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星月の蝶  作者: 碧猫
1章 星の選ぶ始まりの未来
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エピローグ おかえり、そしてよろしく


「ふみゅ……ふにゅふにゅ……ふかぁ度が高い。これは……ミディのお部屋違う……確認。(きょろきょろ)ふにゃ⁉︎エルグにぃから貰ったと思わしき、縫いぐるみを発見!これは……ミディのお部屋?……でも……違うと思うの。ベッドのふかぁ度が全然違う。とってもふかぁ……ふにゃ⁉︎ゼノン発見!ここは……ゼノンのお部屋と推測」


 ミディリシェルは、目を覚ますと、ここがどこなのか確認するために、きょろきょろと辺りを見回した。


 この部屋には、ミディリシェルがいた部屋よりも、高価な家具。広さも、一回りは広い。


 ミディリシェルの隣には、ゼノンが眠っている。ここは、ゼノンの部屋と推測したが、確定はしていない。


 ミディリシェルは、かけられていた布団を手に持ち、顔に近づけた。


「(くんくん)……ふみゃ⁉︎こ、これは……フォルの匂いなの⁉︎という事は、ここは、フォルのお部屋なの⁉︎」


 そこからしたのは、出会った時から何度か嗅いでいるフォルの匂い。ミディリシェルは、匂いを嗅いで、フォルの部屋で確定した。


「うん。あってるよ。あってはいるけど……その方法で当てられると、嬉しくない」


「フォルらぶーー」


 ミディリシェルは、ベッドの上で座って、身体を左右に振った。


「うん。ありがと。危ないから、そこで、暴れないで大人しくして」


 フォルにそう言われて、ミディリシェルは、ぴたりと動きを止めた。


「本当に、フォル相手だと従順だな」


「この子は僕の言う事は聞いてくれるから」


 フォルが、自慢げにそう言った。


「ふにゅ……ねぇ、あの神獣さんって……リブイン王国を、リブス王国を、救ったという神獣さんは、フォル、なの?」


「うん。そうだよ。かつて、あの国の大地に実る、全ての命を枯らす雪が降ったんだ。原因特定は、僕の力というより、一緒にいた子のだけど、直接それを止めたのは、僕だった」


 それを聞いて、ミディリシェルは、寝ているゼノンを起こさないように、静かに、ベッドから降りた。

 ベッドから降りると、フォルの元へ向かい、ぎゅっと抱きしめた。


「ごめんね。ミディのせいで……フォルは、一度救った国を、自分で、終わらせないといけなくなって。ごめん、なさい。ミディが、あそこにいれば……ごめっ」


 ミディリシェルは、泣きながら言っていると、フォルに、口を塞がれた。


「ふにゅ⁉︎……これって……き、ちゅぅなの⁉︎しかも、親密な関係の人がやる、ちゅぅなの⁉︎」


 ミディリシェルは、「あわわわ」と言いながら、挙動不審になる。


「謝らなくて良い。あの国が道を違える事となった時、僕の手で終わらせて欲しい。友人からの頼みだ。それを、果たさせてくれて感謝してる」


「……でも……みゅみゅ……フォルが、そう言うなら、なにも言わないの……ミディ、物分かり良い子なの。だから、何も聞かないの。ミディを救ってくれて、ありがと」


 ミディリシェルは、笑顔で、そう言った。その笑顔の中には、褒めて欲しいという期待を込めている。


「うん。えらいえらい。やっぱ、こうして笑ってると安心する」


「……フォル、ピュオから、歓迎会の準備が終わったと」


「みゅ?寒気異界?ミディを、さむさむな別の世界に連れてくの?ぴぃーってなるの?」


 ミディリシェルは、きょとんと、首を傾げた。


「何その、ゼノンが喜びそうなの。違うから。さむさむじゃなくて、君が、ここにいるって決めてくれた祝福みたいなものかな」


「……ゼノン、起こすの。起こしてから、一緒に行くの」


「うん」


 ミディリシェルは、ゼノンの方へ向かう。


「ぷにゅぷにゅ。ゼノン、起きてー。もう、朝だよー。起きないとー、ミディがー……みゃぁーってしちゃうよー。良いのー?」


 ミディリシェルは、そう言って、ゼノンの身体を揺らした。


「……ん?……みゃん?……?……あっ……ごめん。ミディの面倒見ておこうとしてたら、寝てた」


 ゼノンが、目を覚ました。


「それは良いの。それより、寒気異界するの。早く行くの」


「俺は行ってみたいが……意味違うだろ。歓迎会だ。けど、行く前に」


 ゼノンとフォルが、互いに顔を見合わせる。こくりと頷くと、ゼノンが立ち上がった。


 ゼノンが、フォルの方へ向かい、振り返る。


 二人は、ミディリシェルの方を見て、笑顔で、手を差し伸べた。


「おかえり、ミディ」


「おかえり、僕のお姫様」


 ゼノンとフォルが、同時に、そう言った。


「そっか……ここが、今日から、ミディの……うん。ただいま。それと、これから、ずぅっと、よろしくね。ゼノン、フォル」


 ミディリシェルは、溢れてきた涙を拭って、笑顔で、そう言った。


「うん」


「ミディ、歓迎会、早く行こうぜ。今日は、アゼグにぃとノヴェにぃが、料理作ってくれてんだ。リミュねぇとピュオねぇは、装飾担当。ピュオねぇは、料理上手で良いんだが、リミュねぇは……独特なんだ」


「ふみゅ?……ゼノン、楽しそう。なんだか、ミディも楽しい……ゼノン楽しいは、ミディ楽しいなの?……なの!」


 ミディリシェルは、ゼノンと手を繋いだ。


「僕は、用があるから。終わったら行くよ」


「みゅ。ゼノン、行くの」


「ああ……ミディ、行くの」


「ふにゅ」


 ミディリシェルは、ゼノンと一緒に、部屋を出た。


      **********


「ミディ、エクリシェの事説明する。エクリシェは、最下層、下層、中層、上層、最上層と、おおまかに、五層に分かれてるんだ。ミディが、前にいた場所は、最下層。ここは、下層だ。個室、リビング、大浴場とか、必要な部屋は、各階層にあるんだ。それに、趣味部屋も。どの層にもあるが、その部屋の広さは、上の階層に行くほど、広くなるんだ。あそこも、前にいた部屋よりは広いだろ?」


「みゅ……お広いリビング?お広いの⁉︎お広いリビングで、寒気異界ー」


「だから、歓迎会だ。俺らロストくらいしか喜ばねぇ企画じゃねぇよ」


 ゼノンが、呆れた表情で、ツッコンだ。


 ミディリシェルとゼノンは、下層のリビングまで向かった。


      **********


 リビングの扉の前、ミディリシェルとゼノンは、立ち止まった。


「扉から分かる豪華さなの」


「今日は、いつも以上に豪華だな」


 豪華に彩られた扉。歓迎会のために準備したのだろう。


「ちなみに、中層から上って」


「現在改装中デス」


 ゼノンが、機械音声の真似をして、そう言った。


「ふみゅ。早く中見たいの。見たいの。でも、ゆっくりなの」


「ここの扉、お前からすれば重いからな」


 ミディリシェルは、早る気持ちを抑えて、取手へ手を伸ばした。


「ふみゃぁ」


 扉を開けると、歓迎会のために準備された、装飾で彩られた壁。それが、広く豪華そうなリビングを、より一層豪華にしている。


 大きな机の上には、大量の料理が置かれている。デザートまで。


「ミディちゃん、おかえりなさい」


「おかえりなさい、ミディ」


 リーミュナとピュオが、出迎えた。


「ふみゅ。ただいまなの。リミュねぇ、ピュオねぇ」


「ミディ、視線。せめて、話す間くらい」


「みゅ?」


 ミディリシェルの視線は、リーミュナとピュオの胸元。


「分かってるもん……ミディには、そんなの存在しないって。でも、でも、ミディも、お胸さんぼんってなりたいの」


「まだ言ってる。リミュねぇ、ピュオねぇ、もっと話してたいだろうけど、悪い。今のミディに、気にするなとか言っても聞かねぇだろうから。気にならなくなった時に。ほら、ミディ、こっち行くぞ」


「ぷみゅぅ」


 ミディリシェルは、ゼノンに、腕を引っ張られて、リーミュナとピュオから、強制的に引き離された。


「相変わらず、そこへの執着が……えっと、おかえり」


「おかえり。その姿も素敵だよ」


 ゼノンに、リーミュナとピュオから引き離されていると、アゼグとノーヴェイズが、挨拶に来た。


「ふにゃ⁉︎ただいま。アゼグにぃ、ノヴェにぃ。今日こそ、魔法具のお話を」


「そうしたい気持ちは山々だけど……俺とミディでとなると、時間が足りない」


「……それもそうなの。一日くらいは無いと、満足いくお話できないの」


 ミディリシェルもノーヴェイズも、魔法具オタク。二人で話すとなれば、一、二時間では満足しない。ミディリシェルは、ノーヴェイズの言葉に、こくりと頷いて、納得した。


「……ミディ、あっちで、ケーキ」


 ゼノンが、物欲しそうな目で、ミディリシェルの服の袖を、掴んで、ケーキを見ている。


「……ミディは、ゼノンと一緒にケーキを食べるの」


 ミディリシェルは、アゼグとノーヴェイズにそう言って、ケーキを食べに向かった。


 互いに、別のケーキを選んで、椅子に座る。


「ふみゅふみゅ。ぱくぱくいけちゃうの」


「ああ。ミディ、こっちも食べるか?」


「みゅ。ミディのもあげるの」


 ミディリシェルとゼノンは、互いに、取ってきたケーキを食べさせあった。


「ふみゅ。こっちも美味しいの」


「こっちも美味いな」


「ふみゅ」


「二人とも、邪魔するのが悪いと思える程、堪能してるね」


 ミディリシェルとゼノンが、ケーキを食べ終えた頃、フォルが声をかけた。


「みゅ。堪能中なの。フォルも一緒にどぉ?」


「遠慮しとくよ。祝いの場でこんな事を聞くのは悪いと思うんだけど、主様が、確認したい事があるんだって」


「ゼノンも良い?」


「うん」


「みゅ。ちょっと待って」


 ミディリシェルは、そう言って、立ち上がった。


「ねむねむの前に、お話聞くの」


「ねむいの?」


「ちょっと」


「じゃあ、部屋に戻って話をしよう」


「みゅ。ゼノンも行くの」


 ミディリシェルとゼノンは、フォルと一緒に、目を覚ました時にいた部屋へ戻った。


      **********


 部屋に着くと、ルーツエングとイールグが待っていた。


「こんな日に呼び出して済まない。それと、おかえり」


「おかえり。帰るのが遅すぎて、待ちくたびれていた」


「みゅ。ただいま。エルグにぃ、ルーにぃ」


 ミディリシェルは、ベッドの上に座り、何故か置いてあった、ルーツエングから貰った縫いぐるみを、ぎゅっと抱きしめた。


「早速本題に入らせてもらう。リブイン王国で見たものについてだ。あの禁呪を使われた時、何を見た?」


「ふにゅ?真っ黒いもやもや?なんかやな感じだったの」


「ゼノンは?」


「……妬みや嫉妬が生み出す色。黒く、悲しい。それと……獣?こっちは、良く見えてないが」


 ミディリシェルとゼノンが、そう答えると、フォル達が、ミディリシェル達は知らない言語で、神妙な表情で会話している。


「ゼノン、なんて言ってるか分かる?ミディ、分かんない」


「俺も、分かんない」


「これはどう見える?」


 フォルが、そう問うと、ルーツエングが、魔法を使った。


「これは……きらきらなの」


「……安らぎの色」


 ミディリシェルとゼノンは、それぞれ見えたものを、率直に言った。

 

「これってなんなの?」


「一応、禁呪指定されている魔法。精神を安定させる魔法だけど、使い方によっては、人を操る事も可能だから」


「みゅ?なんで、そんな魔法を使うの?」


「君らが、現時点でどれだけ視る事ができるかの確認。視え方もついでに。前との変化がないか」


「そうなの?ミディ達は、フォル達の期待に応えられたの?」


 ミディリシェルは、左手で拳を作り、口を隠して、そう問いた。

 フォルが、こくりと頷く。


「期待以上。でも、視る事ができても、それにばかりたよては駄目だよ。視る事ができても、知識が無ければ、それに対処できない。そんな状況が、いつ起きても不思議じゃない。特に、ゼノン。君は、もっと知識をつけておいた方が良い」


「ふぇ⁉︎」


 フォルの言葉に、ミディリシェルは、目を見開いた。


「ミディじゃねぇのか?」


 ゼノンが、そう問うと、ミディリシェルは、こくこく

 頷いた。


「ゼノンだよ。ミディには必要無い。その意味は、いずれ分かるんじゃないかな。ミディの事を知ろうとしていけば」


「ふにゅ?ミディも意味分かってないよ?ミディ、禁呪とか詳しくないよ?魔法学は得意だけど」


「得意不得意の問題じゃないよ。それを知る事ができるかできないか。もう遅いし、眠いみたいだから、おやすみ。また明日」


「ふみゅ?ふにゅ」


 フォル達が、部屋を出た。


 残されたミディリシェルとゼノンは、言葉の意味を理解できず、互いに顔を見合わせて、きょとんと首を傾げた。

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