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手折られる命 上

 ロイピン州州都に駐屯する憲兵たちは砲撃音で叩き起こされた。木造の屋根は簡単に穴が開き、雑魚寝していた兵士たちに少なからぬ被害が出る。

 憲兵、などと言っても彼らの役割は国民に睨みを利かせること。弱いものいじめの経験はあっても敵と戦ったことはない。

 蜂の巣をつついたようなパニックに陥る。唯一まともに動けたのは連隊長だけだ。

 連隊長は周囲の者に偵察を命じる。帝国軍人と思しき兵たちが武器庫の周辺に集まっているとのこと。

「武器庫だと!? こざかしい、お前ら、さっさと並べ! 害虫を駆除しろ!」

 激しい言葉を浴びせられ、憲兵たちは慌てて着替える。手近にあった拳銃だけで武器庫に向かった。当然、小銃装備の帝国軍には射程も射撃速度も劣る。拳銃弾の届かない距離で、一方的に射撃される。猛烈な射撃をくらい、もと来た方向へ逃げかえる。

 それでも彼等にはマンパワーがあった。連隊長は逃げてきた部下たちを叱咤し、一丸となっての攻撃を命じた。

 いくら奇襲が成功したとはいえ、帝国軍の規模は少ない。一個連隊で押しつぶせば簡単に勝てる。

 一度体制を整え、六百人の憲兵たちは武器庫に殺到した。敵の射撃間隔はどんどん開いてきている。おそらく弾は残り少ない。憲兵たちは一層勢いをつけ、武器庫へ取りついた。

 そして、大爆発。

 武器庫にあった火薬が誘爆し、衝撃波が隊列を吹き飛ばし、兵の大部分が戦闘不能になる。

 部隊としての機能は完全に麻痺。そこへリーウェイ長官からの連絡が入った。庁舎と屋敷が襲われているから至急駆けつけるように、と。

 連隊長は思う。悪夢だ、と。


 最短距離にある憲兵の駐屯地は潰した。立て直すには時間がかかる。

 目標となる屋敷周辺の道路は小銃を向けて封鎖。建物を孤立化し、マヤ含む主力が屋敷へと接近。身を隠せるギリギリのところで止まる。

「メイ、私のそばから離れるなよ? 声は出さずに、立ち止まったらすぐ伏せろ。あと、これは護身用だ」

 拳銃を手渡す。メイが受け取ると、いくつか注意事項を付け加えて屋敷へと視線を戻した。単眼鏡を使って観察する。

マヤが率いる部隊は一個小隊、24人。


今回、マヤの使える兵力は定員われした一個大隊の百人。それを四つの小隊に分けていた。マヤの率いる一小隊が建物にエントリーする。

迫撃砲小隊は兵舎への砲撃。

二小隊の任務は兵舎への潜入。武器を盗んで爆弾を設置し、敵を引き付けた上で離脱。爆破。

三小隊の任務が建物周辺の道路を封鎖。


 マヤは部下たちに命じ、一個分隊の八名を建物の反対側に迂回させる。残る二個分隊は直接指揮下に置いて扉のそばで潜伏。懐中時計を見て時間を図り、建物の両側から同時に扉を蹴破った。

 マヤの正面には三人の官僚。即座に小銃が火を吹き、三人を三発の弾丸で殺す。

 その後も戦闘は続く。メイが呆気に取られているうちに廊下の制圧が終了。近くの部屋に入る。二人が扉のそばに立って廊下に銃を向けた。残りのメンバーは部屋の中央に集まる。

「一分隊はこのまま廊下を南に向かう。二分隊は退路の確保」

 手短に指示を終わらせると、部屋を出た。分隊ごとに分かれ、さらに二人一組になって部屋を順次制圧していく。

 目にも止まらぬ速さでイェンアンの屋敷が帝国軍の支配下に落ちていく。相手は文官とはいえ、反撃の隙も与えない。一切の無駄なく、全員が連携し、一方的な戦いを進める。

「あの男!」

 奥の部屋に入ると、メイが指差す。リーウェイだ。

 兵たちは心得たもので、リーウェイ以外を射殺。リーウェイは銃で殴って戦意を失わせ、拘束した。

 メイはリーウェイに詰め寄る。

「ランファンは! ランファンはどこ!?」

「…は、はは、ははははは! 過去の遺物どもめが! 貴様らの時代は終わったんだよ!」

「うるさい!」

 メイが殴ると、リーウェイの鼻から一筋の血が流れる。

「ガキが!」

「どいてろ、メイ。お前には向いてないよ」

「なんだ、農民と害虫が結びついたのか!? それで勝てるつもりっ!?」

 最後まで言わせず、マヤはリーウェイの顔を蹴り飛ばす。

 縛られた体は簡単に吹き飛び、壁に当たって床に落ちる。マヤはさらに小銃でリーウェイを殴り、骨を砕き、意思を折る。

「副長官どの。教えてもらいたいことが二つある」

「だ、……だま、れ。私に命令す……!」

 小銃で顔面を殴った。歯が砕ける。

 もう一度同じ場所を殴ろうとすると、リーウェイは咄嗟に両手で顔を守った。マヤはがら空きになった腹を蹴る。

「協力してくれるかな」

 リーウェイは怯えながらうなずいた。

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