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ハルさんは、男だ

——翌日、オレはアーマーを着たまま寝ていたことに気づき、慌てて起きる。


周りにはまだ誰もいない、よかった。


「……帰ろう」


オレは少ない魔力で安全飛行で帰った。


—オレ帝国にて—


昨日の一件でとりあえず修正箇所は大体わかった。

ただやはり残る問題は、魔力だ。


「どうするかなぁ?」


「悩んでるみたいだねー」


「……どうやって入ってきたんだ?クソ女神!」


オレはため息をつきながら、後ろから話しかける声で女神と分かってしまう自分が嫌だ。


「どうやっても何も女神だよ、どこからでも入れるに決まってんじゃん!」


「……不法侵入だぞ」


女神は知らないと言わんばかりの顔をする。

普通に地下に入られると困るんだなぁ。

誰かに見られでもしたら面倒なことになる。


「それより魔力、使い切ったんでしょ?補充はできた?」


「ああ、魔石を何個も錬成して合成したら補充はできたが、今後こういうのが続くと長期の戦闘はやはり難しくなってくるなぁ」


オレが今後の戦闘に苦戦を強いられると思い肩を落として項垂れてると、女神は不敵な笑みを浮かべて笑った。


「そう思って、ある人を連れてきました!」


女神は自慢げに威張りながら言う。なんか腹立ってきたな。……あとで殴るか。


「ねぇ、ちょっと今ひどいこと考えてなかった?」


「いいや、考えてないよ」


オレはなんのことですかという感じでニンマリ笑顔で言う。


「まあ、いいわ。入ってきていいわよ!」


女神は地下の入り口に向かって大声で叫んだ。


一体誰が来るのやら、女神の顔見知りでもくるのか、それとも女神の友達が来るのか。

まあ、期待はしないでおこう。魔力補充だけ

してもらえればいいか。


そう思いながら女神が言うある人が入ってきた。


だがその瞬間オレは石のように固まった。


ある人とは美少女男の娘こと、ハルさんだった。


「えええええええええええっっ!!!!!」


オレの驚きの声は遥か彼方にまで轟いた。


「…な、なんで、ハルさんがここに?」


「……えっ!なんでボクの名前を知ってるんですか?」


あ、やばい。そういやオレは道具屋にいた頃に名前を呼ばれてたから覚えてたけど、ハルさんからすれば不思議に思うのも無理はない。


「あ、いや、その……」


オレはテンパっていた。いやだって急に来るから心の準備も何もしてないんだ。テンパるのは当然だ。

横目でチラッと女神を見るとオレをクスクスと笑っていた。


…くっそ!この女神、後で覚えてろよ!


「まあ、と、とりあえず座りましょうよ!」


「……あ、はい、ありがとうございます」


オレはとりあえず平然を装う。

ハルさんは優しく微笑んでくれた。


「あ、そういや、名前言ってなかったですね。

オレはトビって言います。よろしく!」


「あ、ハル・グランテと言います。こちらこそよろしくね!」


と言ったあとにニコッと笑う。

その笑顔にオレの胸はドキドキは最高潮にハネ上がる。


…ヤバイ!めっちゃ可愛い!ホントにこれでは男か……?


オレはチラッとハルさんを見る。

ハルさんは雪のように真っ白な肌を赤く染めてまるで緊張しているように見える。


「「あ、あの!」」


話したいことが山ほどあるからか被ってしまった。


「あ、ごめん、さきにどうぞ……」


ハルさんは慌ててオレに譲ってくれる。


「あ、では、なぜここへ?」


「…あ、それはその、エミリアさんに呼ばれてきたんだよ……?」


その言葉にオレは後ろでオレが造った武器を眺めている女神を睨みつける。


女神はオレの視線に気づいて振りかえると、

舌をペロっと出して、ごめんねと口パクでいう。


……アイツ、ふざけんなよ!何がエミリアだ、このクソ野郎……。


「…ごめん、迷惑、だったよね?」


ハルさんはいつも申し訳なさそうにする。

どっかの不法侵入の女神より可愛い。


「いえ、そんなことないですよ……」


そうだ、ハルさんが謝ることはないんだ、

本来ならあの女神が謝るべきなんだ。


「それでね、お兄……、トビさん、を手伝ってあげてって……」


ハルさんはモジモジしながら上目遣いでオレを見る。

これは可愛いすぎる、ホントに、男か?


「ああ、そうなんですねぇ……」


…来てくれるのはありがたいが、これはどう説明すべきなんだ?


…ハルさんの魔力ください、いやド直球すぎるな、どう切り出すべきだ…?

…やっぱり、今は帰ってもらうか?…いやそれでは来てくれたのに申し訳ない。


オレが色々と考えを巡らせていると、ハルさんの視線を感じる、その視線の先にはオレが飲んでるコーヒーが目に入った。


「あ、喉渇きましたか…?」


「あ、いえ、その、それが気になって…」


やはりコーヒーが気になってたのか。


「よかったら、飲みますか?」


「…えっ!?…いいの!」


ハルさんは大きくつぶらな目をさらに大きくしてキラキラとさせる。


「……はい、いいですよ」


オレはそう言って立ち上がり、別のコップに

ポットに入ったコーヒーを注ぐ。


「ハルさん、砂糖は入れますか?」


「……う、うん!お願いします」


オレは下の棚から砂糖を取り出してコーヒーの中に入れてかき混ぜる。


「どうぞ……」


「ありがとうございます……」


ハルさんはカップを受け取り一口飲む。


「……少し苦い、ですね」


「あ、すいません!砂糖足りなかったですか?」


「……い、いえ、大丈夫です!」


ハルさんはいつ見ても表情がよく変化して見てると癒される。


「……これはなんていう飲み物なんですか?」


「あ、これは、コーヒーって言います」


「……コーヒー」


ハルさんはそう呟きながら、コーヒーを真剣な眼差しで見る。

その後に周りをキョロキョロと見ている。

するとハルさんは今度は別の方向を真剣な眼差しで見始める。


オレはその視線の先を見ると、魔道具や武器が置かれた場所を見てた。


と、ここでオレはあることに気づいた。

ハルさんが急に来たことによって焦り、テンパっていたため忘れてしまってた。


……ヤバイ!そういや隠すの忘れてたぁ。


ハルさんを見ると、ずっと一点を見つめたまま動かない。


「気になりますか……?」


「あ、いえ、その、……はい」


ハルさんはそう言ながら恥ずかしそうに俯く。

…まったく、こういう純粋さをあの女神にも分かってほしいもんだな……

女神は今は飽きたのか、修理道具をつまんなさそうに見ている。


「どうぞ、こちらへ」


オレが案内するとハルさんはオレの後ろを

ついてくる。


「これは魔石で造った魔道具です」

オレはとある魔道具を手に取ってハルさんに見せる、それはポットだ。


ハルさんは興味津々でポットを物珍しそうに

眺める。


「これはどうやって使うの?」


「それは水をこの容器に入れて火の魔石で容器を熱するんですよ。そしたら、お湯になり、熱いコーヒーが飲めれるんです」


オレが色々な魔道具を説明しているうちにハルさんは真剣にオレの説明を聞いてくれて反応も表情豊かに反応してくれる。


そう思ってるうちにオレは女神の言っていたことを思い出す。


ハルさんは魔女の生まれ変わり、その言葉が頭の中を駆け巡る。


もしそうだとすると、それを知ったときハルさんは自分を受け入れられるのか?

残酷な事実かもしれない、そうなったときに

誰もがハルさんを恐れてしまうのか?


「…あ、そういえばハルさんたちのパーティーは今どうしてるんですか?」


オレはふとそれが気になっていた。

するとハルさんは急に顔色が曇ってしまった。


……何か、あったのか?


すると女神に腕を引っ張られたので、振り返ると女神が手招きをしていた。オレが耳を近づけると


「実はあの子のパーティーは今四人のうち二人が重症を負っているの」


「……えっ!?なんで?」


オレは驚いた。

一体何があったのか?


「ジャイアントイノシシにやられたの…」


その言葉にオレは呆然とするしかなかった。

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