシア様にもしもがあれば、アレク様になんと説明すれば良いのですか? そもそも護衛を残して魔物に接触するなど鎧も付けずに矢の雨に飛び込むようなものです」
「……ごもっともです」
その場で肩をすぼめて小さくなる私に、グラベルのお説教はしばらく続いた。
お説教が終わると、私達は樹海の入り口に待たせてあった馬車の元に戻った。
神秘の種を持ち帰る道中、樹海の道で何故か魔物に襲われることはなかった。
魔物達は気配はするものの、私達の見える距離にいながら襲ってくる様子はなかったのだ。
城の中の屋敷に戻ると、私とフランは敷地の中の木を植えられそうな場所を探した。
神秘の種を植えれば相当大きな木に成長する。
小さな場所で私の能力を使ってしまうと、建物を破壊してしまいかねない。
私とフランは神秘の種を土に埋めると、フランがそのまま離れた。
「……アリシアお姉ちゃん。お願い……」
「……うん。分かったわ」
両手を前に突き出して目を閉じて集中した。
すると、神秘の種を埋めた場所がふんわりと光り輝いて芽が土の中からひよっこりと姿を見せた。
芽が出た神秘の種は瞬く間に成長し、ついには天を仰ぐほどの大樹へと育った。




