人型の何か
——男の一人泣きを終えた翌日、オレはアルケミア村の獣人たちと一緒に朝食をとっていた。
「…なんだろう。すげぇ、眠い……」
「ハッハッハ! なんだ、寝不足か?」
オレの独り言をしっかりと聞いて話しかけてくれたのはライラさんだった。
「…あ、どうも。…早いですね……」
「当然だろ。それより本当に大丈夫か?」
「…ああ、大丈夫です。お気になさらずに」
そんなに酷い顔をしているのか。
いや、まあ昨夜は泣いていたこともあって多少目は腫れているだろうが……。
まあ、目の下に少しクマがあるのは間違いない。
「そうだ、トビ! ちょっとボクと付き合ってくれないか?」
「………………は?」
オレは突如と飛び出したライラさんの言葉に脳天を打ち抜かれたようだった。
その言葉は一体どんな意味を含んでいるんだろうか?
『付き合ってくれ』それはそういう意味だと捉えてよろしいのですか!?
そういうことですね!?
と、まあオレは心の中で自問自答していた。
「ま、待て! へ、変な意味に捉えるな! 少し用事に付き合ってくれという意味だ!」
「……ああ、なるほど」
何かを察して慌てて否定したライラさんにオレはすぐに納得した。
なんだろう? このがっかりした気持ちは……?
そんな気持ちを抱えて朝食を終えるオレは保管庫に入って武装の準備をしていた。
一応、何が起こるかわからないから準備することに越したことはない。
「よし、まあこれくらいでいいだろう……。……あれ?」
武装の動作を一通りし終えて一息つくとオレはあることに気づいた。
「うわっ! ……マジかよ」
それは常に武装のすべての動力源である胸の中心に埋め込んである大魔石に少しヒビ割れがあったのだ。
まあ、これも長い間使用していて大分古い。
寿命がきてしまったのだろう。
「これは帰って新たな動力源を探すか……」
オレは最大の改良を行うことにした。
しばらくしてライラさんと合流してから目的地へと歩きだした。
どうやらその場所は村から大きく外れたところにあるようだ。
その場所へと続く森の泥道をオレとライラさん二人並んで歩いていた。
一体そこがどういうところかはライラさんは着いたら教えてやると言って何も教えてくれない。
だからとりあえずオレは黙ってついていくことにした。
「着いた! ここだ!」
歩き出して長い時間経ったころようやく目的地の場所に着いたようだ。
見るとそこはなんの変哲もただの洞窟だった。
…うーん? 一体、ここになにがあるのだろうか。
オレの頭の中はチンプンカンプンだ。
「実はここにとあるものがあってな。それをトビに見てもらおう思ってな!」
『とあるもの』とライラさんは言って洞窟の中へと入っていっく。
オレもその後に続いて洞窟へと入っていく。
洞窟の中は少し薄暗いが真っ暗というわけではなさそうだ。
少し足場は悪いが歩けない道ではない。
また、洞窟に穴が空いているのか所々から光が差し込んでいるように思えた。
「それで? ここに一体何があるんだ?」
「…そうだな。どう説明すればいいのか……」
オレはいい加減何を見せたいのか探ってみるとなんとも曖昧な答えが返ってきた。
そんなに答えづらいモノなのかとオレはこれから案内される
『とあるもの』に少し警戒した。
「それはボクもなんというものなのかわからないんだ……」
この世界の人間がわからないものをオレに見せてどうするつもりなんだ?
そんな皮肉たっぷりの言葉を言えるわけもなく、心の中で思っていた。
「…ただ、何かの兵器のように思えるんだ」
「兵器…?」
「ああ、とてつもなく大きなものだ……」
そう言ったライラの目はより一層険しくなった。
「それでなんでオレに見せようと思ったんだ?」
「なんでって? そんなの言わなくてもわかるだろ」
「はい?」
「あんな見たこともない鎧で戦っているんだ! だったら何か知っているかと思ってな!」
なるほど。これで納得した。
ライラがオレにやたら見せたがるのはそれが理由らしいがオレはそこまで機械に詳しくないからあまり自信はない。
だがここまできた手前、『やっぱ帰る』とも言い出しづらい……。
ならば最後までその『兵器』とやらを拝んでみるしかない。
洞窟のさらに奥まで進んでいくと入口付近とは違って不穏な空気に変わった。
だが、依然と洞窟の中は明るい光が洞窟の隙間から照らしている。
しばらく奥に向かって進んでいくと何か出口が見えたと同時にライラがこちらを振り返ってきた。
「ついた! 見ろ、これだ!」
どうやら目的地に辿りついたようだ。
そこは洞窟をまっすぐ進んでいき、薄暗くて狭い通路を抜けていくと無駄に広い空間が見えてくる。
「これは……」
それはかなりひどく汚れていて細かくはわからないがはっきりとわかるのは人型の何かが広い空間の真ん中に堂々と立っていた。
まあこれは確かに説明しろと言われても無理だな……。
オレはさらに近くまで行き、観察してみることにした。
「お、おい! 大丈夫なのか!?」
「もう少し近くに寄ってみないとわからないからな」
なぜかライラはビビっていて近くに寄ろうとさえしない。
先日の凛々しいみこ様ことライラは一体どこへやら?
オレは警戒しながら真ん中へと近づいていく。
近くまできたが特にその人型の何かは襲ってこないことがわかった。
「大丈夫そうだから。そんなにビビんなくてもいいぞ!」
「……ああ、そうか。…って、ビ、ビビってなどおらんわ!」
「ああ、そうかい……」
オレが振り返りそう言うとライラは安堵したかと思ったら今度は怒り出した。
まあ、そんだけ元気だったら大丈夫だろ。
オレは視線を戻して人型の何か、いやここではなく『人造模型』と名づけておこう。
「…しかし、汚ぇな……」
「ん? どうかしたか」
「あ、いや。あまりにも汚いなと思って……」
「なんだ、そんなことか。ではボクが綺麗にしてやろう」
「え?」
そう言うとライラは手を前にかざすと目を瞑り、詠唱を唱えた。
するとライラの手から水が湧き出すとそのまま人造模型へと放出された。
人造模型の前身に水をかけ終えるとなんと汚れが綺麗さっぱりと落ちていた。
「ほら、綺麗になったぞ!」
「嘘!?」
ライラがやってやったぞと満面の笑みを浮かべていた。
その一方でオレは唖然としていた。
そんなことができるのなら最初から言っといてくれよ…。
落胆しながら綺麗になった人造模型を改めて見てみる。
「……なんだ、これ?」
オレはその人造模型に見覚えがあった。




