クリス王子とエリネット。裁かれる・・・
それからは早く、アレクの応援の部隊が到着し、襲撃した部隊に王子の私兵が多いことからクリス王子が主犯だとあっさりとバレて翌朝には国王の前にクリス王子とエリネットが引き出された。
「……クリス。今回のアリシア・グレイセス。並びにグレイセス公爵夫婦の殺害未遂になにか反論はあるか?」
「ち、父上! なにかの誤解です! 俺にはなにの事やら……きっと、兵士達が勝手に元婚約者であるアリシアを恨んでの犯行でしょう! 俺は無罪です! 信じて下さい父上!」
焦っているのか上ずった声で必死に弁明するクリス。
それを冷たい目で見た国王は次に冷や汗を掻きながら必死に視線を逸らしているエリネットの方を見た。
「エリネット・ヘンデール。今回の事でお前とクリスの屋敷を調べていたところ、我が国で栽培を禁じている違法な植物の調合された飲み物が発見された。どうやらヘンデール侯爵家の配下の辺境伯家の領地での栽培にお前の家が関わっているらしい。また、お前の部屋とクリスの部屋にも同じ飲み物が発見された……これはどういう事か?」
エリネットは急に泣き出して地面におでこを擦りつけながら叫んだ。
「違うんです陛下! わたくしは無実です! それもこれもお父様とクリス殿下に無理矢理……ですから、わたくしはなにも知らなかったのです! 信じて下さい陛下!!」
情けなく地面に伏して泣きわめくエリネットに国王が一枚の紙を投げた。
そこにはエリネットの署名と香水の香りの付いた取引の際の証書とヘンデール家の紋章の印が押されていた。
「……こ、これは!」
「これでも……お前は関与していないと?」
「あああああああああああああああああああああああああああああっ!!」
それを見た瞬間、エリネットは観念したのかその場で号泣しながらうずくまる。
「そうだ! アリシア……俺が悪かった! アリシアからも父上に頼んでくれ! 俺は悪くないと……仮にも元婚約者だったわけだ。俺が裁かれる姿を見て心を痛めてくれるだろ?」
「………………陛下。私に殿下とお話する許可を頂けませんか?」
「うむ。認めよう」
国王に頭を下げた私は王子の前まで歩いて行くと、王子は救いを求めるように私を見上げた。
パーンッ!!
その直後、謁見の間に破裂音が響き渡る。
「私を捨てたのは殿下でしょう!? 都合のいい時だけ女に泣き付かないで!! むしろ婚約破棄されて良かったと思っています!!」
「……アリシア。な、なぜだ? 何故なのだああああああああああああああっ!!」
クリスはぶたれた頬を押えながらその場にうずくまった。かと思うと、突然立ち上がってアリシアに殴り掛かる。
だが、それはアレクに阻止され顔面を思い切りグーで殴られ、クリスの体は軽々と部屋の端まで吹き飛ばされた。
「……国王陛下。失礼しました……我が婚約者に手を出されそうになったので、つい手が出てしまいました。お許しを……」
「…………よい。こちらこそすまない。アポロノーゼス帝国の王子であるそなたの手を煩わせてしまって……我が息子ながら、なんとも往生際の悪いことよ」
その後、王様は立ち上がり周囲の兵士達に命じる。
「エリネット・ヘンデールとクリス・デルノンを牢に入れよ! 追って沙汰する!」
王様の言葉に兵士達は暴れるエリネットとクリスを掴んで牢へと連行して行った。
後に知らされたのだが、違法な植物を栽培し調合した飲み物を国内外に流していた事でエリネットとその父親のヘンデール侯爵は処刑。クリス王子は辺境の地に流刑にされたという……
多くの使用人と両親と共にドラゴンに乗って空を飛んでいる。私はアレクの白いドラゴンの背に乗って彼の国であるアポロノーゼス帝国に向かっていた。
新天地でたまたま幼少期に出会った運命の人とこれから私の新しい人生が始まる。それが今はとても楽しみで胸が躍っていた……




