人造魔石細胞
俺は人造模型に見覚えがあるように思えた、というより知っている。
それは俺が戦闘する時によく使うゴールドアーマーによく似ていたからだ。
「…すげぇ、似てるなぁ」
思わず声に出てしまうほどにそっくりだった。
まさか俺と同じ感性を持っている奴がこの世界にいるのかと思ったがただの偶然だと思うことにした。
「…? なんだ、これ?」
俺はふと人造模型の胸の中心にうっすらと光る何かを見つけた。
ライラが水魔法で洗浄してくれたおかげでそれが何かはっきりと認識できた。
ゆっくりと近づいていき、胸の中心に惹かれるように手を伸ばしてそのまま抜き取る。
「お、おい! だ、大丈夫、なのか?」
「……ああ、多分な」
「多分だと!? そんなことして万が一のことが起きたら……」
「と言われても、もう取っちゃったし……」
ここに来てから何かとビビり具合を発揮するライラの言うことを気にせずに光るモノを抜き取った姿を見せる。
するとライラの顔はみるみると真っ青になっていき、この世の終わりみたいな顔をしていた。
「ど、ど、どうすんだ!? ボクは知らないからな!! 何かあっても知らないからな!!」
…なんだろう? うるさいな、このひと……。
何があっても自分は悪くないと主張するライラになぜか少しだけイラつきを覚えた俺だった。
もちろんライラの想像することは何も起きなかった。
いや、むしろ起きるかもしれないが今は起きなかったと言うべきだろうか……?
その後も俺たちは何事なく洞窟を抜けたのだ。
——その夜、俺は保管庫の中で洞窟で見つけた光るモノを手にとり、眺めていた。
その光るモノは決してダイヤモンドのように綺麗ではないが輝きがないわけでもない。
「しかし、よくできてるなぁ……」
目が釘付けになるほど俺は眺め続けていた。
調べようにも今この場に魔法石に関する書など手元にあるわけがない。
だから眺めることしかできない。
それに洞窟にあったあの人造模型も気になる。
一体なぜあんなところにあったのか、誰がアレを造ったのか。
「いろいろと気になってきたな…」
頭の中でさまざまな考えが働くが今は寝ることにした。
だがそのときにトビは知らなかった。
光るモノがひとりでに小さく輝きだしたことを……。
そしてそれはコロコロと動きだしたのだ。
それは止まることなく、何かに向かって動きつづけるとやがてピタリと止まる。
止まった先にあったのはトビが所持する少しヒビが入った魔石だった。
光るモノは魔石の近くまでいくと途端に形を変化させると覆いかぶさるように魔石と融合したのだった。
しばらくすると光は消えて魔石と一体化したのだ。
そして魔石に入っていたヒビも跡形もなく綺麗になっていた。
もちろんこんな出来事が起きているとはトビは気づくわけもなかった。
——翌朝、トビは村を出る準備をしていた。
見送りにライラやシティーヌ、シャルルが来てくれた。
「もう少しゆっくりしてくれても構わないんだぞ…」
「いや、もう帰らないと。俺にも帰る場所があるから、長居はできない」
そう言うとライラは少し寂しげな表情をしてくれた。
俺はその表情を見逃さなかった。
日本にいた頃はそんな顔をしてくれる女の子なんか一人もいなかったから少し心が騒つく。
「………そうか。元気でな」
「ああ、元気で」
お互いに最後の挨拶を交わすと俺はゴールドアーマーに身を包むとシティーヌに呼び止められた。
「お兄ちゃん! …また会えるよね?」
「会えるだろ。なんせ俺は旦那様なんだろ?」
目を潤ませながら聞いてくるシティーヌに俺がそう答えると彼女はにっこりと笑ってくれた。
「なっ!? お、おい、その話は———」
「わかってるって。心配すんな」
また婚約の話を蒸し返されたことに焦ったライラは否定しようとしたが俺は遮った。
もちろんそれは俺が一番よくわかってる。
婚約の話をするたびに焦るライラをからかってみたくなっただけだ。
「ふ、ふん! お前という奴は…!」
…あ、今の写真に収めたい!
怒ってそっぽ向く仕草が本当に女の子のようで可愛いかった。
そんな悪ふざけをした後俺は空を見上げて飛行していく。
「じゃあね、バイバイ!」
下でシティーヌが力いっぱい両手で振っている。
俺はその姿を見届けるとそのまま速度を上げて飛んでいく。
しばらくするとアルケミア村は小さくなり、見えなくなった。
飛行しながらあることが気になった。
それはいつも女神が俺に伝えてくれる敵が何も仕掛けて来なかったことだ。
今回は女神の未来予知が外れたのか?
「ダメだ、一回気になるとキリねぇな……」
「ソウデスネ。デハ、オシラベシマショウカ?」
「ああ、じゃあ頼む———って、誰っ!? あ……」
ふいに誰かから声をかけられて驚き、飛行態勢を崩してしまった。
「うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!!!!」
空中から右往左往に落ちていきながら態勢を整えようとするが間に合わない。
…しまった! このままじゃ頭から落ちていく!
久々に命の危機を感じてしまい焦りと絶望が押し寄せてきた。
「危険センサーヲ察知。イマスグ、非常用装置ヲ作動シマス」
機械音声がそう言うとゴールドアーマーは落ちていくだけしかなかったゴールドアーマーはピタリと止まった。
トビはなんとか難を逃れた。
「お…おお…なんとか、助かったぁ」
「ナントカナリマシタ。ヨカッタデスネ」
「お前、一体何なんだ?」
「ソウデシタネ、ゴ紹介ガ遅レマシタ。私ハ『人造魔石細胞』デス」
「……はあ?」
なんとも不可解な言葉で語られてトビは意味がわからないという感じだった。




