精霊を狙う物
「私ハ『人造魔石細胞』デス」
そう語る女性の機械音声みたいなやつに俺は理解ができないであった。
そりゃ当然。どこからか現れたかわからない奴にいきなり『人造魔石細胞』だと言われてもどうしろと?
だが俺が一番気になるのはなぜそんなやつをいつ、どこで取り付けたのだろうか?
「じん…ぞう? …まあいいや、それよりもお前は一体どこにいるんだ? テレパシーか何かで俺の脳に直接語りかけてるんだろう」
「イイエ。私ハテレパシーナド使エマセン」
「え…? じゃあ、どうやって俺に話しかけてるんだ?」
「私ハ常二アナタノ中二イマスヨ?」
「俺の……中に?」
俺は一瞬考え込んだがその意味がわかったのでふとゴールドアーマーの胸の中心を見下ろす。
「ゴ名答デス。私ハ魔石細胞、アナタノ魔石ノ中二イマス」
「…マジか」
「マジデス」
突然の展開で俺は驚きを隠すことができず呆然とするしかなかった。
「いやいや、おかしいぞ! 俺はそんな物騒なモノなか手に入れた覚えないんだ。デタラメ言うなよ!」
「デタラメデハゴザイマセン。現二アナタガ私ヲ拾ってクレマシタ」
「俺が?」
「ハイ。覚エテオリマセンカ? アノ洞窟デノコトヲ?」
『洞窟』という言葉で俺が思い当たることといえばあの妙に綺麗に光っていた何かしか知らない。
「…まさか、あの妙に綺麗だったアレか!?」
「ソノ通リデゴザイマス。トビ様」
「なんで俺の名前を!?」
魔石細胞は俺の名前を平然と言いやがったことにさらに驚かされた。
俺は一言も言ってないのになぜこいつは名前を知っているのかという疑問を感じていたのを悟ったように魔石細胞は説明をした。
「簡単ナコトデス。トビ様ノ魔石ヲ取リ込ンデ解析シタカラデス」
「解析? そんなことができるのか!?」
「ハイ。私ハ人造デスカラ」
何か意味深な意味を込めて言う魔石細胞に少し引っかかる部分がある。
この『人造魔石細胞とやらは何か狙いがあってきたのか?
知能がある上に会話もそれなりに成立しているから何かこの世界について知っていることがあるのではないかと俺はふと思った。
「なるほど。AIみたいなものか…」
「AI…。ソノ呼ビ名ハナントモ私二ピッタリノヨウナ気ガシマス」
「そうだろ? あ、そういえばお前に名前はないのか?」
「名前? ソウ言ッタモノハアリマセン」
魔石細胞が言った声がなんだかしょんぼりしたように思えた。
名前がないなら考えたつけるしかないが俺は名付け親になったことがないからどんな名前がいいのかさっぱりわからない。
「そうだな、名前か……。AIだからアイは安直すぎるな…」
俺は空中に浮遊しながら考えるポーズをとる。
考えるといってもこの魔石細胞に合う名前をどっかのアニメや漫画から応用できないものかと思っていたがこれが中々出てこない。
「アンマリイイ名前ガナイノデスネ。トテモ残念デス」
「おい、待て! 今考えてんだ、そう急かすな!」
「ハイ。アマリ期待ハシテオリマセン」
なんだか癪に障るような言い方に俺はイラつきながらも考えを巡らせる。
そこで俺はとある漫画の中で高機能でなんら変わらないAIが人と話している絵を見たことを思い出した。
「モニカ…モニカってのはどうだ!」
「……モニカ、イイ名前デスネ。気二入リマシタ」
『人造魔石細胞』改めて『モニカ』はのちにこれからの戦いで最強の相棒になることになる。
ひとまず名前をつけたところで俺はモニカにこの世界のことを教えてもらおうとするといきなり目の前に『警告』の文字が表示されたのだ。
「な、なんだ!?」
「トビ様、緊急事態デス。半径300キロメートル以内デ多数ノ魔力気配ヲ探知シマシタ」
「多数の…魔力…気配? どこにいる!?」
「感知シマシタ。画像表示シマス」
「こいつらは……!?」
モニカが表示してくれた画像の中に写っていたのは目で見てもわかる人に不快な気分を与える見た目で人の形をしているが背中からその生物にしかない羽と異形の形をした魔族の大群が空を飛んでいた。
「魔族デス。オヨソ二十匹以上ハ確認デキマス」
「そんなにいるのか、厄介だな…」
「タダ、大群ハ私タチヲ認知シテオリマセン」
「どういうことだ?」
「ドコカノ人ガ多イトコロヲ目指シテイルヨウデス」
モニカのその一言で俺は魔族の大群がどこに向かっているのかすぐにわかった。
「ライラさん……。モニカ、すぐに追うぞ!」
「了解シマシタ」
魔族たちがライラさんたちの村に行くことを阻止しようと決め、その場所に向かうために高速飛行する。
——その頃、アルケミア村から少し離れたところに少しばかりの畑があり、そこでライラ、シティーヌとシャルルは育てていた野菜を収穫していた。
「みこさま、みてください! このやさい、とてもおいしそうです!」
「ほんとだ、立派に育てられたね」
シティーヌが新鮮な野菜を無邪気にライラに見せている。
ライラもシティーヌに微笑みながら答える。
「みこ様、これでよかったのですか?」
シャルルが心配する表情でライラに尋ねる。
「ん? 何がだ、シャルル」
「トビ様のことですよ。あのお方ならみこ様を……」
「いいんだ……いいんだ、シャルル」
シャルルの言葉を遮るようにライラは静かにつぶやくように何かを諦めた、そんな感じだった。
「さぁ、早く野菜を運ぼう!」
「うん!」
三人は仲良く笑顔で村に野菜を運ぼうとしていると途端にライラの表情が緊迫した表情に変わった。
「みこさま、どうしたの?」
「嘘だろ……」
シティーヌが聞くもライラはなにかありえないことを感じ取ったのかそう呟いた。
「みこ様! 大変です!」
「どうしたんだ!?」
すると村の獣人の一人が慌てた様子で駆け込んできたのだった。
かなり走って息切れしていて中々話せないが少しずつだが息を整えて話し始めた。
「…村が……魔族に…襲われて」
「っ!? な、なんだと…!?」
その報告を聞いたライラの表情は段々と真っ青になっていた。
気づけばライラは弾かれたように一気に走り出していた。
…まさか、こんな早く起きるなんて…。
心の中で焦りと不安が大きくなっていくのを感じていた。
急いで村に戻って最初に写った光景にライラは絶望の表情になった。
「…そんな…嘘だ」
ライラの目に写ったのは村の家は原型が崩れて所々に火などが燃え上がっていた。
だがそれよりもライラの心を蝕んだのは村の獣人たちが血を流しながら倒れている。
そしてその悲惨な現状を作り出したのは異形な人の形をした魔族の大群であった
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