すれ違い
——オレは女神にあることを聞いていた。
いや、ほぼ尋問みたいなものだろうか……。
さっさと帰ろうとする女神を無理矢理捕まえてまで聞きたかったこととは女神がこの異世界をどうしたいのかということだ。
理由がわからないといった感じだな……。
実際、オレもこの世界がどういう仕組みかもわからない。
だが女神はこの世界の神だ。
何かしら知っているだろうからオレは問いかける。
「あんたはこの異世界をどうしようとしてんだ?」
「どうしたのよ? 急だね……?」
こんなことを聞いて果たして答えが返ってくるかどうかわからないがそれでもオレは聞いてみる。
「今までは偶然かと思っていたけど、あんたが気にかけている殆どが何かの生まれ変わりだろ? あんたが意図的に仕組んでいるのかと思ってさ……」
「へぇ〜、意外とそういうところにも気がついたりするんだ! すごいね!」
女神はまるで嘲笑うかのように微笑んでいた。
完全にすっとぼけているようだ。
おそらくは誤魔化したいのだろうか……?
あまり知られたくないのか…。
「ハルさんやユウナさんは『魔女』の生まれ変わり、そして今回のライラさん、その前のユリアーナさんは『精霊』だ。
こうも連続で訳ありな感じか続くと気になるだろ?」
…しかもハルさんやユリアーナさんに至っては美少女で男の娘だし!
オレは逃がさないという感じで女神を問い詰める。
「もしかしてだがこの先もこういうことがあるのか?」
「アハハ! あなたって、結構鋭いね!」
「どうなんだ? 誤魔化してないで答えろ…!」
どこまでも誤魔化そうとする女神にオレはつい腹を立ててしまい、つい怒鳴るような口調で言ってしまった。
別に怒るほどのことでもないがなんとなく、そうなってしまった。
こんなに短気な性格だったかな、オレ?
「…そう。だけどそれはあなたが知ることではないわ……」
いつもの陽気で気さくな女神から一変してまるで別人のような静かで冷たい声がオレの耳に入ってきた。
「はぁ? それはどういう意味……」
「あなたにはそれ以上聞く権利はないって言ってるのよ…」
女神の表情はまるでそこから先はオレは踏み込んではいけないと訴えかけるような目をしていた。
オレは瞬時にその気持ちを察してしまい、言葉が出てこなかった。
いや。『抑えた』と言ったほうがいいのか……?
「あなたはあの子たちを守ってくれればそれでいいの。じゃあ、もう用は済んだから。私は帰るね」
女神は最後にそう言い残したあとどこかへ歩いて行った。
オレは追いかけようとは思わない。
追いかけたところでどうせ答えてくれないだろうから。
「クソっ! 偉そうなこと言いやがって!」
オレはぶっきらぼうに言うと手に持っていた工具を投げつけていた。
物に当たるのはよくないとわかるが今は許してくれ。
床に座り込むとふと女神のあの冷たい表情と言葉を思い出してしまう。
なんで思い出しているのか? 稀に見る表情だったからか…。
「ああ、ダメだ! 一旦頭を冷やそう!」
保管庫では少しイライラしてまう自分の怒りを鎮めるためにオレは夜風に当たることにした。
空間が広い外ならば何か考えがまとまるような気がしたからだ。
夜の村をオレはあてもなくぶらついていると誰かにふと声を
かけられた。
「…あ、あの!」
オレは声をかけられたことに一瞬ためらってしまう。
今はあまり話しかけてほしくなかったのだ。
もしかすると今のオレはあまり落ち着いて人と話せることができそうにないかもしれないかったからだ。
かといって無視するのもどうかと思い、オレはとりあえず相手のほうを振り返ることにした。
「オレに何か用でも……?」
「あ、あの、ごめんなさい! 失礼かと思ったのですが……」
そこにいたのはなぜかおどおどした様子のセシティアさんだった。
オレはその様子になんでと疑問に思ったのと同時にそれまで胸につっかえていたモヤモヤが引いていくような感じがした。
自分でも不思議だ……。
「いえ。オレもどうせ……」
と、オレは喉元まで出かけていた言葉を飲み込んだ。
「……? どうかされましたか?」
「いや、なんでもないです。一緒に行きますか?」
「あ、はい! ぜひ!」
オレはひとまずセシティアさんと一緒に歩くことにした。
やはり夜は静かだった。
夜道を二人が歩く音がはっきりと聞こえてくる。
ここでオレは重大なことに気づいてしまった。
今思えば、『日本』ではこうやって女子と二人で夜のお散歩なんてしたことがないから何を話せばいいのかわからないのだ。
セシティアさんも何か言いたげな雰囲気を感じさせているようでずっとオレの顔色を伺っている。
こういうときはオレのほうから話すきっかけなどを与えたほうがいいんだろうけど、どう切り出せばいいのやら…?
ああ、めんどくせぇ!
「セシティアさんはオレに何か聞きたいことがあるんじゃないですか?」
必死に頭をフル回転でさせたが出てきた言葉がど直球だった。
女子と会話したことがない男ってこんなもんだ……。
「…ああ。気づいてらっしゃたのですね」
セシティアは少し微笑みながら答えてくれた。
…あちゃ、気を遣わせてしまったな。
オレは心の中で自分の気遣いのなさを恥じた。
「実は婚約の話なのですが……」
「ああ、その件ですか……」
「ごめんなさい!」
「……へ?」
なぜか勢いよく頭を下げて謝ってきたセシティアさんにオレはポカンとするしかなかった。
セシティアさんは恐る恐る顔を上げて申し訳なさそうな表情をしながら話し始めた。
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