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一番星の運命

作者: 8


昔、一番星のカケラから天の使いがうまれました。

その使いは神々の始祖である絶対神が自ら創り出した唯一無二の存在でした。

絶対神は長らく姿を見せておらず、その使いだけが会うことを許されていて、ほとんどの神々はその使いに友好的でした。

けれど中にはその子を妬む者もおりました。


「我らは神なのだ。お前とは違う。」

「あの方が創り出したとて所詮は使いだろう。」

「神でもない使いごときが、気安く近づくな。」

「神である我らがあの方に会えぬのになぜお前が会えるのだ。」


そんな言葉を浴びせられることもしばしば。

他の神の使いたちも近づこうとはしませんでした。


「私達はあなたとは違うから。」

「畏れ多くて一緒になんていれないよ。」

「神様たちに目をつけられたくないから。」

「一緒にいて、君に何かあったら大変だろう?」

「君が普通の使いだったらなぁ。」


結局いつもひとりぼっち。

次第に使いは感情を無くしていきました。

尊敬、畏怖、憎悪を向けられる日々に嫌気が差して全部諦めたほうが楽であると気づいたからです。

絶対神は自ら動くと言ってくれましたが、使いは提案を拒否。

何をしても変わることはないと悟ったからです。


『ならば、他の世界を見てきなさい。』

「え?」


絶対神は使いに、特別な翼と自分の力の一部を分け与えました。


『これで其方はどこの世界でも行けるようになった。色々な世界で色々な者たちと出会っておいで。』

「ありがとう!」


使いは目を輝かせながら天界を出て行きました。

ときには魔界、ときには人間界、ときには異界、様々な世界に行き…そして、運命の出会いが。


「〜♪〜〜♪〜」

「うわー!!どいてー!!!」


ゴチンッ


「「痛ぁ〜」」


黒髪に赤い瞳を持つ悪魔です。


「わ!天使だ!初めて見た!」

「どうして空からふってきたの?」

「飛んでたら君の歌が聴こえて。聴き入ってたら鳥に体当たりされた!人間界の動物ってなんで悪魔を認識できるんだ?」

「ふふっ!変な悪魔」

「ねぇ!もっと歌声を聴かせてよ!」

「ふふっ…♪〜〜♪」


悪魔との時間は心地よくて、楽しくて。

自分たちのこと、天界のこと、魔界のこと、色々な話をしながら時は流れ、いつしかお互いに特別な感情を抱くようになりました。


「やっぱり、この気持ちに嘘はつけないよ。」

「悪魔と天使が惹かれ合うなんて前代未聞かな。」

「それでも、諦められない。」

「うん。」

「「愛してる」」


ーゴロゴロゴロゴロッーピシャーンッー


2人が愛を誓って、口付けをした瞬間でした。

雷が落ち、気づけば使いは鎖で縛られた状態で天界にいました。


「ど…して…」

「汚らわしい!悪魔と関係を持つなんて!」

「貴様は禁忌を犯したのだ!」

「天界の汚点だわ!」

「今すぐこの者を捉えて牢獄へ!」


そこには使いを疎ましく思っていた神々がいました。ずっと監視されていたのです。


「ねぇ、悪魔は?」

「知らんな。今頃魔界で罰でも受けているんじゃないか?」

「悪魔の心配より、自分の心配をしたらどうだ。」

「もとよりお前のことは気に食わなかったのだ。」

「あの方に特別扱いされているからと調子にのりおって。」


ケタケタと馬鹿にしながら笑う神々。


「そんなんだから絶対神に見放されるんだよ」


バキンッと鎖を千切り、大きな翼を広げて羽ばたきます。


「よく聞け神々よ。今この瞬間を持ってお前達は一生絶対神と関わることは出来ない。」

「何をバカなことをっ」

「そんなことお前に決める権限「ないとでも?」

「なっ!?」

「印をつけた。その印は決して消えることはない。絶対神に関わる全てのことが出来なくなる。口に出そうとしても塞がれ、激痛が走ることだろう。」

「ぐっ…んむっ…んぐっ」

「ゔわぁぁあっ…頭がっ!割れる!」

「ぐぁぁっ!く、苦しい!」

「お前達は絶対神がなぜ姿を現さなくなったのか考えたことはあるか?なぜワタシがうまれたのか考えたことはあるか?」

「なにをっ…ゔっ…ぁぁあっ」

「嫉妬や羨望からお前たちが争い始めたからだよ。絶対神は平等だ。どの神に対しても愛しい我が子だと言っていた。けれどいつからか勝手に争い始めてしまったと嘆いていた。」

「ゔっ…そんなっ…」

「自分が皆の前にいると争いが絶えないからと、代わりとして創り出したのがワタシだった。それなのにお前たちは同じことを繰り返し、攻撃してきた。愛する者を巻き込んで。」

「いやっ…絶対神様っ…ゔぁぁあっ」

「お前たちは忘れてはならなかった。ワタシが絶対神の唯一無二であることを。永遠の苦痛と絶望で自分達のしたことをさぞ後悔するといい。」

「くっ…うぐぁぁあっ」


苦しんでいる神々を横目に天使は向かいます、愛する者のもとへ。


『行っておいで。我が愛し子よ。』

「うん!」


魔界についた使いの目に飛び込んできたのは磔にされた愛しい者の姿。


「なんてことをっ…」

「ははっ…こんなとこまで…きてくれた」

「っ当たり前だよ!まってて、今降ろすから!」


悪魔は使いに倒れ込みます。


「ははっ…そんなに泣かないでよ。」

「だって…あなたは…もう…。」

「うん。わかってる。」


悪魔の魂は消滅しかかっていました。


「最後に…君に会えてよかった。」

「ゔっ…ワタシもあなたに出会えて良かった。あなたのお陰で孤独じゃ無かった。あなたがいたからっ…ゔぅっ…」

「そんなに泣かないで。別れるのが惜しくなる。」

「もしもまた出会えたらっ…もう一度愛してくれる?」

「ふっ…絶対会いに行くから任せて。もう一度愛し合おう。」

「うんっ!」

「最後に笑顔を見せて。あの歌を聴かせて。」

「っ…〜♪〜〜♪♪〜〜♪〜♪〜」


悪魔はとても穏やかな表情をしながら使いの腕に抱かれて消えて行きました。


「ゔっ…ゔぅっ…ゔわぁぁぁぁあんっ…」


泣き叫ぶ使いの声が魔界に響き渡ります。

ひとしきり泣いたあと、使いは魔王城へと突撃しました。

魔王城のあちこちを壊しながら突き進み一直線に魔王のもとへ行きました。


「やれやれ。あちこち壊しおって。」

「あんなにボロボロにした挙句、魂を消滅させるなんてやりすぎだと思うけど。」

「悪魔が天使と結ばれるなんてあってはならない禁忌だ。相応の罰だろう。」

「禁忌?誰が決めたのそんなこと。」

「誰が決めたとかではない。そもそもおかしいのだ。真逆の存在が惹かれ合うなど。」

「天使とは天界にいる神々に使える存在。悪魔とは魔界を管理する魔王に使える存在。使える相手が違うだけで真逆と決めつけるなんて。浅はかだね。」

「何を言おうとお前達が異常なのに変わりはない。異常を正常に戻しただけだ。」

「異常なのは…一体どっちだろうね」

「何?」


パァっと光り輝く使い。

その光を受け、魔界の枯れた土地には花が芽吹き木が生い茂り、淀んでいた川は澄み渡り、魔王城も埃ひとつない煌びやかな空間へと変化しました。


「これが、本来の魔界だよ。一体いつから変わってしまったのか…。」

「お前…一体…」

「さぁ思い出すんだ。君は何のために生まれた?」


使いは始祖である絶対神の創造のチカラを使い魔界を元の姿へと蘇らせたのです。


『天界と魔界どちらもなくてはならない存在ということを忘れてはならないよ。互いに手を取り合ってより良い世界を創っておくれ私の愛しい子達。』


魔王は絶対神の言葉を思い出しました。


「何故今まで忘れていたのだ…。」

「長い長い時が経ち、いつの間にか忘れてしまっていたんだよ。神々も、君も。」

「絶対神様…」

「偶然にもワタシとあの方は絶対神の願い通り手と手を取り合った。ね?禁忌なんかじゃなかった。」

「すまなかった。取り返しのつかないことを…」

「許すつもりはない。」

「当然だ。どんな罰でも受けよう。」

「本当は君を消したいところだけど絶対神の願い通りにやり直せるのは君だけだ。だから今後のことは頼んだよ。」

「あぁ。思い出させてくれたこと感謝する。」

「じゃ、サヨナラ。永遠に。」


使いは去りました。魔界からも。天界からも。

天界で生まれた魂や魔界で生まれた魂は消滅すると二度と元いた世界には戻れないからです。

かといって悪魔が天使に、天使が悪魔に生まれ変わることもありません。

つまり、もし生まれ変わるとしたら別の世界。


「「っ!!」」


2人が初めて出会った世界。


『これはせめてもの贈り物だ』


絶対神の声が使いの耳にこだまします。


「あぁ、そうだった。」

「…あの?」

「産まれてからずっと、何かを探してた。」

「…」

「君だったんだ。」

「っ!?…まさかっ…」

「絶対会いに行くから任せてって言っただろう?」


使いは泣きながら抱きつきました。

絶対神は転生した悪魔に記憶を授けてくれたのです。


「ひとりにしてごめん。遅くなった。」

「ううん、いいの。生きててくれればそれで。」

「愛してる。俺の天使。」

「愛してる。ワタシの悪魔。」


口付けを交わしても当然今度は何もおきません。

そう、やっと、2人は結ばれたのです。

もう何の邪魔も入りません。

2人は過ぎていく日々を大切に過ごしました。

喧嘩も仲直りも何度もして、お別れもしました。

けれどその後も悪魔が転生する度に使いは一生を添い遂げ続けて、天界に戻ることはありませんでした。



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