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星月の蝶  作者: 碧猫
5章 管理者見習い試験
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5話 管理者最初の試験


 エクリシェへ帰り、ゼーシェリオンとフォルが話で忙しいからと、エンジェリアは、アディとイヴィ、ヴィジェに預けられていた。


「にゃんさん!」


「にゃんさん?」


「にゃんさんがいたの!」


 エンジェリアは、いるはずのない猫を見た。すぐに走り去ってしまったが、あれは幻覚ではないとはっきり言える。


 エンジェリアは、一人で追いかけに行こうとするが、扉が開かない。


 エンジェリアが部屋から出て迷子にならないようにという処置だ。


「ふぇぇぇん」


 エンジェリアは、扉が開かず、泣き出した。


「な、泣かないでください。少しだけですよ」


「イヴィ、フォルから外に出すなって」


「我々が一緒に行けば問題ないでしょう。それに、ここは安全なはずです。ヴィジェ、よろしくお願いしますよ」


「うん」


 エンジェリアは、部屋の外へ出してもらえた。


 猫は、イヴィが、用があって部屋を出て戻ってきた時に、廊下を走っていた。方向は、部屋から出て右だ。


 エンジェリアは、猫が走っていった廊下を走った。


      **********


 エクリシェ中層、転移魔法場。


 エンジェリアは、猫を見つけた。


 猫は、エンジェリアを見て、下層へ転移した。


「待てなのー」


 エンジェリアも、その後を追い、転移魔法で、下層へ転移した。


      **********


 エクリシェ下層、エンジェリアの趣味部屋。


 猫はそこへ入っていった。エンジェリアも後を追う。


「見つけたの」


「……にゃぁ」


「ふきゃん⁉︎」


 猫は、エンジェリアの頭を踏み台に、部屋を出た。


「むにゅぅ。待てー」


 エンジェリアは、再び猫を追う。


      **********


 エクリシェ下層、ゼーシェリオンの部屋。


 猫はそこへ入っていった。エンジェリアは、相手がゼーシェリオンだからと遠慮なく部屋に入った。


 部屋の中が荒らされている。しかも、なぜかエンジェリアがあげたものだけがだ。


「エレがゼロにプレゼントしたの……ふぇ」


「にゃ」


「もう逃さないもん!」


 エンジェリアは、束縛の花を使い、猫を捕まえた。


「ほら、にゃんさんいたの……ふにゃ?みんないない」


 エンジェリアが、何も確認せず、一人で行ったからだろう。部屋にはエンジェリア一人。


 エンジェリアは、猫を抱いて、ゼーシェリオンの部屋を出た。


      **********


 向かったのは、エクリシェ中層、リビング。


 ゼーシェリオン達がいる場所だ。


「ふぇ」


「どうしたの?アディ達に面倒見るように頼んでいたのにどこ行ったの?」


「分かんないの。にゃんさん追ってたら逸れちゃったの」


 エンジェリアは、抱いている猫を見せた。


「にゃんさん」


「どこに逃げたかと思えば」


「恋路を手伝ってやったんにゃ!感謝しろ」


 エンジェリアの趣味部屋は、ちゃんと見ていない。何か盗まれていても気がついていない。だが、ゼーシェリオンの部屋が荒らされていたのは、その目で見た。それがエンジェリアがあげたものだけ。


 行った場所とやった事。理解できなかった動機が、その一言に全て詰まっている。


「……だからって、エレがゼロにあげたものを荒らすのはだめなの」


「ライバルは減らすのが常識にゃ」


「……俺のエレグッズが……ぐす……」


 会話を聞いていたゼーシェリオンが、泣いている。


「にゃむ、今すぐゼロに謝れ」


「にゃむ⁉︎にゃ、にゃぁは、ご主人のために」


「だからって、それはやりすぎ。あと、ゼロはそういうのじゃないから。僕が選んだ月の子だよ」


「にゃみゅ⁉︎」


「……この子、エレに似てるの。にゃむとかが似てるの」


「お前、まさかとは思うが、エレに似てるからって」


 エンジェリアとゼーシェリオンが、じっと、フォルを見つめる。


「……にゃむ、撫でてあげるからこっちおいで」


 フォルが、笑顔でそう言った。エンジェリア達の疑問には答えないつもりだろう。


「エレは、フォルに疑いの眼差しを向けるの」


「ゼロもフォルに疑いの眼差しを向けるの」


「……にゃむ、エレとゼロが疑う。ギュゼルは、信頼が大事だから、こんなに疑うなんて、これは、入れられないかも」


 フォルが、嘘泣きして、そう言った。


「ごめんなさい。なんでもございません。フォルの事を心から信じております。信頼しています」


「ごめんなさい。なんでもございません。フォルの事を誰よりも信じております。信頼しております」


 エンジェリアとゼーシェリオンは、即試験取り上げの危機に、疑う事を諦めた。


「うん。なら、試験を受けさせてあげる。即とは言っても、こっちも準備とか、何をするかとかがあるから、今すぐにとはいかないけど。試験をする用意は即やってあげる」


 フォルが、笑顔でそう言った。


 それに、エンジェリアは、頷きそうになったが、ゼーシェリオンに止められた。


「エレ、お前騙されんな」


「騙される?何を?」


「即試験つってただろ。即だ。今すぐに準備をして、それが終わり次第試験を開始するならそんな事言うわけねぇだろ」


「みゅ?でも、さっき」


 エンジェリアは、フォルの方を見るが、笑顔で黙っているだけだ。


「……にゅ?じゃあ、もしゼロの言う事あってるなら、いつ試験開始なの?」


「即つったんだから、今だろ?今からすでに始まってんだろ」


 エンジェリアは、驚きのポーズをとった。


 フィルを見るが、相変わらず笑顔のまま。


「さすが、ゼロだ。もし、これで今は試験中じゃないとかって思っていれば、即試験じゃなくて、即不合格って言ってたよ」


「みゅ⁉︎ゼロらぶなのー」


 ゼーシェリオンが即試験の事に気づき、即不合格を免れた事で、エンジェリアのゼーシェリオンへの好感度が爆上がりした。


 エンジェリアは、ゼーシェリオンに抱き付き、顔を擦り寄せる。


「でも、具体的にどうすれば良いかなんて事は、俺も分かってねぇが」


「……ぴゅりゅりゅりゅりゅりゅ。エレからの好感度が下がりました。めちゃくちゃ下がりました。とんでもなく下がりました。さっきの好感度爆上がりは消えました」


 エンジェリアは、ゼーシェリオンから離れ、ぷぃっと顔を逸らした。


「即試験の事に気づいたんだから、そのくらいはちゃんと説明するよ」


「みゅ……でも、ゼロへの好感度は上がんないの」


「えっ」


「……まずは、管理者見習い試験だ。一応、管理者に推薦する前にみんなにやっていたんだけど、分かるかな?君らも一緒に見ていた時はあると思うけど」


 エンジェリアとゼーシェリオンは、ふるふると首を横に振った。


「ほんとは説明なんてしないんだけど、君らは特別。僕が管理者に推薦する前に必ず会いに行っている事は知っているよね?そこで、必要最低限の能力があるかどうかはを見極めるんだ。必要なのは人によって違うけど。君らの場合は、ギュゼルを目指す以上、総合的に判断させてもらおうかな」


「みゅ⁉︎えっと、具体的に」


「色々とあるけど、まずは料理をみようかな。材料集めから全て一人で。フィル、ゼロの方は頼めるかな?僕はエレを見るから。ついでに、少しくらいは手伝って良いよ」


「了解」


「エレがんばるの」


「ゼロもがんばるの」


「うん。じゃあ、早速行こうか。フィル、連れてく場所はどこでも良いよ」


 フォルがそう言って、転移魔法を使った。


      **********


 エンジェリアとフォルが転移した先は、魔の森の一つ。


「初めての場所なの。ここって、ヒュルヒョジェグの森だよね?とってもきれいなの」


「そうだね。エレ、あんまり緊張しないで良いからね?食べれるものを作る事ができれば良いから」


「みゅ。食べれるものを作るの。でも、まずは材料集め」


「うん。材料集めで毒のないものを探すっていうのも大事な事だよ」


 エンジェリアは、辺りをきょろきょろと見回した。食べられそうなものはいくつもある。だが、問題は、それをどう料理に使うかだ。


 ――そもそも、エレはお料理得意じゃないの。むじゅかちいの


「……管理者は基本的にペア行動だ。今回、僕とフィルがつくのは、試験管としてもあるけど、そのペア行動に慣らすため。大体のペアは、片方が指示を出して、片方がそれに従う。今回は、君が指示を出す。そうすれば、僕は、その指示に従って手伝うよ」


「……みゅ。じゃあ、木の実集めて。木の実でスープ作るから」


「うん。集めてくるよ。君は、火をつける準備でもしていて良いよ。魔法禁止だから、相当時間かかるだろうから」


「みゅ?魔法禁止?魔法具のだめ?」


「うん。魔法具も禁止」


 エンジェリアは、瞳に涙を溜めて、火を起こす準備を始める。


「ぴゅにゅぅ」


「がんばってねー。ああ、それと、ゼロと連絡取るのだけは許可するよ」


 フォルが、木の実を集めている間に、木の枝を集める。


「……ゼロに連絡しよ」


 エンジェリアは、連絡魔法具を取り出し、ゼーシェリオンに連絡した。


『丁度良かった。俺も連絡しようと思っていたんだ』


「みゅ。ゼロは今何やってる?エレは、木の枝を集めてるの」


『俺も、魔法を使うなって言われて、今頑張って火を起こす準備で枝集め』


「どぉし、どぉし。エレ、どうやって火をつければ良いのか分かんないの。どぉしついでに、一緒に考えるの。連絡良いならそれも良いの」


 エンジェリアは、ゼーシェリオンと一緒に、火の起こし方を考えた。だが、魔法なしサバイバルなど一度もやった事はない。火の起こし方など知らない。


「木の枝はいっぱい集めたの。なのに火はつかないの」


『木の枝は集まったんだけどな。なぜか火がつかないんだよな』


「うんうん」


 エンジェリアとゼーシェリオンは、火をつけるのに木の枝が必要という事だけは知っている。


「あのさ、木の枝を複数集めれば火がつくってわけないから」


『ゼロ、木の枝が勝手に火をつけてくれるわけじゃない』


 木の実を集め終えたフォル、連絡越しではフィルが、呆れた声でそう言った。


「みゅにゃ⁉︎」


『じゃあ、何すれば良いんだ?』


「……木の枝ぐるぐる回してれば、そのうち付くよ」


「みゅ」


 エンジェリアと連絡越しのゼーシェリオンは、木の枝を持って、ぐるぐると回した。だが、火が付かない。


「付かないよ?」


「……この木の枝が良いかな?これにぐるぐるやるんだ」


『ゼロも、これに』


      **********


 エンジェリアとゼーシェリオンは、火を起こそうとするが、火がつかない。


「もうやなの。一時間がんばったの」


『エレもつかねぇのか?俺も全然つかない』


「ふにゅ。もうやなの」


 エンジェリアとゼーシェリオンは、泣きそうになりながらも、一時間以上火を起こそうと頑張っている。


「……みゅぅ。フォル、もっと簡単にできる方法ないの?」


「……特別にそれだけやってあげる」


「みゅ。ありがと」


 エンジェリア達があまりに時間をかけすぎていたからだろうか。フォルと連絡越しのフィルが、火をつけてくれた。


「これで料理ができるね」


「みゅ。がんばるの」


『俺もがんばるの』


 エンジェリアとゼーシェリオンは、ようやく料理を作るのを開始できる。


 気合を入れて、互いに互いにペアが持ってきてくれた食材を使い、調理を開始した。

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