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第12話 1月28日 非公開ブログ

ここは私の部屋のはずなのに。

どうもしっくりこないのは、私が絵梨花とは別人格だからだろう。


ベッドに寝転がると、いつも目につく。

ヘッドボード辺りに積まれた、ぬいぐるみの山。

私に、こんなファンシーな嗜好はない。


たまにぬいぐるみの山が崩れることがあるので、元の位置に戻してあげる。

すると、コアラのぬいぐるみの下に、何やらコードが見えた。


ーーん? 何これ。


コードをたどると、ベッドと壁の隙間にコンセントにプラグが刺さっている。

もう一方をたぐると、ヘッドボードと壁の隙間に続いている。

その先に、なんとノートパソコンが挟まっていた。


偶然にこんなところに入り込むとは思えない。

意図的に隠しているのだろうか。


壁との隙間からパソコンを引っ張り出し、そっと開いてみる。

スマホと同じで、指紋認証でログインできた。


トップには、画像や書類のファイルが数個あるだけ。

ブラウザを開くと、とあるブログサービスのブックマークを見つけた。


ブログといえば、誰かに見せるために書くと思うのだがーー

絵梨花が書いたと思う記事の多くは、非公開のままになっている。


誰にも見せるつもりはないーー秘密の日記ということなのだろうか。

だとすると、パソコンを隠していたことにも、辻褄が合う。


高校入学と同時に始まったそのブログは、その日の出来事や楽しいことばかりの普通の日記のようで、対外的に見せても問題ないようなキラキラした内容だった。

絵梨花の、普通の女の子としての記録が、そこにはあった。


ーーただ、現在に近づくにつれ、非公開設定の記事が増えていった。


「わかってる。家族でなかったとしても、振り向いてくれないことなんて」


「また、嫌な態度を取ってしまった」


「好きになってもらえないのが辛い」


「新しい彼女、可愛かったな……」


「莉々からのLIME、だいぶ嫌になってきた」


「また、お父さんとお母さんに八つ当たりしてしまった」


「なんかもう、疲れた……」



ーー絵梨花は、紫苑のことが好きだったのだ。


好きになってもらえるわけがない、だったら嫌われようーー

と、あえて距離を置こうとしていた。



絵梨花、何やってるんだよ。

報われない想いを抱えて一緒に暮らすのが辛いのはわかるけど。

嫌われようとするなんて、それは違うよ。

両親に八つ当たりしたのも、ただの自己防衛でしかない。


絵梨花は、本当に不器用な子だな。

みんなの気持ちを考えると、胸が痛い。



絵梨花が最後に書いたと思われる12月24日の記事には、家族への想いが綴られていた。



お父さんへ


お母さんが亡くなって、一人で私を育てようとしたよね?

そんなこと、できるわけがないのにね。

だって、お父さん、洗濯機は泡だらけにするし、生活力がなさすぎだよ。

料理もできないし、食べられるものが目玉焼きしかないもの。

だからね、今のお母さんと再婚するって決めた時も、反対はしなかった。

私はお父さんの作る、目玉にならない焦げた目玉焼き、好きだったよ。

お父さんのこと、嫌いになったわけではないよ。


紫苑のお母さんと再婚しなければ、こんな気持ちにならないで済んだのにって、八つ当たりしちゃった。

わがままな娘で、ごめんなさい。

これからは、親孝行するから許してね。



お母さんへ


いつも父がお世話になっています。そして、私も。

私が反抗的な態度を取っても、いつも笑って優しいお母さん、ありがとう。


気を遣ってくれてるの、ちゃんとわかってます。

ただ、紫苑のお母さんでなければよかったのにと、思わずにはいられませんでした。

父と再婚しなければ、紫苑とはただの同級生でいられたのにと。


「おばさん」と呼んでしまって、ごめんなさい。

父にはあなたが必要です。これからもよろしくお願いします。

許してもらえるなら、また「お母さん」と呼びたいです。



紫苑くんへ


君と初めて会ったのは、小学生の頃だったね。

実を言うと、初めて会った時から、君のことが好きだったんだと思う。

義理とはいえ、兄妹になれることが嬉しかった。

毎日、楽しかった。


でも、君のことを好きになるにつれ、妹であることが苦しくなりました。

君に女の子として好きになってもらえないのが、わかっているから。

君が他の子と付き合う度に、悲しかったし、苦しかった。


嫌な態度を取ってしまって、ごめんなさい。

これからは、妹として仲良くしてください。

あの頃みたいに、楽しく毎日が過ごせたらいいな。



絵梨花は、自分のせいで家族がバラバラになったことを悔いていた。

恋を叶えることよりも、元の家族に戻ることを選んだのだ。


私という人格が生まれた意味は、絵梨花が戻って来た時に、幸せに暮らせるように準備しておくーー

ということなのだろうか。


それを叶えて本物の絵梨花が戻ってきたら、私は消えてしまうのかな。

私もここに残れる方法は、ないのかな。

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