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星月の蝶  作者: 碧猫
2章 奇跡の魔法
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4話 お洋服選び勝負


 翌朝、ミディリシェル達は、ノキェットの城下街へ赴いた。


 昨日、魔法具設計図の話で盛り上がる中、ルーツエングとイールグに寝るように促されて、早めに寝た。そのおかげで、今日のミディリシェルに、今のところ眠さはない。


 ローシェジェラは、ミディリシェルとゼノンには、話しているが、他のみんなには、何も話していないためか、フォルの姿をしている。


 ミディリシェルは、服選びも必要だが、記憶にある限りでは、初の外出、お買い物。それに、これで、ローシェジェラとは、暫く会えなくなるかもしれない。少しでも、良い思い出を作るためにと、色んな場所を見て回りたいと、提案していた。


「ふみゅ。いろんなものがいっぱいあるの。あまあまさんも、いっぱいあるの」


「一つまでだからね」


「みゅぅ」


 ミディリシェルとゼノンは、ぷぅっと頬を膨らませた。一つしか買えない。その一つを選ぶため、ミディリシェルとゼノンは、話し合いを開始した。


 話し合いの末、決めたのは、ケーキ(ワンホール)。ミディリシェルとゼノンは、重量を、重視して決めた。


「決めたの。ケーキにする」


「ワンホールは駄目だからね」


「ふにゃ⁉︎そんな事言ってないの⁉︎まさか、そんな事まで」


 ミディリシェルは、いつもの、大袈裟な驚きのポーズをとった。


「……君らの考えそうな事くらい分かるよ。甘いものに関しては。単純だから」


 ローシェジェラが、呆れた表情でそう言った。それに、ルーツエングとイールグが、こくこくと頷いた。その光景を、リーミュナ達が、困った表情を浮かべて、笑って見ていた。


「むにゅぅ」


「結構見れたから、何買うかは後にして、先に服を買いに行かない?その間に、何買うか考えておいて」


「ふみゅ」


「……クロ、これも、フォルの指示、なのか?」


 ゼノンが、小声で、ローシェジェラに問う。


「いや、君らには甘いものを与えるなとの指示を受けているよ。だから、これは、内緒にしてくれる?」


「ありがとなの」


「ありがと」


 ミディリシェル達は、周りに聞こえないよう、小声で、礼を言った。


「ふみゅふにゅ。今日は、誰が勝つか楽しみなの」


「ミディちゃん、今日は、私絶対勝つからね。自分で言うのもアレだけど、私、服選びが得意だから」


「わたしも負けないよ。時々ノヴェの服まで見ていたくらい、服に関しては自信があるの」


 自信満々の、リーミュナとピュオ。


「……」


「アゼグも?」


「ああ。勝てる気がしない。自分の服なら選ぶけど、女の子の、それも、ミディの服となると」


「俺は、そもそも、そういうセンスが無くて、ピュオに頼んでいたから」


「帰ったら最下位の慰め会しよう」


「うん」


 アゼグとノーヴェイズは、自信が無く、既に負けた後の事を考えている。


「御巫グループよりも、俺達蝶グループの方が共に過ごした時間が長い。その時間は武器だ。この勝負、俺達が有利だな」


「主……エルグもそう思うか?俺も、同意見だ」


 ルーツエングとイールグが、謎のグループを作り出して、自信満々だ。


「……ふにゅ。個人と、女の子ハンデとして、リミュねぇ達は二人の、星御巫チームと月御巫チームと蝶チームに分かれた得点もなの」


 ミディリシェルは、そう言うと、まだ何も言っていない、ゼノンとローシェジェラを見た。


「僕は、あの姿だからね。女性の服選びくらいお手のものだよ」


 ローシェジェラが、ミディリシェルの隣で、小声で、そう言った。


「……ミディの好みより、可愛さだ!そこは、負けても絶対譲らねぇからな」


「ゼノンの趣味、じゃなくて?」


 ミディリシェルは、ゼノンに疑いの眼差しを向けた。すると、ゼノンが、顔を逸らした。


「今現在の優勝候補は、リミュねぇとピュオねぇなの。最下位候補は、ゼノンなの。というか、ゼノンに決定なの」


「未来でも視たのか?」


 ルーツエングの問いに、ミディリシェルは、ふるふると首を横に振った。


「ゼノンに勝たせる気がないだけなの。ゼノンだけ、マイナスいっぱいから始めるの」


「それ本人の前で言うか?」


「……ちなみに、クロも優勝候補、なの」


 ミディリシェルは、ゼノンを無視して、小声で、ローシェジェラに、そう言った。


「期待に応えられるよう。本気でやらしてもらおう」


 ローシェジェラから、そう返ってきた。


      **********


 ローシェジェラの案内する服屋は、人通りの少ない、裏路地にあった。


「久しぶりだね」


「おやおや?お久しぶりですねぇ、フォル殿。それに、主様までご一緒とは」


 この店の店主だろう。店主の老婆が、フィルとルーツエングに、挨拶をする。ローシェジェラが、わざわざここに案内したのだ。ここは、管理者御用達の店なのだろう。


「今日は、ミディの……この子の服を買いたいんだ。それで、話の流れで、誰がミディのお気に召す服を選べるかって勝負になったんだけど。ここでしても良いかな?」


「それは面白そうですねぇ。よろしいですよ。ここは、誰も来ませんからねぇ」


「……不景気とかっていうの?」


「違うよ。でも、良くそんな言葉を知ってるよ。ここは、ギュシェルの服屋だから。その、管轄の組織でもある管理者も御用達だから、僕らは時々来るけど、普通の客は来ないんだ」


 ローシェジェラが、そう言って、ミディリシェルの頭を撫でた。


「姫様、姫様は、試着室で待っていましょうか」


「うん。みんな、頑張ってミディに似合うお洋服を探してね」


 ミディリシェルは、そう言って、店主と試着室へ向かった。


「そういえば姫様、この前、フォル殿が参られました。クロ殿ではなく」


「……そう、なんだ」


「大切なものを探していると言っておりました」


「大切なもの?」


「恐らく、記憶の中の後悔でしょう。姫様は、覚えておられますか?あの方の、大切な思い出と、後悔を」


 ミディリシェルは、ふるふると首を横に振った。


 それを見た店主が、「そうですか」と、悲しげな表情で言って、話を切った。


「……」


 ――これって、もしかして。


 ミディリシェルは、店主に、ある違和感を覚えた。その違和感が、正しいのか、確かめるため、ミディリシェルは、店主に、ある事を問いた。


「……おねぇさん、おねぇさんは、淫魔なの?」


「ホォ」


 ミディリシェルの問いに、店主が、目を見開いた。


 店主が、ミディリシェルを、じっと見つめて、笑みを浮かべる。


「いつ、気がついたのか、聞かせてもらっても良いかね?」


「最初から、なんかふみゅって感じだったけど、ついさっき、不思議な感じがしたの。ミディの目には、魔力が視えるみたいだから、それが関係してるかも」


「マークから教えてもらった隠匿魔法で完全に淫魔の気配は消していたというのに。流石は聡明姫でございます」


「あれ?もしかして話中?邪魔しちゃうと悪いから、後で」


 リーミュナが、試着室を訪れて、気まずそうにする。その手には、選んできた服を持っている。


「いえいえ。お嬢さんの選んだ服はこれですか。姫様、一人で着られますか?」


「ふみゅ」


「ミディちゃん、この服気に入ってくれた?」


「とりあえず着てみるの。それからなの」


 ミディリシェルは、そう言って、着替え始めた。


 ミディリシェルの採点表。


 第一印象、五点。期待はあるの。


「……」


 着心地、四点。少し素材が合わない。

 着やすさ、七点。これは、かなり着やすかった。

 好み度、五点。まあまあなの。

 欲しい度、三点。うーんって感じ。

 胸、ぶかぁ、マイナス二点。ぶかぁなの。


 合計二十二点。ミディ的には、まあまあ良い感じなの。


 感想。


「涼しげな色と、ふんわりスカートが良いの」


 ミディリシェルは、感想だけ、リーミュナに伝えた。リーミュナが、既に勝ちが決まったかのように、ガッツポーズをする。


 リーミュナの後に、ピュオが入ってきた。暗黙のルールでもあるのか、リーミュナが、試着室を出る。


「どうかな?勝っていると思うけど」


「みゅ。着てみるの」


 第一印象、七点。これは、ちょっと好きかも。


「……ふみゅ」


 着心地、三点。ちょっと、ちくちくなの。

 着やすさ、二点。着るの大変。

 好み度、三点。なんか違う気がする。

 欲しい度、一点。申し訳ないけど、ミディには欲しい違うなの。

 胸、ぶか、マイナス一点。リミュねぇのよりはぶかぁじゃないの。


 合計、十五点。ちょっと低めなの。


 感想。


「みゅ。印象は良かったの。ピンクは可愛い色なの」


 ミディリシェルが、そう言うと、ピュオも、ガッツポーズをした。試着室は、防音魔法の結界を張っている。自分しかも、ミディリシェルは、得点を言わない。勝ったと思っているのだろう。


 そして、用が済むと、ピュオも試着室から出た。


「そういえば、姫様。フォル殿が姫様へと、事前に服を見繕っておりますよ。最後に着てみては?」


「ふにゅ」


 次に来たのはアゼグだ。自信が無いと言っていた割には、早い到着だ。


「……頑張った方なんだ。点数は良いけど、できれば感想は甘めで」


「みゅ。着てみるの」


 第一印象、七点。どこが自信ないんだろう。


「……ふみゅぅ」


 着心地、六点。結構良い着心地なの。ミディのお肌に合ってる。

 着やすさ、三点。これは、着づらいの。

 好み度、七点。高得点なの。

 欲しい度、五点。ちょっと欲しいって思ってるの。

 優しさ、五点。ミディの優しさじゃなくて、アゼグにぃの優しさなの。


 合計三十三点。もっと自信持って良いの。


 暫定一位獲得だ。


 感想。


「ふみゅ。ふみゅが良い感じでふにゅなの。とっても良いと思うの。あと涼しい」


 ミディリシェルが、そう言うと、アゼグが、ほっと胸を撫で下ろした。暫定一位だとは、思っていないだろう。


 次に来たのはイールグだ。持ってきている段階から、目に見えて、自信に満ち溢れている。


「……みゅぅ。着てみるの」


「フッ、当然、これが一位だろう」


 第一印象、マイナス五点。ちょっと良く分かんない。


「……なにさせたいんだろう」


 着心地、十点。着心地だけは良いの。

 着やすさ、マイナス八点。着づらい。とにかく着づらい。

 好み度、マイナス九点。これがミディの好みな訳ない。気にしないとか言ってたけど、そういうレベルじゃない気がする。

 欲しい度、マイナス十点。これは絶対着ないの。

 なんか可哀想、十点。昨日のマイナスのお話はなしにするの。

 露出多すぎ、マイナス九点。とにかく多いの。


 合計、マイナス二十一点。マイナスじゃなかったら高得点なの。


 感想。


「なにさせたいんだろう」


「可愛いだろう」


「露出多すぎて、もう、なにさせたいのか分かんないんの」


 現在、圧倒的大差で、暫定最下位。


 次に来たのは、ノーヴェイズだ。かなり自信が無さそうに来ている。


「ノヴェにぃ、なにがあっても、ルーにぃよりは点数高いから、安心して良いの」


「そう、かな?」


「みゅ。着てくるの」


 第一印象、九点。こ、これは⁉︎


「……みゅ」


 着心地、三点。お肌に合わないの。

 着やすさ、七点。とってもきやすかったの。

 好み度、六点。良いかなって思うの。

 欲しい度、五点。ちょっと欲しいって思うの。

 自信、マイナス十点……可哀想だから、頑張れに変えて、三点なの。


 合計三十三点。アゼグにぃと同じなの。


 感想。


「ミディ的には好きかなって思うの。設計図といい、もっと自信持って積極的にやって欲しいの」


「今度から気を付けてみるよ」


 ミディリシェルは、昨晩の話を出した。昨晩、ノーヴェイズの意見が少なかった気がしていた。もっと、意見を聞きたかった。

 

 ノーヴェイズが、何かを言いたげな表情をしているが、そう言って、他に何かは言わなかった。


 次に来たのは、ルーツエングだ。堂々と来ている。


 だが


 第一印象、マイナス二十点。エルグにぃの苦手を知っちゃったの。


「んっと、着てくるね」


「ああ」


 ミディリシェルは、一人で一度着替えてから、元の服に戻した。


「……エルグにぃの名誉を守るの」


 着心地、十点。着心地はすごく良いの。

 着やすさ、十点。エルグにぃって、着やすければ良いって思ってるのかな。

 好み度、マイナス五点。やなの。

 欲しい度、マイナス十点。やなの。

 センス、マイナス二十点。さすがのミディも、ちょい引きなの。


 合計、三十五点。最下位争いなんて、予想してないの。


 感想。


「うんって感じなの」


 ミディリシェルは、笑顔を作って、そう言った。


 次に来たのは、ローシェジェラだ。


「豪華なの」


「女の子だから、着飾るのは大事だよ」


 ローシェジェラが、演技をやめている。


「着てみるの」


 第一印象、三点。ちょっとおまけあるの。


「……派手、というか、着づらい」


 着心地、マイナス十点。これは服といえるのでしょうか?

 着やすさ、マイナス二十点。着るのに時間かかったの。

 好み度、マイナス十点。好み違う。

 欲しい度、マイナス十点。欲しくないの。

 流石に可哀想、十点。救済システムなの。


 合計マイナス三十七点。きっと、神獣さんは、特殊な文化の元で育ったの。


 感想。


「どこにお出かけするの?」


「向こうではいつもこんな感じだけど?」


「……」


 残すはゼノンのみ。


「これでどうだ?」


「……不服なの」


「なんで⁉︎」


「ゼノンが最下位じゃなくなったの。マイナス十点スタートなのに。着てくるの」


 第一印象、十点。なかなかなの。


「……脚見せ以外は……」


 着心地、十点。良いの。

 着やすさ、十点。簡単に着れたの。

 好み度、八点。脚見せマイナスなの。

 欲しい度、九点。それでも、欲しいって思っちゃうの。

 動きやすさ、十点。動きやすくて良いの。


 合計四十七点。不服なの。


「……負けたの」


「そりゃぁそうだろ。マイナス十点スタートなんだから」


「違うの。ゼノンが優勝なの」


「は?」


 ゼノンが、信じられないという表情をしている。だが、ミディリシェルの採点では、そうなっている。


「優勝なの」


 ミディリシェルは、俯きながら、両手で拳を作って、そう言った。

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