11話 防壁システム
地下に王国を築いたエンジェリア達は、城の中でひっそりと作戦会議を行っていた。
「エレは人数が少ないから、不利だと思うの。それをどうにかする方法があれば言って欲しいの」
「しかも、向こう側は氷の防具なんて使ってるらしいからね。それについても対策しておかないとじゃない?」
「そうなの。それに、それに、フィルがいるから、魔法具とかいっぱいありそうなの。エレ達が近くに来たら反応する魔法具とかありそう。エレ達も素材いっぱいゲットして魔法具でたいこぉするの」
やはり人数というのはかなり関わってくる。人数が多ければ、役割分担をしっかりでき、落ちている素材とかも、多く集められるだろう。それを補うだけの作戦を考えなければ、エンジェリア達の勝ち目はないに等しいだろう。
「魔法具に関しては、エレの複製でどうにかなるだろう。それに、人数というのであれば、囮ついでに魔法で偽の国民を作れば良い」
「ふみゃぁ。やっぱり、ルーにぃは頼りになるの。氷の防具に対抗する方法も考えないと。怪我するような魔法は禁止っていうのが難しいの」
「それなら、魔法を無効化する結界とかはどうかな?」
「ふみゅふみゅ。その案も採用なの。エレの国民達は、みんなとってもすごいの。エレの自慢の国民達なの」
エンジェリアは、フォルに抱きついて、イールグとノーズに頭を撫でさせた。
「この癒しのために、絶対に勝利をあげないと」
「ふみゅ。思う存分エレにさわさわして良いの……ふみゃ⁉︎ゼロから通話なの」
「出て良いよ」
エンジェリアは、警戒しながら、ゼーシェリオンの通話を開始した。
『きしゃぁー!(ブチン)』
ゼーシェリオンの謎連絡により、エンジェリア達の動きが止まった。
「……みゅ?」
「なにあれセンサー?なんで共有してないのに、エレさわさわタイム気づいたの?」
「そんなのたまたまなの。仕切り直して、さわさわなの」
「う、うん」
「ふみゅぅ」
エンジェリアのお触りタイムをしていると、再びゼーシェリオンから通話がきた。出てみると
『キシャァー!キシャァー!(ブツン)』
また、謎な威嚇通話だった。
「……」
「フィル、ゼロの迷惑通話どうにかして」
『エレさわさわずるい。さわさわしすぎって言って聞かない』
フォルが、フィルと通話している。
「……みゅにゅ。エレに勝ったら、一日、ゼロの言いなりになってあげるの。そうしたら、さわさわし放題」
『フィル、作戦漏れるから切れ。それと、エレ、夜は休戦な。魔力貰うのとかあるから』
「ふみゅ。分かったの。その時は、国民争奪戦やっていた場所で会うの」
エンジェリアとゼーシェリオンは、魔力と血の提供場所を決めて、通話を切った。
「ふみゅ。気を取り直して、欲しい魔法具会議なの」
「ゼロセンサー」
「みゃ?」
「ゼロの勘並のセンサー」
「それはむりなの。あるものにしろなの」
「なら、互いに居場所を知る事ができる魔法具」
「ふみゅ」
エンジェリアは、複製魔法で、以前フォルから貰った魔法具を作った。
「これで良いの。他には?いっぱい言ってくれて良いよ」
「ゼロ達が近くにきたのを知るセンサー」
「ふみゅ……みゅにゅ」
エンジェリア達は、必要な魔法具を作りながら、ゼロ国に勝つための作戦を練った。
**********
「ゼロ国民が森へきたの!森を守るの!」
エンジェリア達の領土である森へゼーシェリオン国民が侵入したとセンサーが知らせた。
エンジェリアは、森を守るための防衛システムを発動する。
「ふっふっふ。そう簡単にエレ国は落とせないの。フォル、映像を侵入者のいる場所に切り替えて。ノーズねぇとルーにぃはアレをタンクに入れといて」
エンジェリアが考えた、人数が少なくとも勝てる作戦。それがこの防衛システム。
森を守り、森へはいる侵入者は絶対に逃さない。エンジェリア達のいる場所へは辿り着かせない。大量にねば液体をかける。それがこの防衛システムの役割だ。
「エレ、タンク満タンにアレが入った」
「こっちも入ったよ」
「映像そっちで見える?」
「みゅ。ありがとなの。防衛システム発動ー」
映像を見ると、先陣切って森へ侵入したのは、ルノ、リミェラ、ローシェジェラのようだ。映像を見ると、どうやら、城を探しているようだ。
エンジェリアは、防壁システムを発動する。
森から出る事をできなくする壁が周囲を覆う。
「ふっふっふ、ねば砲発射ー」
この防衛システム制作中、ずっとこれを楽しみにしていた。それにあってか、エンジェリアは、誰が見ても分かるほど楽しそうにしている。
「ふっふっふ」
映像からは悲鳴は聞こえないが、かなり慌てているようだ。
ねば砲は、森の中にねば液体の雨を降らせる砲。
たとえ、氷の防具があろうと、全身を守っているわけではない。どこかは守られていない場所がある。そこを狙う作戦でこれをやったが、効果は大きかったようだ。
「ふっにゃっにゃっにゃぁ」
「エレが楽しそう。こんなに楽しいエレ見た事ないかも」
「エレ、ゼロ国から通信」
「繋げるの」
エンジェリアは、ゼーシェリオンからの通信をフォルに繋げてもらった。
『ずーるーいー』
「ふっふっふ。戦にずるもなにもないの。ずる賢い方が勝つの」
『……お前純粋どこ忘れてきたんだ?昔はそんな事言わなかったのに。つぅか、大丈夫なのか?純粋でいないとって』
「その辺は大丈夫なの。楽しいとか、ずる賢いとかそういうのは良いから。今も変わらず、誰かを恨むとかは知らないの」
エンジェリアは、隣に来たフォルに頭を撫でてもらう。
「大丈夫だよ。エレにそういう感情を覚えさせないように僕がついているから」
「ふみゅ。にゃぅにゃぅ」
エンジェリアは、恨みや憎しみなどの感情を知ってはならない。それを理解していたとしても、自分だけではどうにでもならない部分は、ゼーシェリオンやフォルがいる事でどうにかできている。
「これも、エレに必要な事だからってだけなの。だから、この時間は取らないといけないの」
「そうだね。存分にこの時間を楽しんで。防壁の方は破壊される事なんてないから」
「ふみゅ。防壁は無敵だから破壊なんてできないの。捕虜にしてやるの。でも、でも、王様次第では返してあげるの」
エンジェリアは、フォルに抱きつきながらそう言った。どこまでも余裕そうにしている事。優位に立っていると示す事。
それで、要求を聞いてもらおうとする作戦だ。
『……とりあえず、話を聞かせてくれ。返すには、どんな条件を求めている?』
「ふみゅ。ふっふっふ。エレに魔法石を献上するの。今夜、魔力を上げる時に、交換するの。質の良い魔法石を」
『……分かった。その条件を呑む』
「じゃあ、今夜までは捕虜として大事に預からせてもらうの」
エンジェリアは、フォルに頼んで通信を切ってもらった。
防壁システムに搭載されている、捕虜獲得縄で、侵入してきたゼーシェリオン国民を捉える。
「ふみゅ。これで夜を待つだけなの。エレは、いっぱいポイント稼げたの」
「うん。ほんと、これは良いね。わざわざ出向く必要すらない。数が劣っているからって良くこんなの考えたよ」
「ふみゅ。みんなもお疲れ様。ゆっくり休んで。エレも休むから」
エンジェリアは、そう言って、フォルを連れて寝室へ向かった。
**********
ベッドに座り、フォルを隣に座らせる。
「ふみゅ。この後どうするかの会議なの。二人でふみゅふみゅしながら」
「この後か……魔法石をもらえるから、それでもっと良い魔法具を準備するのは?問題は、この後から森に来なくなるって事だよね。逃げ切れば良いけど、そんな勝ち方はいやなんでしょ?」
「ふみゅ。だから、幻覚魔法で、森に誘い込むの。それか、ここからどうにかして攻撃できるようにする」
防壁システムの作戦は、一度やってしまえば警戒されるだろう。もうこの手は使えないと考えておいた方がいい。
「ふみゅ。難しいの」
「うん。エレ、面白い作戦あるんだけど、やってみない?」
「ふみゅ?」
エンジェリアは、フォルからの案を聞き、それをやる事に決めた。
フォルの案は、準備をしなければならないが、上手くいけば、かなりのポイント稼ぎができる。