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戦慄き声

作者: 雉白書屋

四月三日 

【都内。体調不良を訴える者が多数。集団パニックか】


四月七日 

【体調不良を訴える者の数さらに増え、延べ二百人を超える】


四月十日 

【謎の体調不良による入院者、三百人超】


四月十二日 

【都内だけでなく、全国に広まる集団パニック。医師は原因不明に頭を抱える】


四月十六日 

【頭の中で声がすると訴える入院患者が多数。精神病の一種と考えられるが、数が多く不明瞭。現代人の病みか】


四月二十日

【頭の中の声。聞こえると主張する者が増加。国民の間に広がる不安と闇】


四月二十三日

【自殺者が急増。原因は頭の中の声か。依然として止むことなく聞こえ始める者及び自殺者が全国各地で増加傾向にあり】


四月二十五日

【頭の中の声。人によって大きさと聞き取れる言葉にバラつきあり。内容は依然として不明。咀嚼音のようなものが聞こえたとも意見あり】


四月三十日

【男女八名がビルの屋上から転落死。インターネットサイトを通じて知り合い、集団自殺を決行したか】


五月三日

【都内、『声』による入院者が千人を超える。全国合わせれば四千人超か】

 

五月十日

【入院患者の自殺が相次ぐ。未だ四六時中流れ続ける『声』を苦にしてか】


五月十三日

【都内病院。院長逮捕。重度の患者の頭に電気を流し、死亡させた疑い。院長は治療のためだと主張】


五月十六日

【未だ止まない『声』により不眠症が増加。睡眠薬が多数売り切れ。スタンガンの使用は控え、またパニックを起こさないように政府や官房長官から再三のお願い】


五月十八日

【空を見上げ、突然、男が叫び出しそれに誘発されパニックが起き将棋倒し。死傷者多数。なお、空には何も確認されなかった】


五月二十日

【虫。そう聞こえたという意見が多数。これは虫たちによる人類への報復、あるいは宣戦布告か】


五月二十五日

【虫狩りが相次ぐ。虫を取り扱うペットショップの襲撃事件も発生】


五月三十日

【ポカポカゲーム流行。お互いの頭をハンマーで叩き合う遊びが若年層の中でブームに。死亡者が多数。やめるように各所から注意を呼びかけ】


六月六日

【梅雨に入り、弱まったのと意見も、未だ止まない頭の中の『声』。一寸の虫にも五分の魂をスローガンに、虫を大事にと市民団体が街頭で呼びかけ】


六月九日

【水面下で新興宗教が相次いで発足。その背景に不安あり】


六月十四日 

【デモ隊が虫を大事にと町を練り歩くも、うるさいとの理由で襲撃に遭う。襲撃グループとデモ隊双方に死傷者多数】


六月十八日

【集中力と学力が低下。やはり原因は謎の『声』とされ、国民は精神安定剤を常備。政府が配給も検討】


六月二十二日

【有名歌手が襲撃に遭う。声が不快とのこと。未だ原因不明の『声』に苛立つ国民。依然として入院者及び自殺者の数は減らず】


六月二十四日

【国外へ脱出する者が増加。各国から調査隊が派遣されるも、依然として内容は不明】


六月二十八日

【新たな声明か。謎の『声』から今回新たに聞き取ることができた単語は『涎』『食べる』。これは人類を食料とする旨か。虫たちの声ではない可能性も。これを受け、この現象が発生した当初から根強い別の説が再び台頭】



 ――七月三日

  

「きょ、今日までの記事を、こ、こうして大まかにまとめたわけですが、しゃ、社長」


「……ふーむ」


「こ、これ以外の、あ、空いた日付も、自殺者が、あ、あ一家心中、ひひひ、ひっ、たくさん」


「ああ……」


「こ、この現象、や、やはり、わ、我々のせ、せいでは……い、色々と、他社より先んじようと、あ、焦ったせいででで……」


「おい、めったなことを口にするんじゃないよ。それに、だとしたら変だろう。このことを知っているうちの者まで死んだじゃないか」


「りょ、良心の呵責からですよ! 社長が口止めし、耐えかねて、それに、口封じされた者も……」


「おい」


「す、すみません」


「……ふぅー、こうしよう。これは宇宙人の仕業だ」


「は、は、はぁ? しゃ、社長まではははは! おかしく、あはははは!」


「馬鹿、違う。ちょっと考えればわかるだろう。最近、注目されている宇宙人説に合わせるんだよ」


「あ、あ、そうか。で、ではCMソングを考えますね!」


「お前、すっかりアホになったな……。CMでも歌でもなくていいんだ。メッセージでな。地球を侵略し、お前たち家畜同然に扱うとか、宇宙人からの新たなメッセージに見せかけるんだ。それでだ、最後に地球に着くのは五百年後だとでも言っておいて、ズコー! 安心というわけだ。どうせ未来のことまで考えはしないだろう。これまでの試行錯誤もあり、今はもう鮮明にできるんだろう? 不完全な状態でワンクール流してしまったが、はあ、やれやれ。運よくわが社の商品や名前の部分が伝わらなくよかった」


「ははははい! で、で、ではひひ、うひ、こここんちゅーうひひ」


「はぁ、もう駄目だな。テレビの要領で電波で音声だけを人間の脳へ直接送るのは良いアイディアだと思ったのだが、やはり技術面がなぁ、クソッ。いや、こいつの気が狂ったのは肝が小さいからか」


「あは、あはははは!『こんちゅー、こんちゅー、おいしいー! こんちゅーしょく! むししないでね、えいようまんてんー! たべようたべよう! よだれがでちゃう!』あは、あははははははは!」

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