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第21話 2月28日 莉々と藤川と

最近、雨宮莉々から執拗にLIMEが来る。


紫苑との仲を取り持ってほしいーーそればかり。

自分でアタックしてるじゃん。

この前、紫苑には勧めてみたよ。

でも、興味なさそうだったんだよ。

私が何をすれば、納得してくれるのだろう。


ずっとスルーしてきたけれど、そろそろ真正面から向き合うべきかもしれない。


放課後、莉々と二人きりで会ってみることにした。

紫苑が委員会活動の日なので、ちょうどいい。

待ち合わせ場所ーー莉々の教室へ向かう。


「莉々ちゃん、お待たせ」


「……絵梨花、莉々のお願い、聞いてくれないの?」


ーー早速、それか。

想定していたとはいえ、あまりに想定通りで、苦笑いするしかない。


「だって、莉々ちゃん、自分から行けてるでしょ? この前、紫苑くんに莉々ちゃんのこと、勧めてみたよ? でも、そういう気分じゃないみたいなこと言ってたんだよ。もうこれ以上、私には無理だよ」


「……絵梨花、莉々との約束、破ってるじゃん」


「だから、協力はできないって言ってるでしょ?」



「なんで髪切ったり、スカート上げたりしてるのよ?」


「……え? だって、髪は重いし、動きにくいし」



「莉々は、絵梨花にはあのままでいてほしかった! 紫苑くんと一緒に暮らしてるってだけでもズルいのに、絵梨花が女の子として見られたら困るじゃん! 莉々、絵梨花のこと嫌いになるよ? もう莉々と友達じゃいられなくなるよ?」


ーーあぁ、これか。

女の子らしいものが好きな絵梨花が、自分の身なりを地味にしていた理由。

美容師さんが言っていた、友人というのは、莉々だったのだ。


絵梨花は、莉々ちゃんに絶交されるのも怖かったのか。

こんな友情、なくても困らないのに。

絵梨花は本当に、自己肯定感が低い子だったのだな。


「莉々ちゃん、私は妹なの。そういう関係にはならないよ?」


「嘘! 勉強会の時、二人だけ帰ったじゃん! 紫苑くん、絵梨花にだけ他の子には見せない顔をするの。ズルいよ!」


「だって、それは……私が妹だから……」



「絵梨花も紫苑くんのこと好きなんでしょ?」


莉々の言葉に、思わず動揺してしまった。

ーー違うよ。

もし、そうだったとしても、私はそのうち消えてしまうんだから。


「違うよ。絶交するならしてもいいよ。髪を切ったのと制服のことは、知らなかったから。でも、知っていても、こうしていたと思う。ごめんね、莉々ちゃん。何か困ったら話は聞くから、あとは自分で頑張ってね」


「絵梨花、待って! ごめん……」


莉々に手を振り、私は一人で教室を後にした。



*****



「絵梨花、今帰り?」


振り向くと、藤川くんが立っていた。


「……あの、何か?」


気分を害さない程度に、にっこり笑顔で答える。


ーーなんなの? 次から次へと。



「いつも兄と一緒でしょ? 一人なら一緒に帰らない?」


「急いでいるので……」


早足で帰るも、運動部の藤川くんに追いつかれる。



「俺、一度欲しいと思ったものは、絶対に諦めないよ?」


ーー何それ、怖っ!

こっちは自己肯定感が高すぎる。


「だって、私なんか、藤川くんには合わないですよ」



足が自然と速くなっていく。

けれど、現役運動部のスタミナにかなうわけがない。


「絵梨花、もしかして兄のこと、好きなの?」


「……違いますって!」



「なら、いいじゃん。俺、兄より優秀だぜ?」


「そういうことじゃなくって!」


ーー私は、絵梨花じゃないし、大人だし、もうすぐ消えるから。

誰かと付き合うとか、できないから!



「ばいばい」


駅に駆け込み、いつもは乗らない電車に乗った。

どうにか巻くことに成功した。



*****



無駄に駅の移動をしたせいで、いつもより帰宅が遅くなった。


夕飯とお風呂などを済ませ、紫苑の部屋で勉強をする。


「今日、帰るの遅くなかった?」


「あー、莉々と、藤川くんが……」



紫苑の肩が、ピクリと動いた気がした。


「藤川が、何の用なんだよ」


俯いてたままだけど、少し機嫌が悪くなったのは、なんとなくわかる。



「なんか追いかけてくるから、逃げちゃった」


私が笑うと、紫苑がため息をついた。


「藤川のやつ、しつけぇな。明日からは、俺が一緒に帰るから」


「……ありがとう」


莉々と藤川くんが変なこと言うからーー。

紫苑に心配かけちゃってるじゃん。


ーー心配?

いや、妹として、家族として、心配しているだけだから。



ふと、紫苑の答案を見ると、やり方を間違えている問題を見つけた。


「そこ、やり方違うよ?」


「ん? そう?」



消しゴムを取ろうとした時、私の手の上に、紫苑の手が重なった。

私の指の間に、紫苑の指が絡まる。


「えっと……?」


ーー顔が上げられない。

紫苑の顔を見ることが、できない。



「……あ、今日は、もう疲れちゃった。ごめん、また明日ね!」


ーーたまたま!

たまたまなのに。

紫苑は高校生で、私は大人なのに。

こんなことで動揺するとか、今日は本当にどうにかしてる。


私は、動揺を隠すかのように笑って、紫苑の部屋を後にした。

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