ライラの過去
ゴールドアーマーは異世界にとってが異色の存在である。
「どういうことなんだ? 君は魔族…なのか?」
ライラは目の前の光景に驚きで混乱してしまい、クールな冷静さを失っていた。
それもそのはず、ライラの目の前にいるのは獣人の姿から変身して頭からツノが生え、魔族となった姿のシャルルだったからだ。
「この姿では、初めましてですかね? 自己紹介しておきますね、私はフォルティス。 どうです? 驚きました?」
「いつからだ、いつから…?」
「いつからも何も、覚えてないんですか? 最初の魔族の襲来を」
その瞬間、ライラの脳裏に浮かんできたのは、街や家が炎に焼かれ、人々が泣き叫ぶ声が聞こえてくる光景。
魔王が率いてやってきた魔族の軍勢。
「あの時から……君は」
「ああ、もしかして思い出したくない記憶でしたぁ? まあ、仕方ないですもんねー。たくさん獣たちを殺しちゃったから」
シャルルの軽く吐いた言葉にライラの表情は怒りと憎しみの感情が露わになっていく。
ライラの脳裏にはその時の惨状の断片が次々に浮かんでくる。
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ボクはセルフォード男爵家の長女として生まれた。
男爵家の領地といってもそこまで広いわけではない。
地方の田舎領主だし、経営もかなり不安定な状態だった。
それでもボクは楽しくて、幸せだった。
物心つく前から魔力の量が人より多かったボクは周りの人から賞賛や褒め称える声があった。
「素晴らしいですわ、ライラ様」
「その魔力は神からの奇跡に値する加護です」
その言葉は正義に憧れる子供ながらのボクにとって嬉しかった。
そして、10代の年に上がると父から私に対して婚約があると言われた。
相手は隣の領地を経営している田舎領主の息子で父同士の仲が良かったということもあり、私たちを結婚させようということのなったのだ。
初めて恋をしたのは後にも先にもないだろう。
最初はお互いの距離感がつかめず、話すこともく、ずっと黙って俯いているだけだった。
それが数日も続いた、彼もまた隣に座ってただ黙っているだけだった。
ボクはてっきり嫌われてしまったと思い込んでいた。
「あ、あの、ライラ! 一緒にお茶しないか?」
彼が突然話しかけてきたのにはびっくりした。
顔を真っ赤にさせて言葉に詰まりながらも彼は一生懸命だった。
もちろん断る理由はなかった、むしろとても嬉しかった。
それから黙ってばかりだったボクたちの関係は180度変わった。今ではお互いのこと話し合っていた。
そんな時間がとても心地よかった。
…だけどそんな平和な街に突如現れた魔王率いる魔族たちが殺意むき出しで人々に襲いかかってきた。
獣人たちに攻撃していく魔族たちは一方的な蹂躙をしていく。
その時の惨状は嫌でも鮮明に記憶にこびりついている。私はまだ小さかった妹を抱えて、逃げていた。
「いや、助けて!」
「助けてくれ!」
周りから人々の泣き叫ぶ声や耳に痛むような悲鳴、助けを求める悲痛の声が聞こえてくる中、無我夢中で逃げて、逃げて、逃げ回った。
妹と一緒に友人が住む街、その街は多くの獣人たちが住んでいたのに、綺麗だった街並みも見渡せば火の海と化していた。
どうしようもなかった、私では魔族たちの攻撃は防げないし、守れないと思った。
だから魔族たちに見つからないように物陰に隠れて、声を押し殺して、聞こえてくる悲鳴を遮るために耳を塞ぎ、ただじっと魔族たちが去るのを待っていた。
どれくらいの時が経ったのだろうか、私はあろうことか眠っていた。
目を覚ました時、街は異様な静けさになっていた。
隠れていた物陰から出て街を見ると、そこに広がっていたのは瓦礫の山に覆われた街と埋め尽くされた死体の山だった。
平和で和やかで身分など関係なく、笑い合っている街の人たちが、私が好きだった街はたった数時間で破壊された。
絶望感と喪失感の中、私は街をひたすら彷徨っていた。
歩いて歩いてもどこを見渡しても、瓦礫に死体の山ばかり、そのたびに心が絶望に満たされていく。
そして私は思いたくもない、見たくもない現実を見せつけられてしまった。
それが血にまみれた友人の死体だった。
大きな爪で身体は切り裂かれていて、地面には多くの血が流れていた。
大切な街が、人が、友人が目を覆いたくなるほどだった。
そんな光景を見てボクはただ泣くだけしかできなかった。
ポロポロと意思とは関係なく、涙は止まることなく流れていった。
そのあと、ボクと妹は援軍に駆けつけた父たちに保護された。
言葉にならないほどの絶望と同時に復讐心に苛まれていく。涙が溢れ落ちていく中、私は唇を噛み締めて固く決心した。
…魔族を全て、殺してやる
それからの私はただただ魔族たちを殲滅するためだけに復讐心にかられるまま自分の能力を磨き続けた。
いつか来る時のために————
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