国民への婚約発表。5
「私。お披露目の前にお風呂に入ってきますね」
「ああ、それがいい。こちらにドラゴンで戻って最中は水浴びくらいしかできなかったからな。肩まで浸かって温まって来るといい」
アレクが提案すると私も微笑みを浮かべて深く頷いた。
「それじゃー、また後で……」
私はそう言って軽く手を振るとお風呂に向かった。
大浴場に着くと、脱衣所でドレスを脱いだ。
さすがは王宮の大浴場だ。脱衣所も広く内装は石壁でとても高そうだし、天井には騎士やドラゴンなどの絵画が描かれていてステンドグラスで光が差し込むように設計されている。
裸になって浴室に向かうと、浴室内は更にすごい造りになっていた。
床は大理石だし、天井には月や星々が見られるようにかガラス張りのドームのような構造で空が一望できる。
とても日中に入るのは少しもったいなく感じてしまう……
千人が一度に入っても埋まらないであろう大きな浴槽にはマーライオンのようなオブジェや、瓶を担いだ女性がお湯を瓶から絶え間なくお湯が滝のように流れていた。
「すごく広い……私の前の屋敷とは比べ物にならないわぁ……」
浴室内を見渡して思わず声を上げた。
さっそく、体を洗ってからゆったりとお湯に浸かる。
息を吐いて肩までお湯に体を沈めると、体の疲れが取れていく気がする。
「ふぅ〜、やっぱり広いお風呂は最高ね。心も体も洗われるよう……」
お湯を両手ですくってそれを見つめながらホッと安心したように表情を和らげた。
私は今まで気を張っていたのかもしれない。突然の婚約破棄から屋敷の襲撃、幼少期にたまたま出会った男の子が隣国の王子で、今日その人との婚約を発表する。
正直。何がなんだか分からない……まだ、夢の世界にでもいるような心地でいる。
「私……今日、アレクと正式に婚約するんだ……」
そう考えたら突然恥ずかしくなって顔が真っ赤になり、私はお湯に沈み込む。
お湯の中は音が遮断されて自分のうるさいほど脈打つ鼓動の音が響く。
私はアレクの事が好き……だけど、私がアレクの妻に相応しいかは別の話だ。お義母様は認めてくださったけど、国民が婚約を良く思ってくれるかは別の話だ。
「ぷはっ……弱気になってどうするの? 私はアレクに相応しい人間になる! それしかないじゃない! だってアレクが好きなんだもの! 命まで助けてもらったアレクを愛してしまったんだもの! よーし。頑張るぞー!!」
私は立ち上がるとグッと両手の拳を握って決意に満ちた表情で頷いた。




