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星月の蝶  作者: 碧猫
3章 呪いの聖女
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エピローグ クルカムの成果


 リミェラの過去の事で、色々と互いに話す事はあったが、先に、魔物化した人々の救出へ向かった。


 現在、魔物化した人々は、洞窟の、魔物休憩所で休んでいる。ミディリシェル達は、リミェラの案内で、そこまで向かった。


「ふみゅ。この中に、みんなもいるんだと思うの。フォル、ふりふり」


「うん」


 フォルが、解呪の花を振る。


 魔物化していた人々が、元に戻った。


「リーミュナ達以外は、転移魔法で、適当に」


 フォルが、リーミュナ達以外を、転移魔法でどこかへ送った。


「エレ、ちゃん……慣れないね」


「夢を見ていたんだ。エレちゃん達の夢。ずっと、ありがとう」


 あり得ない奇跡。魔物化の魔法が、その奇跡を起こしたのだろう。


 ミディリシェル達が、奇跡の魔法でしてきた事。もう一つの物語。リーミュナ達は、夢でそれを見ていたようだ。


 ミディリシェルは、フォルの手を握った。フォルの顔を見て、瞳に涙を溜めた。


「これからは、みんないてもエレって呼んで良いのか……僕のエレ」


「抜け駆け禁止だー!俺のエレ」


「……エレのエレなの」


 ミディリシェルは、自慢げにそう言った。


 普段のやりとりをしていると、リーミュナ達は、顔を見合わせて、笑った。


「……」


「……ピュオねぇ、ノヴェにぃ、呪いの聖女さんの事どう思ってるか教えて?ここでお話して?」


 俯いているリミェラに気づき、ミディリシェルは、ピュオとノーヴェイズに頼んだ。


 ピュオとノーヴェイズは、笑顔でこくりと頷く。


「色々とあったけど、わたしは、きみの事を知りたいと思う。友達になりたい。その、きみが大切に思っている二人とも」


「俺も、ピュオと同意見」


「って事なの。だから、前向くの。いっぱいいっぱいお話するの。でもその前に、エクリシェ帰るの。ねむねむさんなの」


 ミディリシェルは、転移魔法を使った。


      **********


 ミディリシェルが、転移魔法を一人で使って一発成功するはずがない。


 海の中に転移したが、直ぐにフォルが転移魔法を使い、エクリシェへ戻った。


 という事があり、現在反省中。


「ふみゅぅ。わざとじゃないの。偶然なの」


「エレ、セイに転移魔法に必要な勉強をするように頼んでおく」


「やなの!」


 転移魔法に必要な勉強。それが特別嫌なのでは無く、勉強自体が嫌。ミディリシェルは、勉強という言葉を聞いて、即答した。


「僕、フィルと行かないといけない場所あるから」


「エレも着いてく」


「俺も」


「みんなで仲良くお話しておいてねー。みんなで仲良くなるのー」


 話し合いも気になるが、それよりもフォルと一緒にいたい。フォルが行くところについていった。


      **********


 転移魔法で来たその場所は、魔の森。こんな場所に行く理由を気になりつつ、フォルについていく。


「はぁ、はぁ」


 そこには、エクランダ帝国の現皇帝クルカムが、息を切らしている。魔物に追われ、逃げてきたのだろう。


「ふぉ、る、さま」


「お疲れ様。どうだった?」


「分かり、ません。ですが、自分を、見つめ、直す、機会に、なったと、思います」


「そう。まぁ、上的じゃない?ここまで生きていられたんだから。いくら加護を与えたとは言っても、簡単にできる事じゃない」


 魔の森で、数日過ごす。一部の神獣がそれをやる事はミディリシェルも知っている。


 だが、それは、かなり危険を伴う事だ。卵の状態でやる事ではない。


「……ふみゅ?これ」


「うん。孵化成功だ。自分を見つめ直したっていうのが良かったんだろう」


「卵?孵化?なんの事ですか?」


「君は、神獣の卵だったんだよ。今は、雛ってとこかな。暫くは、エクーにエクランダの事は任せて、君には、政の勉強をしてもらうよ。神獣達の本家で、手伝いとして短期間の間雇わせてもらう。それ相応の報酬も払うよ」


 フォルが、にこにこと楽しそうに笑って言う。

 

 ――エクランダの皇帝として、自信を持てるように学ばせてんのか。


 ――ふみゅ。すごいの。優しいの。でも厳しすぎるの。そんなところも好きなの。


 ミディリシェルは、ゼノンと手を繋ぎ、共有で会話をした。


「報酬なんて、教えてもらっている身で」


「雇うんだから、雇い主が払うよ。それは、当然の事だから、受け取って」


「はい。ありがとうございます」


 そう言って、クルカムが、深々と頭を下げた。


「フォル、皇帝としての立ち振る舞いも学ばせるべきだと思う」


「そうだね。それに、騙されないように、人の嘘をある程度は見抜けるようにしておいた方が良いよね」


「決断力と判断力ももっと養っておきたい」


「エクーは、軍事にも口出していたらしいから、期待をとか言うなら、その辺も学ばせておこうか」


 フォルとフィルが、楽しそうにクルカムの教育の話をする。


 それを見ている、ミディリシェルとゼノンは、悪寒に襲われた。


「ぷるぷる。なんだか、やな予感が」


「エレ、大丈夫だ。俺らには関係ない」


「それもそうなの」


「あの、そんなに、厳しいんですか?」


 クルカムに問われ、ミディリシェルとゼノンは、互いに顔を見合わせると、フォルとフィルを見た。


 フォルとフィルは、笑顔で見つめ返す。


 それを確認すると、ミディリシェルとゼノンは、青ざめた顔で、ふるふると勢いよく首を横に振った。


「ふみゅ⁉︎え、エレは、その、あの、なんだろう?何かあるから、お話できないのー」


「お……ゼ、ゼロも、その、あれが、あの、あれであって、何かあるから、お話できないのー」


 ミディリシェルとゼノンは、そう言って、フォルの背に隠れた。


「そういう事だから……あっ、就業場所、本家じゃなくて、管理者の箱庭で。そういえば、今はそっちにいるんだった」


「はい」


「早速行こうか」


 フォルは、そう言って、笑顔で転移魔法を使った。


 転移魔法は、対象を選べるが、逃げれば回避可能ではある。回避できる確率は、非常に低いが。


 ミディリシェルとゼノンは、転移魔法を使う直前に、回避しようと離れたが、失敗した。


      **********


 管理者の拠点はまだ荒らされたままだ。


 他の管理者達は、現在休暇中。何かあったのではと思いたくなる静かさだ。


 まだ、逃げるチャンスがある。ミディリシェルとゼノンは、こっそりと逃げようとしたが、フォルとフィルが、強制的に手を繋ぎ、逃げる事に失敗した。


 だが、まだ諦めていない。チャンスがあれば逃げられるようにと、気を伺っている。


「セイにぃ様、労働力連れてきた」


「良くやった、弟よ」


「うん。いっぱい学ばせてあげて。政事中心に。エクランダに戻る頃には、立派な皇帝になるように」


「教育法は?」


「任せる。できるだけ厳しくして」


 フォルが、笑顔でそう言い、クルカムを、セイリションに差し出した。


 その時、ミディリシェルの手を離した。だが、ゼノンがまだ逃げられない。ここで一つだけ逃げるという選択肢は無い。


「フィル、こっちきたついでに、結界魔法具の強化してくれる?」


「分かった」


 フィルがゼノンの手を離した。逃げるなら今しかない。


 ミディリシェルとゼノンは、走って逃げようとしたが、謎の壁が立ち塞がった。


「エレ、ゼロ、君らにも手伝ってもらうから、来て」


「ぷるぷるなの」


「勉強やなの」


「君らには何もしないよ。結界強化の手伝いはしてもらいたいけど。というか、君らの教育に関しては昔からだいぶ優しくやっていたと思うけど?」


 ミディリシェルとゼノンは、ふるふると首を横に振った。


「やっていたよ。ゼロ、君はこっちで手伝って」


「ふぇ」


「エレは、こっち」


「ゼロ離れるやだ」


「だから、何もしないって」


 ミディリシェルとゼノンは、別れを惜しむが、強制的に連れられた。


      **********


 結界魔法具のある執務室を訪れた、ミディリシェルとフィルは、早速、結界強化に取り掛かる。


「エレ」


「ふみゅ。おにぃちゃん、これ、こうした方が良いかもだからしておいて良い?」


「こっちも、これの方が効率良いから変えておく」


 結界魔法具は二つで一つの役割を果たしている。ミディリシェルとフィルは、片方ずつ手分けして強化へ取り掛かっている。


 だが、二つを合わせられるようにするのが一番重要だ。それには、二人の技術力と意思疎通が重要となってくる。


「ふみゅ⁉︎これは、意味ないから無くすの」


「ここ、これよりこっちの方が効率的。それに、効果も上がる」


「……おにぃちゃん、処理能力が低い気がするの。もっと早く魔法処理すれば、より強固で、何重にも結界を張れるの」


「同感。前に連絡魔法具でやった方法を取ろう」


「ふみゅ」


 以前、連絡魔法具を作った時は、その方法を試行錯誤でやり時間がかかったが、一度成功させたものだ。二度目は時間かけずに、簡単に行う事ができる。


「魔法石が古いの。新しい、もっと質の良い魔法石が欲しい」


「これ」


「ふみゅ、ありがと」


 フィルから魔法石を貰い、魔法石を取り替えた。


「魔法石が、魔力吸収と放出を効率良く行えるようにするの」


「なら、これをこうすれば」


「ふにゅ。効率良いの。それに、結界魔法に防御魔法も掛け合わせて、強度を増すの」


「了解」


 相手は神獣だ。少しでも穴があれば、そこから侵入するだろう。

 用心するに越した事は無い。


 強化自体は終わったが、ありとあらゆる、考えられる侵入方法とそれを防ぐ方法を考える。


 まずは、結界に若干の強弱があるだろう。


 一般的な結界魔法具では、結界の強度にムラがある。ミディリシェルとフィルが作っても、そのムラは若干生まれてしまう。


「均一にするの難しいの」


「それなら、魔法石を二つ入れて、ムラを極限まで減らすのは?」


「良い考えなの」


「はい」


「ありがと」


 魔法石を二つ付ける事で、正確性を高める。


 魔法具の動力源である魔法石が、魔力のムラを生む。それを減らすためには、余分な経路を作らない事だが、余分な経路が無くとも、経路の多さで出てしまう。それを、もう一つ増やす事で、ムラを出す経路の数を増やす。


「昔の方法でやるとなると、魔法具自体を作り直さないとなの」


「……作り直す?」


「ふみゅ。素材は持ってるの。これ解体すれば、素材は手に入るの」


 ミディリシェルとフィルは、今までの改造の意味を無くすが、一度解体して作り直す事にした。


      **********


 一、二時間くらいだろう。


 ミディリシェルとフィルは、二つの結界魔法具を作り直した。前の原型を留めていないが、これを作り直したといえるのだろうか。


 これならば、結界にムラが生まれない。従来の結界魔法具の倍以上の効果を出せる。


 それ以外にも、今までは、結界魔法が、入れて良いと許可を出す相手も、更に厳しくなった。少しでも敵意を抱く者は全員排除。それ以外にも、ミディリシェルとフィルが定めたいくつもの条件に反する相手は、無条件で排除するようにした。


 どれだけでなく、転移魔法の使用制限。そこにもいくつも条件を定めた。


 これで、もう気軽に侵入などできないだろう。


 ミディリシェルとフィルは、自分達が作った魔法具を見て、ハイタッチした。


「あのさ、流石にやりすぎじゃない?強化頼んだだけで、なんでこうなるの?」


「がんばったの」


「うん。ありがと。でも、現代の技術を少し考えて」


「がんばったの」


 ミディリシェルは、執務室を訪れたフォルに、撫で撫でと褒めるのを要求している。フォルの話は聞いていない。


 フィルも、終始顔を逸らし、話を聞き流しているようだ。


「うん。えらいえらい。もう良いよこれで」


「みゅ。強化終わったから帰って休むの」


「そうだね」


 ミディリシェル達は、転移魔法を使い、エクリシェへ帰った。

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