違和感
突如現れた魔族の大群にアルケミア村の獣人たちは逃げ惑いながら悲鳴や泣き声が憩えてくる。
ライラは急いで村に戻ったもの時すでに遅く、村は悲惨な状況に陥っていた。
「…そんな……壊されたのか」
この村はライラが生成した結界に守られているおかげで魔物やその他の危険なものに襲われる心配はないと思っていたが魔族の大群によって破壊されたのだ。
こうなってしまってはただ逃げるだけでは助からない状況になってしまった。
逃げている獣人たちを弄ぶように攻撃している魔族の大群。
つまり、この状況を打破するためには………。
「みんな、早く逃げろ!」
ライラは考える暇もなく逃げ遅れている獣人たちを守るために助けにはいる。
魔族たちに水の魔法で攻撃して獣人たちから遠ざける。
「みこ様………」
「みこ様だ……!」
「何をしているんだ!! 早く立て、逃げるんだ!」
ライラに逃げるように指示されて獣人たちはゆっくりと立ち上がり逃げていく。
辺りを見回して他に逃げ遅れている獣人たちがいないか確認してからライラは魔族の大群を睨みつける。
数では圧倒的に勝る魔族たちはどこか余裕を感じるように思える。
その証拠が魔族たちが不気味に浮かべる不敵な笑みが何よりもそう言っている。
「なにを………何を笑ってるんだぁぁぁぁぁっ!!!!!」
ライラは魔族たちの笑みに睨みつけてた表情がよりいっそう険しくなると叫びながら無数の水の竜巻を発生させた。
怒りまかせに水の竜巻を魔族たちに向けて攻撃をする。
魔族の大群を蹴散らすように竜巻はやがて交わり大きくなっていき魔族たちを巻き込んでいくとやがて消えた。
かなりの数が減らせれたと思っていたがまた別の大群が押し寄せてくる。
「くそっ……まだいるのか」
ライラの顔に苦痛の表情が現れる。
…この数では押し切られるかもしれない、だったら…!
ライラは姿勢を正して深く呼吸をして目を閉じた。
両手を胸の前で合わせると静かに囁くように何かを唱える。
数秒間閉じていた目を大きく見開くと瞳の色が輝き出すと同時にライラの身体全体を覆うようなオーラが溢れて出してくる。
「水の聖にひれ伏せ……はぁっ!!」
胸の前に構えていた両手を押し出すと両手から龍の顔の形をした水が何十本と出てくると空中に浮かんでいる魔族たちに噛み付く。
すると魔族たちは先ほどまで下卑た笑い声をしていたが、今は苦しみながら消えていっている。
ライラのこの攻撃はかなり魔族の大群の数を減らしていた。
「なんだ? こんなものか……」
こんなにもあっけなくやられる魔族にライラの中で勝機が見えてきたが同時に腑に落ちない部分もあった。
その理由は魔族たちの違和感のある行動だった。
攻撃はしてこないがかといって防御もするわけもない。
まるでライラにやられるためだけにやってきたように思えた。
…一体なにを考えているんだ?
ライラの不安は大きくなるばかりだった。
——それとは別の場所で魔族と戦っている者がいた。
「左カラ魔族ガ数体、攻撃シテキマス」
「知ってる…よっと!」
モニカの補助のもとでトビは左から攻撃してくる魔族に炎弾を打ち込み撃破する。
「サスガデスネ。意外ニ性能ガイイデス」
「意外ってのは余計だな…」
モニカに上から目線で言われて少しイラつきながらも戦闘の手を緩めない。
すぐ目の前には数十匹にも及ぶ魔族がトビに威嚇している。
所詮は人の形をした化け物と言うべきなのだろう。
それに俺が一番気にしているのは魔石の持続時間のほうも気になってくる。
魔族と戦いながら魔石も気にしなきゃいけないとは…。
「これじゃ、どれくらい持つか……」
「モシカシテ魔石ノ使用時間ヲ気二サレテマスカ?」
「ああ、まあな……」
「ソレデシタラ問題ハゴザイマセン」
「どういうことだ?」
トビが疑問に思うとモニカはその理由について話し始めた。
「私ガコノ魔石ト融合シテカラ、トビ様ノ魔石ヲ少シバカリ修正シマシタ」
「それでどうして大丈夫だってことになるんだ?」
「ハァ………」
「おい、今ため息ついただろ!?」
あからさまに俺の理解力のなさに呆れているモニカに申し訳ない気持ちもあるが同じくバカにされてイラついてしまった。
「私ハ魔石細胞デス。トビ様ノ魔石ハ少々損傷ヲ起コシテイマシタノデ本来ノ能力ヲ発揮シテイマセンデシタ」
「本来の能力…?」
「ハイ。ソコデ私ガ一部ノ細胞デトビ様ノ魔石持続時間ヲ長時間二スルコトニ成功シマシタ。さらに性能、威力トモニアップシマシタ」
「お前、そんなことできるのか…?」
「勿論、『人造魔石細胞』デスカラ」
という決めセリフを毎回言っているモニカはその言葉が気に入っているのだろうか?
そんなことは置いといて今は魔族の攻撃を退けなければならない。
「なぁ、モニカ。この大群を一気に片付ける方法はあるか?」
「ハイ。アリマスヨ」
「どれくらいの魔力が必要なんだ?」
「魔力使用推定ハ50パーセント。魔力残ハ468、デス」
「そうか。なら……頼む!」
俺はモニカに迷わずに実行するように命令する。
すると俺は両方の拳を突き合わせると炎が灯す。
目の前の画面にはモニカが自動で装置を設定して魔族の大群を目視できるようにしてくれた。
「さぁ、やるか!」
静かに闘争心を心の中で燃やしていき、一気に攻撃を仕掛けていく。
飛行態勢になるとフルスピードで魔族の大群に臆せずに突っ込みながら目の前の画面に表示される大群に一匹ずつ的確に狙いを定めて炎弾を連続で発射していく。
「後方ニ敵を察知、後方炎弾発射シマス」
俺が前方の敵で後ろが見えなくてもモニカが敵感知で自動でアーマーの背中から炎弾を発射してくれる。
次々と一匹ずつ撃破していくと先まで無数の敵に囲まれていたがそれも数を数えれるくらいまで倒せていた。
「これで全部か?」
「ハイ。魔力反応、敵感知共二反応ガアリマセン、ガ……」
「何だ、その不穏な言い方は?」
「イエ、魔族ニシテハ少シ妙デシタノデ」
「確かにな。だが手下だと考えると普通だと思うが…」
そう自分を納得させながらも俺はどこか魔族の動きに違和感を抱いていた。
魔族の手下とてこうも簡単にやられるものなのかと……。
どこかおかしいと疑問を抱きながらも俺はアルケミア村に向かおうとするとまたしても
敵感知の反応があり、『警告』という文字が表示された。
「どうした!?」
「敵感知ニ反応アリ。先ホドノ魔族トハ段違イデス」
モニカにそう警告された途端に背後に気配を感じて振り返るとそこにいたのは人間と何ら変わらない姿をした男だが唯一違うといえば頭に生えたツノだった。
言わずともわかる、こいつがさっきの魔族の大群を束ねていた奴だと————。




