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星月の蝶  作者: 碧猫
3章 呪いの聖女
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5話 魔物化解呪へ


 一晩経っても戻ってこない。いくらなんでも遅すぎる。


 そう思ったミディリシェルは、ゼノン捜索を開始する事にした。誰にも言わずに、一人で。


「まずは、どこにいるのかなの。大体の居場所を割り出さないとだめなの」


 ミディリシェルは、連絡魔法具を取り出して、ゼノンに連絡をした。だが、ゼノンの連絡魔法具には繋がらない。


「……みゅぅ。こうなったら、必殺のいちじょぉほぉなの」


 ミディリシェルが、ゼノンの魔法具にこっそり取り付けておいた機能。ミディリシェルの連絡魔法具に、ゼノンの位置が見れるというもの。


 ミディリシェルは、それを駆使して、ゼノンの居場所を割り当てた。


「ふみゅ。分かったの。近くのゲートに転移魔法を使って……ふみゅみゅ。念のため、フォルに、お外出るって連絡をしておくの」


 ミディリシェルは、フォルにメッセージを送った。


「みゅ。捜索隊しゅっこぉなのー」


 ミディリシェルは、そう言って、転移魔法を使った。


      ***********


 転移ゲート。これがあれば、簡単に転移魔法で位置を決められる優れもの。ミディリシェルも、このゲートがあれば、安心して転移魔法を使う事ができる。


「エクリシェにも設置して欲しいの」


 転移ゲートは、ミディリシェルは作る事ができない。フィルなら作れるが、今は忙しい。


「捜索開始」


 ミディリシェルは、魔原書リプセグに呼びかけた。


「リプセグ。ゼロがいる場所を案内して。エレだと迷子だから」


 ミディリシェルの言葉に反応して、ミディリシェルの目の前に、光の文字が浮かぶ。


【案内。任されました】


「ふみゅ。よろしくなの」


 ミディリシェルは、魔原書リプセグの案内を頼りに、ゼノンがいるらしき場所まで向かった。


      ***********


 ゼノンの反応があった場所。そこには、巨大な扉があった。


「ふみゃぁ。ここなのかな」


 ミディリシェルが扉に触れると、扉は勝手に開いた。


「みゅ。入って良いのかも」


 扉の中は、草原が広がっている。ミディリシェルは、扉の中へ、足を踏み入れた。


「……みゅ、なんだか、懐かしい気がするの」


 ミディリシェルが中に入ると、小さな魔物が、ミディリシェルの元へ集まってきた。


「ぴゅぅん。とっても可愛いなの……みゅ?これ、エレがゼロに渡した浄化石なの。ネックレスにしてる」


 魔物が持っているはずのないもの。ゼノンのためにと渡した浄化石。それを、この魔物は持っていた。


 ミディリシェルは、浄化石を持っている魔物を、手の上に乗せた。


「みゅぅ。可愛いの」


 魔物は、ミディリシェルに懐いている。


「エレ」


「みゅ?フォル?どうして」


 背後から声が聞こえて振り返ると、フォルがいた。


「君が心配だったから。早くここから出るよ」


「待って。ゼロ探すの。いないの」


「その子じゃないの?ルーとにぃ様らしき魔物も発見済み」


 フォルの頭を見ると、魔物が二匹乗っている。その二匹が、ルーツエングとイールグだろう。


「ゼロは、君のそれがあったから、完全には取り込まれなかったんだろう」


「他のみんなは」


「それは後。良いから早くここから出るよ」


 ミディリシェルは、フォルの連れられて、扉の中から出た。


      ***********


 エクリシェ下層、フォルの部屋。扉から出ると、フォルが転移魔法を使い、この部屋へ転移した。


「みゅぅ」


「ごめん。なんの説明もなしに」


「ちゃんと説明するの」


「……やっぱ、覚えてないか。僕は別の理由でだったけど、君は、自分で封じたんだろうね」


「みゅ?なんの事なの?」


 ミディリシェルは、魔物を机の上に置いて、フォルを見つめる。


「……あそこは、君らに縁のある場所だ。ノーズとヴィジェ。覚えてない?」


「やだ……」


「無理に思い出せなんて言わない。でも、そのまま続けるよ。あそこは、その二人の御巫候補と、君らが過ごした場所」


「……エレ、そんな場所知らない」


「ごめん。もうやめる。だから、そんな泣きそうな顔しないで?」


「……みゅぅ。ぎゅぅ」


 ミディリシェルは、フォルに抱きついた。頬擦りをして、匂いまで嗅いでいる。


「ぎゅぅんのぎゅぅん」


「……エレ、あそこには行かない方が」


「行くの。フォルが側にいるから行くの。エレはフォルの側にいるの。ぎゅぅってしてるの」


「でも……」


「とりあえず行くの。その後どうするか考えるの」


「……分かった。エレなら、すきすきらぶらぶで大丈夫とか言いそう」


「そうなの。だから」


「でも、今すぐに行くのは無しだよ。こっちの事情っていうのもあるけど、君はこの状態で行くつもり?各地の情報見てみな」


 ミディリシェルは、フォルに言われて、連絡魔法具を手に取った。連絡魔法具に、ミディリシェル達のためにと、神殿やロスト等の協力のもと作られた、メッセージ版がある。そこに、各地で入手した情報が書かれている。


 ミディリシェルは、それを開き、現在の各地の状況を確認した。


 どこも、内容は変わらない。突然の行方不明者増加と、敵意の無い魔物の大量発生。魔物は、突然、どこかへ消えてしまう。


「みゅぅ。これは、大変な事になってるの」


「そう。大変な事になっているから、今すぐに行くなんてできない。先に、そっちの混乱をどうにかできるようにしておかないと。魔物の一部は、あそこにいる。でも、多くは、その国に残っている」


「それを解呪魔法使って……みゅ?」


「解呪魔法が効果無い。それに、そんな事していてもイタチごっこになるだけ」


「じゃあ……みゅぅん」


 ミディリシェルは、自分で答えを出そうと、ベッドに座り、枕を抱きしめて、思考体制へ入った。


「……みゅぅん」


「御巫候補は、魔法が効かない。その大前提が崩されている。でも、全員がかかっているわけじゃないんだ。無事な人達と協力する」


「ふぇ?でもでも、その人達がかかったら」


「そこは、対策を考えてあるよ。浄化石は、あの魔法には有効な手段だ」


「うん。でもだめだった」


 邪魔変魔法は、浄化魔法に弱い。ミディリシェルが覚えていた事だ。だが、ゼノンに浄化石を渡したが、邪魔変魔法にかかって魔物化している。


 それが示すのは、同じであり別物の魔法。ミディリシェルの知識では、補う事ができそうにない、未知の魔法。


 未知の魔法を目の前に、なす術無く、見ている事しかできない。などという事はない。それをフィルが示した。


「これを使う」


「ふにゃ?」


 白色の、大量の花びらのある花。


「解呪の花。それに、エレの願いの魔法を重ねれば、効果があるはずだ」


「エレもできる?」


「効果が違うと思う。でも、覚えれば、おんなじような事ができるんじゃないかな」


「ふみゅ。エレ、いっぱい、お願いするね」


 ミディリシェルは、花に祈りを捧げた。


「試してみるか。ちょうど実験体になりそうなのが」


「変な言い方だめなの」


「試してないから、実験でしょ」


「……みゅ。なら、このゼロらしき可愛いのを捧げるの」


 ゼノン、ルーツエング、イールグといる中で、ミディリシェルは、迷わず、ゼノンを差し出した。


「了解」


 フォルが、花を魔物化しているゼノンの頭上で振った。


「ふぇ⁉︎も、戻ったの。花粉をかけてとか、ふにゅふにゅなの」


「えっ?あれ花粉じゃなくて、魔力」


「ちっちゃい事気にしないの」


「……エレ?可愛い」


「元に戻った第一声がエレなの。ふみゅぅ」


 ミディリシェルは、元に戻ったゼノンに抱きついた。


「遅かったから、みゅぅんってなってたんだよ。エレ、みゅぅんってなってたの」


「悪い。心配かけて」


「そう思うなら、エレをにゃむっとして。って言いたいけど、いそいそだからむりなの」


「……そう、だな」


「みゅ?何かあったの?エレに言わないと怒るの。おかえり遅かったんだから、包み隠さず話さないとだめ」


「……魔物化のすぐ後、呪いの聖女を見た。思い出せないが、どこかで会った事がある。それに、俺を見て、見つけたって」


「……やっぱり、そうとしか……とりあえず、こっちの二人も戻すよ。その後、花を量産する」


「ふみゅぅ、りょぉさん、がんばるの」


 フォルが、ルーツエングとイールグも、解呪の花で元に戻した。


「みゅぅ。お花のりょぉさん」


「にぃ様、フィル呼んできて。ゼロは、ゼム」


「分かった」


「……エレ、ゼムってどこいるんだ?部屋いる?」


「……ぷしゅ……お部屋いるの」


「笑う事ねぇだろ。知らなかっただけで」


「早く行ってくるの。急ぎで。エレ寂しかったんだから」


「ああ。すぐ戻る」


「みゅ」


 ゼノンとルーツエングが、フィルとゼムレーグを呼びに、部屋を出た。


「エレ、花」


「ふみゅ。お願いいっぱいするの」


「ルー、花の効果を増幅させられる?」


「任せろ」


 フォルが花を創り、ミディリシェルが、花に祈る。イールグが、花の効果を増幅させる。それを、三十回程繰り返した。


      ***********


 花の量産作業が終わった頃、ゼノンとルーツエングが、フィルとゼムレーグを連れて戻ってきた。


 フォルが、一通りの説明を済ませると、どうするのかの話し合いが始まった。


「……みゅ。ローシャリナは、なんの情報もないの」


 まずは、どこが無事なのかを知るため、ミディリシェル達は、メッセージ版を読んで、情報を集めている。


「リューヴロと、エクランダも無事みたいなの」


「エレ早くね?」


「ふみゅ?だって、こうすれば早いの。ここのニュースに出てる国名だけを見れるようにしてるから」


「それどうやってやるんだ?」


「エレとフォルの連絡魔法具しかできないの」


「うん。ついでに、出ていない国も見れる。エリクルフィア全域と天族達の国も無事みたい。それに、アスティディアとロスト。調べられるのだとこのくらいかな」


「みゅ。ローシャリナは、月鬼達がいると思うの。リューヴロは、リグ達。ロストは今はルナ達いるの。エリクルフィアには……アスティディアは、アディとイヴィがいるらしいの。今の天族をまとめているヨジェドって人は、シスコンだけどとても良い人なの」


「今はエクーは、管理者の箱庭内にいる。でも、エクランダに、弟子がいるらしい。単体行動は危険だから、二人一組でにする?三人のチームは、一つ多く行ってくるで」


 フォルがそう言うと、ミディリシェルは、フォルとのペアを誰かに取られないよう、フォルの腕に抱きついた。


「……この子、僕以外はいやだって」


「なら、俺は主様を指定しよう」


「俺は」


「ゼロは、ゼムと一緒におにぃちゃんに面倒見て貰えば良いの。エレは、フォルと一緒が良いから」


「……全員の意見聞かなくて良いなら、ルーとエレとゼムで、アスティディアとリューヴロと天族の国。にぃ様とゼロで、ローシャリナとロストに行ってきて欲しいんだけど」


 適任を考えて言っているのだろう。それに、口で反論をするのではなく、驚きのポーズをとって、フォルを見るミディリシェル。


「エレ、悪いとは思ってるんだ」


「全然思ってない人の顔なの」


「……僕のエレなら、お願いした事、なんでもやってくれるって思ったから。だめ?」


「良いの。エレ、フォルのお願い聞くの」


「じゃあ、     。お願いできる?ゼロにも伝えて。君らにしか頼めないから」


「みゅ。任されたの」


 ミディリシェルは、ゼノンに、共有でフォルの頼みを伝えた。


「ゼム、行くの。天族の国まで転移魔法使えなの」


「エレが使えば?」


「あっ、ルーにも頼みある。ゼムに魔法慣らせといて」


「良いだろう。ゼム、ゲートなしで転移魔法を」


「それは難しいと思うの。ゼム、ゲートを頼りに、ゲートのお隣へ転移魔法使うの」


「うーん。隣なら、多分できると思うから良いけど」


「フィル、エリクルフィアとエクランダどっちから行く?」


「エクランダ」


「了解」


「エルグにぃ、先にロスト行きたい」


「分かった」


 各チーム、先に行く場所を選び、転移魔法を使った。

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