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星月の蝶  作者: 碧猫
5章 管理者見習い試験
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10話 管理者見習い最終試験


 情報収集の試験も終え、管理者見習い最終試験を説明すると言われ、エンジェリアとゼーシェリオンは、フォルが用意した空間魔法の中に来ている。フォルからは、そこで最終試験内容を言い渡すとだけ言われている。


「なんだかいやな予感するの。ねばぁな予感なの」


 空間を見渡すと、広く、開けた場所から森まで様々な景色が映る。


 目の前には意味深に置かれているバケツと武器。武器はどれも攻撃性が非常に低く、遊びや訓練に使うようなものに見える。


「最終試験の説明前に、今回手伝ってくれる人達を紹介するよ。ルーとエルグにぃ様とロジェとリミェラ。それに、ノーズとヴィジェとナティージェもなんか来てくれたんだ。あと、暇そうだったルノ連れてきた」


「ふみゅ、やな予感」


「初めに、エレとゼロが王という事で、王と一緒に戦う相手を集ってもらうよ。人数がどうなるかは王次第かな。そのあとは、これの掛け合い。まずは、ゼロが全体に向けて演説。自分側になる方が良いと思わせるものを期待するよ」


「……これエレが圧倒的に不利なの!」


 演説勝負でエンジェリアがゼーシェリオンに勝てるとは思えない。そして、この演説次第で勝負は大きく変わるだろう。


 もし、演説に失敗すれば、その時点で負け確となる可能性は大いにある。


「えっと、俺は、氷国のゼーシェリオンです。俺の国へ来てくれれば、氷の防具を用意します。美味しいご飯も用意します。できるだけ、皆様の望みを叶える事を宣言します。是非、我が氷国をお選びください」


 ――みゅみゃ⁉︎行きたいの。魅力的なの!エレは……エレの魅力はないの!


「次はエレだよ。大丈夫。君は二人くらいには十分魅力的なものを提供できるから」


「みゅ?ふみゅ」


 次はエンジェリアの番。エンジェリアは、ゼーシェリオンの国を超える魅力の提示で多くの民を得るというのは諦めている。多くではなく、少なく、欲しい人員を得る。それを目的とした。


「愛の国のエンジェリアなの。エレの国に来てくれれば、エレをいっぱい撫でられる権をあげる。エレは、みんながエレにとっても近い国を目指すの。そんなエレの国に来てくれると嬉しい……です」


「二人の王への質問時間を設ます。質問は挙手性です。時間制限はありますが、それまでは何度でも質問可能です」


 演説が上手くいかなかったとしても、この質問時間で挽回できる可能性があるのだろう。だが、演説で興味を持たれていなければ、その時点で終了となってしまう。


 演説で一人にでも興味を持たれていると祈るばかりだ。


「ルー、どっちに質問かもちゃんと言ってよ」


 エンジェリアが考えている間に、イールグが挙手していたようだ。


「エレ王に質問です。なでなで以外にしても良い事を教えてください」


「ふみゅ。お望みなら、エレのお世話をして良いの。してくれたら、エレが喜んじゃう」


 こんなもので誰が国民になってくれるのかと、エンジェリア本人も思うが、今更これをやめる事はできない。王なのだから、一度決めた王像を崩す事などできない。それこそ、国民を全員逃してしまうだろう。


 エンジェリアは、国民が来るか達不安があるが、堂々としている。


 次は、ヴィジェが挙手した。


「ゼロ王に質問です。氷の防具の防御力はどのくらいですか?」


「質問ありがとうございます。氷の防具の防御力は溶かされない限りは無敵です。溶かされてしまっても、言ってくださればいくらでも作ります」


      **********


 質問時間が終わり、とうとう民が国を選ぶ段階だ。


「一人ずつどっちの国へ行くか決めてもらおうと思います。ついでに、理由も述べてもらいます。まずは、リミェラから」


「わたしは、こっちの国かな」


 リミェラが選んだのは、ゼーシェリオンの国。


「エレの方も良かったけど、国民を守ってくれそうというのが、決めてだよ」


「早速氷の防具進呈だ」


「ありがとう」


 ゼーシェリオンが、リミェラに、氷を纏わせている。


「次は、ヴィジェ」


「……迷うけど、こっちで」


 ヴィジェもゼーシェリオンの国を選んだ。


「エレだとちょっと不安要素が多いから。どうせなら勝ちに行きたい」


「ヴィジェは自分でできると思うが、一応氷の防具進呈」


「ぷみゅぅ。本命一人目奪われたの」


 ゼーシェリオンが、エンジェリアを見てドヤ顔している。エンジェリアは、それに気づいて、ゼーシェリオンに猫パンチを繰り出した。


「次は、ノーズで」


「わたしは当然こっち」


「ふみゃぁぁ。一人目ゲットなの」


 ノーズは、エンジェリアの国を選んだ。エンジェリアは、初国民で大喜びしている。


「エレは、意外と頼りになるから。それに、いつでも撫でられる権利は高いよ」


「ふみゅ。撫でて良いの。ぷみゅなの」


 エンジェリアは、ノーズに頭を撫でさせる。初の国民だ。その分撫でをして良い時間は長い。


「次はルノ」


「俺は、こっちが魅力的に思えた」


 ルノが選んだのは、ゼーシェリオンの国。ゼーシェリオンの国は、後一人で半数ゲットする事になる。


「防具の進呈と本気で勝ちに行っているのが伝わったのが理由」


「ああ。エレには負けられないからな」


「宣戦布告受け取ったの。エレもゼロだけには負けないの」


 まだ始まっていないが、すでにエンジェリアとゼーシェリオンの間でバチバチと険悪な空気が流れている。


「次はロジェ」


「僕もこっちだね」


「ぷみゃ⁉︎」


 ローシェジェラが選んだのは、ゼーシェリオンの国。これでゼーシェリオンは、半数ゲットした。


「やっぱり、王はしっかりしている方が安心するからね。エレには悪いけど」


「ぷみゃぁ」


 エンジェリアは、瞳に涙を溜めてフォルに抱きついた。


「次はナティージェ」


「アタシも、こっち」


 ナティージェもゼーシェリオンの国を選んだ。これで、残りがどっちを選ぼうと、ゼーシェリオンの国の方が人数が多くなった。


「何かあった時、ゼロ様の方がちゃんと指示をくれそうですので」


「エレ便りなさそうだからな」


「フォル、慰めて」


「うん」


 フォルが、エンジェリアの頭を撫でて慰める。エンジェリアは、フォルに抱きついたまま離れない。


「残りは二人。エルグにぃ様。先に選んで」


「……本当に済まないと思うが」


 ルーツエングもゼーシェリオンの国を選んだ。


「防具の提供と言い、ゼロの方がちゃんと考えていそうというのが選んだ理由だ」


「これは勝ち確だな」


「ぴゅぅ」


 残り一人いる。だが、エンジェリアは、この現状を見て期待を持ってはいられなくなっている。


「俺はこっちだ」


「またゼロなの。みんなゼロが良いの。ぷにゅぅ」


「……ルー、どっちか言わずに理由言って」


「ああ。当然、こっちの王を勝たせてやりたいと思ったからだ。こっちの王の方が、勝った時に民と共に喜んでくれそうだからな」


「ふみゅ。ゼロってそんなふうにまで思われているんだ。エレ、一人しかいないの」


「何を言っている?エレの方が喜ぶだろう。俺が昔調合試験に合格した時も、自分の事以上に喜んでいたんだ」


「ぷみゅ?……ふみゃぁぁ。ルーにぃらぶ」


 イールグが選んだのは、エンジェリアの国。エンジェリアは、大喜びで迎え入れた。


「ちなみに、僕とフィルも当然参加だよ。フィルにどっちに行くか選ばせるけど」


「おれは、ペアでいたのもあるし、ゼロを選ぶ。最後までペアとして一緒に戦おう」


「じゃあ、僕はエレだね。ありがと、わざわざ気を遣ってくれて」


「エレが良いって顔に書いてある。ほっとけないんだろう?」


「うん。それに、僕はエレを勝たせてあげたいから」


 これで国民は決定した。


 エンジェリアは三人。フォル、イールグ、ノーズ。


 ゼーシェリオンは七人。フィル、ルーツエング、ローシェジェラ、リミェラ、ヴィジェ。


 人数的に見れば圧倒的にエンジェリアが不利だ。


「人数は不利だけど、作戦が良ければ勝てる気がするの。みんなで一緒にがんばろ」


「優秀な人材が多い時点でだいぶこっちが有利だ。だが、相手はあのエレだ。何をしてくるか分からねぇから、用心するに越した事はない。みんなで協力して、エレ国に勝とう」


「ゼロ、エレはあの森の方に国を建てるの。邪魔しないでよ」


「なら、俺は向こうの街に国を建てる。そっちこそ邪魔すんなよ。建国後が勝負だからな」


「ふみゅ。分かってるの」


 エンジェリアとゼーシェリオンが睨み合う。


「エレ、早く森の方行くよ」


「みゅ」


「ゼロ、向こうで作戦会議だ」


「ああ」


 エンジェリアとゼーシェリオンは、拠点とする場所を探しに向かった。


      **********


 エンジェリアが選んだのは、森のど真ん中。


「ここなら隠れて攻撃に最適なの。それに、森って事は、植物達の力を借りれる。ここはとっても良い場所なの」


「城創れば隠れても意味ないと思うけど」


「ふっふっふ、エレは考えたの。そうすれば見つからないのか。それは地下に作る事なの。誰も森の地下にお城があるなんて想像もしないの」


 エンジェリアは、得意げにそう言った。


「どうやって?」


 フォルが楽しそうに聞く。


「穴……それはむりかも……地下に王国を築く……どうやれば良いんだろう」


「大穴があれば怪しまれる」


「うん。できるだけ小さな穴。見えないのが一番良いと思う。でも、転移魔法の痕跡があれば、気づかれるかも」


「エレ、優秀な人材を集めたね。この空間は三層構造なんだ。君らが地下か空中と言い出した時、それを言うってあらかじめフィルと話し合っている。だから、地下に巨大な穴を掘る必要はないよ。どうやって地下へ行くかだけ」


 フォルの優秀な人材というのはヒントなのだろう。その方法を考えるための。


 ――優秀……ノーズは、補助魔法。それも、音魔法や幻覚魔法が得意なの。ルーにぃはある程度なんでもできる……ふみゅ。穴にゼロ国民が落ちてきたら一大事……思いついたの!


「穴の上に木を創るの。森だから自然。木にエレ国民の証を示せば穴が開く。これが良いと思うの」


「それ良いかも。エレ国民の声に反応する仕掛けとかで」


「ふみゅ。それで決定なの。早速取り掛かるの」


 エンジェリア達は、地下に王国を築く準備を始めた。

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