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アポロノーゼス帝国。2

「アリシア・グレイセスよ。これからよろしくね、セリア……」


 私がセリアの頭を優しく撫でてあげると、セリアは目をとろんとして気持ち良さそうに喉をごろごろと鳴らす。


 獣人族は初めて見たが、習性も猫なのだろう。喉をごろごろと鳴らして更に撫でてもらおうと私の手に顔を擦り付けてくる。


「本物の猫みたい……またたびとかも効くのかしら……」

「……んー、にゃぁーごろごろ……ハッ!」


 セリアは我に返ったように目をパッと開くと私から離れた。


「あたしはこう見えてもうそんなに子供ではありません! こう見えてもお着替えの手伝いや洗濯、お掃除、料理なんでもできるのです!」

「そうなんだ。偉いですねぇ~」

「うにゃ~、なでなできもちいぃ~、ごろごろぉ~」


 胸を張ってそう言ったセリアの頭をまた撫でると、セリアはとろけたようにだらしない顔で尻尾を振って喜んでいるように見えた。


 その後、存分にセリアの頭を撫で撫でして上げるとハッと我に返ったセリアが付いて来いと言わんばかりに前を歩いて行く。


「ご主人様より、アリシア様を食堂へ案内するように言われていたのです! 今日は凄いですよ~。屋敷の料理人が腕を振るったフルコースなのです!」


 前を歩くセリアの自慢のサラサラのピンク色の長い髪をなびかせながらその隙間からぴょこんと出た尻尾がくるんくるんと動き、胸を張ってドスドスと歩いで少しでも威厳を見せようとするセリアが子供のようで可愛い。

 

「……アリシア様。こちらなのです!」


 太陽光の差し込む長い廊下を歩いて行くと突き当たった場所でセリアがピタッと止まってクルッと振り返った。


「案内してくれてありがとう。セリア」

「うにゃ~、うにゃ~、なでなでしゅきぃ~」


 食堂の前でセリアを撫で撫でしていると、後ろから大きな声が聞こえてきた。


「どけ! 女! 邪魔だ……」


 私が振り返ると大柄な立派なたてがみを持ったライオンの獣人が現われた。


「……すみません」

「ふんっ! 貧相で小便くさいガキが……嫌なにおいだ。朝っぱらから気分が悪い!」


 道を空けるとフンッ!と鼻を鳴らして多いな巨体を揺らしながら食堂へと入って行く。


 手を合わせて道の端で頭を下げてぷるぷると震えているセリアの様子を見るに、相当な地位の人物かただただ乱暴者かのどちらかなのだろう。


 私は彼がいなくなった後でホッとした様子で息を吐いたセリアに小声でたずねる。


「……あのライオンさんは誰?」

「ライオンさん!? ダメですダメです!! そんなこと言ったら首が飛ばされます!!」


 慌てた様子で両手をブンブンと振ったセリアは言葉を続ける。


「あの御方は。皇帝陛下の直属。グレンガント・カイザー・レオ様です! 皇帝陛下の直轄部隊の将軍で別名、最強無敗の大将軍と呼ばれています! 戦場で両手に二本の大斧を持ち飛ばした首の数は敷き詰めれば一国の領土に匹敵すると言われているです! 例え皇帝でも王子でも暴言や暴行を特別に皇帝陛下に許可されている唯一の人物なのです!」


 どうやらあのライオンは相当な地位で乱暴者の両方だったようだ……

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