ポーションの精製。5
部屋の中に入ると兵士達が扉を閉めるのを確認して、私は大きく息を吐き出す。
「はぁー、バレたかと思ったわ。寿命が縮んだぁ……」
「アリシアお姉ちゃん。名演技だった……」
「そ、そう? フランちゃんがそう言ってくれるなら、良かったわ……」
ドレスの裾の中からフランが出て来るとそう言って小さく微笑む。
私とフランは皇帝陛下が眠っているベッドの方にゆっくりと歩いて行く。
フランちゃんの年齢から見て明らかに高齢過ぎる白髪を生やしたおじいさんのようにしわくちゃになって、弱々しく痩せ細った皇帝陛下の姿に私の胸が締め付けられる。
「お父様……フランです……」
「おぉ……フランか? もっとこっちに来て顔を見せておくれ……」
「はい」
フランがベッドに横たわる皇帝陛下の元にゆっくりと近づくと、皇帝陛下の顔を見下ろす。
感極まっているのかフランの綺麗な紫色の瞳からは涙が流れている。
「おお、フラン……大きくなって……美しい瞳だ……顔もビクトリアに似てきたなぁ……」
「は、はい。お父様……」
「そちらのお嬢さんは? どこの誰かな?」
「…………ッ!?」
私は皇帝陛下の言葉に心臓を掴まれたようにドキッとその場で肩を揺らす。
娘のフランですらお墨付きを付けるほど、完璧に変装していたはずなのにこんな暗がりで皇帝陛下にバレると思っていなかった。
しかし、バレてしまっているのであれば嘘を付くのは失礼でしかない。ここは正直に話すしかない……
「……私はアレク様の婚約者となったアリシア・グレイセスです。皇帝陛下、お初にお目に掛ります。このような姿での御無礼……どうかお許し下さい」
「うむ」
ドレスの裾を持ち上げて丁寧にお辞儀をした私に、皇帝陛下は小さく頷く。
「お父様……どうしてお母様じゃないって分かったの?」
フランは驚いた様子で皇帝陛下に聞いた。
「はっはっはっ……そのお嬢さんはビクトリアよりも背が低い。それに目元が優しすぎるし顔も妻とは似ても似つかぬ……長年連れ添った妻の顔を見間違えるわけがない」
「はあ……さすがです」
私は感心したように小さく息を吐いた。
「そうだ! お父様……フラン。新しいお薬を作ったの! きっとこれを飲めば良くなるわ! アリシアお姉ちゃんと一緒に作ったの! 今度はきっと大丈夫!」
フランはポケットからポーションの入った小瓶を取り出すと、それを皇帝陛下に差し出した。
皇帝陛下は瞳に涙を浮かべているフランの頭を優しく撫でると、小さな手に持った小瓶を受け取って栓を抜いて躊躇せずに飲んだ。
その直後、皇帝陛下の体が緑色に光り輝いて皇帝陛下が咳き込む。




