1話 婚約破棄されました。
ここはエリサンドル王国……そこの公爵令嬢に生まれた。アリシア・グレイセス。
私には俗にいう許嫁というなの親同士の決めた婚約者がいた。この国の国王の息子で第一王子のクリス・デルノンだ。
幼少期の私はすぐ泣く気弱な子だった……
ある日、王子様に連れられて森の探検に行った話の事だ。
王城の暮らしが退屈だと言うことで、こっそりと王城を抜け出した私はクリス様に連れられて魔物が出るという森にやってきた。
下ろし立ての靴を履いてきた私は途中で靴擦れを起こして歩けなくなってしまう。
「おい! エリシア! お前俺の婚約者なんだったら泣くな!」
「うっ……ぐすっ……ぐすんっ……でも、クリスさまぁ……」
「もう面倒くさい奴だ! 俺は弱い奴が嫌いなんだ! 歩けないなら置いて行くぞ!」
「ちょっと待って……うぅぅ……足が……クリスさま! 待って! クリスさまぁー!!」
そう言ってクリス王子は私を置いて先に行ってしまった。
それからしばらくその場で私が泣いていたら、白馬に乗った男の子が従者を連れてやって来た。
顔は黒くなっていて思い出せない……
「君、大丈夫? ああ、靴擦れか……こんな靴で森の中に来るなんて……ほら、足を出して……」
「……う、うん」
男の子は私の足から靴をゆっくりと脱がせると、自分の服の袖を破ってそれを靴擦れを起こして赤く血が滲んでいる私の足に巻いてくれた。
「さあ、これで大丈夫! こんな場所で一人で居たらダメだ僕が街まで送り届けて上げるよ!」
「うん。ありがとうございます……」
その男の子の顔は思い出せなかったが、彼の優しく微笑む口元は今も忘れられない。
そう。その出来事から、私は強くなりたいと思うようになったのだ……
それから時は流れ私は16歳になっていた。今日は王国主催のパーティーでこの舞踏会で正式に私とクリス王子の婚約が発表される特別な日……だった……
パーティー会場の大勢の聴衆の面前でクリス王子の横にはオレンジ色の髪の女が涙を流しながら王子の腕に抱き付いていた。
「……クリス様。わたくしをアリシア様が虐めるのです」
「おお、そうかそうか。おい! アリシア! お前! 前から偉そうな態度を取っていたが、公爵令嬢が侯爵家のエリネット・ヘンデールを辱めるとは! 侮辱罪だ!」
クリス王子はエリネットの肩を抱いて私を指差して叫んだ。




