表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
星月の蝶  作者: 碧猫
4章 契約
63/104

2話 目的を果たす者と止める者


 海の中に転移したエンジェリア達。


 エンジェリアは、フォルに抱きつき、沈まずに済んだ。


 ――なぁ、これって会話できなくね?


 ――そうなの。フォルって抜けてるよね?


 ――ああ。とりあえず、俺らは、共通で会話しよう。それならできるからな。


 ――ふにゅ。そうするの。何か、会話以外に伝える手段があれば良いんだけど。


 ――知ってればやってんだが、知らねぇからな。


 エンジェリアとゼーシェリオンは、共有で会話をしつつ、周りを見渡す。


 海の中でしか見る事ができない景色。エンジェリアとゼーシェリオンは、その景色に目を奪われていた。


 ――きれいなの。神秘なの。


 ――ああ。そうだな。


 ――ところで、どこへ行くのかな?分かんないの。


 ――あそこじゃねぇのか?


 目の前に、結界に囲まれた王国が広がっている。どうやら、フォルは、そこへ向かっているようだ。


 エンジェリアは、自分で泳がなくて良い分、景色を楽しむ事ができる。泳いでいる魚と、上から差し込む光。それが織りなす神秘的な景色をじっくりと見る事ができる。


 ――そういえば、エレって水きらいだったよな?


 ――ふにゅ。でも、こうやっていると怖くないの。ここは明るいから怖くないの。


 ――この世界は、海底でも光があるからな。光魚とかいるらしい。


 光魚。見たいが、この辺にはいなさそうだ。エンジェリアは、むすっと、不機嫌になるが、フォルに頬を突かれて、直ぐに機嫌が直った。


 ――ふにゅ。フォルかららぶを贈られたの。


 ――エレ、そこ変われ。


 ――変わったら、泳げないの。沈むの。


 ――じゃあ、俺が連れてくから、フォルから離れて俺の方来い。


 ――だから、それができれば泳げれるの。みゅ?


 ――笑わせないでよ。


 ――ふにゅ。フォル、そういえば、フォルって、思考共有に似た事できるの。ずっと、聞いていたでしょ。


 ――うん。面白かったよ。それと、光魚なら、結界の中にいると思うよ。入ったら見てみな。


 エンジェリアとゼーシェリオンの共有に、フォルが入ってきた。


 今は、辺りを見回しても見つからない光魚。それが、人が住んでいる結界の中にいる。見るのが楽しみで仕方がない。


 ――ふにゃ。海の中って海流で泳ぐの難しいって思ってたの。水圧とかもあるの。


 ――ここの海は泳ぎやすいよ。少し泳いでみる?


 ――やなの。泳げないの。だから、フォルに抱きついているの。


 ――抱きついてなくても、リードがあるから大丈夫だよ。


 ――なぁ、このリードって、距離とかってあるのか?


 ――うん。あるよ。じゃないと、こういう時に不便だから。それがどうかしたの?


 ――……


 ――……


 フォルは、問題点に気づいていないようだ。エンジェリアとゼーシェリオンは、それを言わずに黙った。


 ――そろそろ着く。


 ――ふにゅ。中が楽しみなの。


      **********


 結界内へ辿り着くと、浮遊感こそあるが、水中のような感じはしない。これなら、エンジェリアもフォルに抱きついていなくて大丈夫そうだ。


 それに、結界の外では喋る事ができなかったが、ここではできる。


「ふにゅ。やっと着いたの……ふにゃ⁉︎光ってる。灯り入らずなの」


「綺麗だよね」


「ふにゅ」


 七色に光る魚。エンジェリアの目の前を泳ぐ。


「可愛いの。きれいなの」


 エンジェリアが、目を輝かせて見ていると、光魚がエンジェリアに集まってくる。


「ふぇ?」


 エンジェリアを覆い隠す程、光魚が集まっている。


「……」


「ふぇ」


「愛姫様は、本当に好かれやすいですね」


「エレ、大丈夫」


「光魚……害はないかな」


「……」


 フォルが、魚の餌をばら撒く。光魚は、餌を求めてエンジェリアから離れた。


「ふにゅぅ。びっくりしたの」


「フォル、クロはどこにいるのか分かってんのか?」


「通行証を探していると思うよ。海の宝石。それが、通行証を交換するのに必要なんだ」


「ふにゅ。探しに行くの」


「うん。こっちだよ」


 エンジェリア達は、海の宝石探しに向かった。


      **********


 海の宝石。水に触れると青く輝く宝石。


 エンジェリアは、その宝石を五つ手に入れた。


 どこに来るか分からないため、分かれて探していると、偶然にも、その宝石が大量にある場所を当て、魔法具に活用するため、いくつか取っておく事にした。


 海の宝石は見つかったが、ローシェジェラは見つからない。


 もうここを去ったのかもしれない。そう一度は思ったが、今は通行証の発行の時間外。


 エンジェリアは、一緒に行動しているフォルと、もう少しここで待ってみようと言う事となった。


「ふにゅ。お水の中とは思えないの。とってもきれいで、にゃむにゃむなのはなのだけど、普通に歩けるの。泳がなくて良いの」


 エンジェリアは、海の宝石を見ながら、この場所に対しての評価を述べた。


「そうだね……エレ、来た」


 エンジェリアとフォルが待っていると、ローシェジェラが、ここを訪れた。


 ローシェジェラは、海の宝石を探している。


「ロジェ」


「……先回りされていたか」


「やめろって言っても、聞かないよね」


「当然だよ。僕は、自分の目的のためだけに今までやってきたんだ。なのに、道半ばで止めるわけないだろう」


「……どうして、復讐なんて考えるようになったか、聞いても良い?」


「……そんなのを聞いて何になるか知らないけど、隠す理由はないか。僕は、本家の元当主だった。けど、全部利用されていたんだ。必要とされなくなれば裏切り者として処分される。こんなの歪んでいるだろう。それを正すためだ。それに、これまでに僕と同じような目にあったみんなの無念を晴らすため」


 ローシェジェラは、淡々とそう言った。その理由以外にも、神獣に深い恨みもあるようだ。それが、言葉の端々から漏れ出ている。


 エンジェリアは、不安を隠すように、隣にいるフォルの手を握った。


「それで良いの?誰かのためなんて、結局はただの独りよがりなんだ。そんな理由で、迷いながらも、この先へ進んで良いの?」


「……」


「そんなの、関係ないだろう。目的のものは手に入った。僕は次の場所へ行くよ」


「好きにすれば良いよ。必ず止めるから。どんな理由があったとしても、一度守ると契約をしたんだ。その契約が切れたとしても、何も生まない無謀な事なんてさせない。そんな理由で進む君を見捨てなんてしない」


 フォルの瞳が、黄金へ変わる。そこには、ローシェジェラを想うが故の、覚悟が宿っている。


 ――エレの大好きがいっぱいのフォルなの。優しくて、強くて……ずっと、らぶなの。あの時の事気にしなくなっているの。らぶなの。


「それが君なんだね。僕は何があっても目的を果たす。そのために全てを捨てたんだから。さようなら、エレ、フォル」


 ローシェジェラは、そう言って、転移魔法を使った。


「フォル、次に行く場所ってどこか知ってる?」


「うん……次の場所は少し危険だから気をつけて。みんなと合流してから行こう」


「ふにゅ。フォル、お土産買ってないの」


「今それ言う?また今度来た時に買えばいいでしょ」


「ふにゅ。エレは、ゼロに連絡するの」


「うん。よろしく」


 エンジェリアは、連絡魔法具を取り出し、ゼーシェリオンにメッセージを送った。


【ゼロ、エレに土産を買ってくるの。あまあまみやげを買ってくるの。分かったなら返事なの。それと、集合なの。土産をこっそり買ってから集合なの】


 メッセージを送って、やりきったと、満足する。それがフォルに疑いを向けられる事になるとは知らずに。


「エレ、なんて送ったの?」


「ふにゃ⁉︎」


 まだ、余計な事を送ったかとは聞かれていなかったが、エンジェリアは、驚きのポーズをとった。それが、余計にフォルに疑われる事となった。


「土産買ってこいとか送ってないよね?」


「し、知らないよ。エレ、な、何も知らないよ?き、きのう……気のせいじゃないの?」


「明日お菓子無し」


「ふぇ⁉︎ふにゅぅ」


 フォルの容赦無い一言に、エンジェリアは、肩を落とした。


 そうこうしていると、イヴィとゼーシェリオンが到着した。ゼーシェリオンの手には、土産袋が


「ふにゃぁぁ⁉︎か、隠すの!まだバレてないの!だから隠すの!隠さないとお菓子無しになるの!」


「えっ⁉︎か、隠す」


 フォルの目の前で、エンジェリアは、ゼーシェリオンに、土産袋を隠させた。しかも、その隠し方は、収納魔法にしまうのではなく、背に隠す。


 これで隠せた。バレてないと、エンジェリアは、ほっと胸を撫で下ろした。


「エレ、目の前でそれやっていて気づかれないと思ってる?」


「ふにゃ⁉︎」


「愛姫様、流石にそれじゃ無いかと。秒でバレます」


「エレをいじめるなー!」


「ゼロすき」


 ゼーシェリオンだけは、エンジェリアの味方だ。お菓子を一緒に食べるのが楽しみだから。ゼーシェリオンに庇われて、エンジェリアは、愛情たっぷりにゼーシェリオンに抱きついた。そして、ゼーシェリオンの胸に顔をすりすりと擦り寄せる。


 エンジェリアにとっての一番の愛情表現だ。


「……土産ナンテ知ラナイ。エレの明日のお菓子何にしようかなぁ」


「……ふにゅ」


「エレの大好きなお菓子を用意しようかなぁ」


「フォルすき」


「えっ⁉︎」


 エンジェリアは、ゼーシェリオンから離れ、フォルの側へ向かった。

 フォルに抱きつき、一番の愛情表現をする。フォルの胸に顔をすりすりと擦り寄せる。


「またやってる」


「お待たせ。遠かったから、遅くなった」


「気にしなくて良いよ。どっかの誰かみたいに土産に時間を費やしてないんだ」


「……ゼロはエレのためにお土産探ししたの」


「うん。それより、次の世界に行きたいから」


「ふにゅ。説明良いから次の世界行くの。着いた後に説明なの」


「そうだね。その方が良さそう。でも、その前にこれを」


 フォルが、全員分の服と帽子を渡す。


「着替えるの?」


「うん。水着の上から着れば良いよ」


「みゅ」


 エンジェリア達は、水着の上から服を着た。


「帽子も被ってね。次行く場所は必須だから」


「ふにゅ」


 帽子を被ると、フォルが、転移魔法を使った。次の場所は、濡れた髪が即乾く、灼熱世界だ。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ